第200話 なんでそんな姿なの!?

 バニーモンスターの畑のド真ん中に、女性型バニーモンスターたちに攻撃されている、巨大なウサギがいた。


 体高40メートルくらい。

 エメラルドグリーンの体毛。


 ウサギの耳が10段重ねになっている。

 長さは1メートルくらい。

 色は下から、紫、青、水、緑、黄緑、黄、オレンジ、ワインレッド、ライトグレー、ショッキングピンクだ。


 血のように赤い大きな目をしている。


 あいつが超社長なのか!?


「超社長、浮気をやめて、ただちに本妻を選びなさいオルアァ!!」


 女性型バニーモンスターにそう言われているし、間違いないようだな。


 なんでダンジョンの1階にいるウサギと、同じような見た目をしているんだよっ!?


 原点回帰か!?



「みんな攻撃をやめるんだフリン!さまはみんなの夫なんだウワキ!!」


 超社長がたわ言をぬかしている。


 何を言っているんだ、あいつは!?


 こんな事態になっているというのに、未だに浮気するつもりなのか!?


 根性あるんだか、アホなんだか……


 ところで、なんで語尾が『フリン』と『ウワキ』なんだ!?


 しかも、一人称も変だし!


 ちょっと通訳魔法さん!?

 遊び過ぎなんじゃないですかねぇ!?


「うるせぇですのコラァ!さっさと浮気をやめると言えですのコラァ!!」


「いてっ!?やめてくれフリン!余様はみんなが大事なだけなんだウワキ!!分かってくれフリン!みんなで愛し合おうウワキ!!」


「愛しているなら浮気をやめろオラァ!!さっさと本妻を選べオラァ!!」


「だから、みんなが妻なんだってフリン!分かってくれウワキ!!」


「まったく分かりませんわゴラァ!浮気はやめてくださいゴラァ!!」


 激怒している女性型バニーモンスターたちが、超社長を武力と言葉の両方で激しく攻め立てている。


 うーむ、すさまじい修羅場だな。


 もしかして、俺は宇宙で1番激しい修羅場に出くわしているのではないだろうか?


 貴重な経験だなぁ。



「うおおおおおっ!!もう浮気しないって言いやがれぇぇぇっオイコラァ!!」


「痛っ、痛いってフリン!?みんな落ち着くんだウワキ!!」


 先程から超社長は防戦一方だな。


 超社長は女性型バニーモンスターたちに手を上げるつもりはないようだ。


 この点だけは紳士的だな。


 浮気性なところは違うけどなっ!!



 さて、これからどうしようか?


 このまま放っておくだけで、超社長は倒されそうだよな。


 なら、このまま高みの見物といこうかな?


「トウヤ、このままだと、また魂を他のものに移し替える魔法とかいうので、逃げられるんじゃないか?」


 ヘーマンがそう言った。


「確かにそうかもしれないな」


「そこで俺の伝説の超奥義の出番だ!ヤツの魔法を使えないようにしてやろうぜ!!」


「良い考えだな!では、頼むぞ!!」


 ヘーマンを召喚した。


「いくぜ、超社長!こいつをくらいやがれぇぇぇ!!」


 ヘーマンが伝説の超奥義を使用したようだ。


「ぐっ、がっ、あ、ああ、あああああああああああああああっ!!」


 突然、超社長が苦しみ出したぞ!?


 なんだあれは!?

 どうしてしまったんだ!?


 ちょっと鑑定してもらおう。


「総理!超社長が苦しんでいるようですが、どうしてしまったのですか!?」


「えー、どうやら魔法妨害ガスの影響で、魂を他のものに移し替える魔法の効果が消えかかっているようです」


 ああ、なるほど、それも魔法だからか。


 では、これからどうなるんだ?


「うひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょっ!!!!」


 突然、超社長が笑いながら、飛び跳ね始めた。


 な、なんだ!?


 あれは何をやっているんだ!?

 超社長がおかしくなってしまったのか!?


「い、いやああああああああっ!?超社長、超社長アァコラァ!!」

「あ、あ、ああああああああっ!!超社長ぉぉぉテメェコラァ!!」


 女性型バニーモンスターたちが悲鳴を上げ始めた。


 いったいどういうことだ!?


 あっ、まさか超社長の魂が完全に消えたのか!?


 ヘーマンが超社長を倒したのか!?


 確認のために鑑定してもらおう!


「総理!ヘーマン氏は超社長を倒したのですか!?」


「えー、その通りです。あのウサギの中にあった超社長の魂は消えました」


「おおっ、やったな、ヘーマン!!」


「勝ったのか!おっしゃぁ、やったぜ!!」


「ですが、あのディカプルバニーランクのバニーモンスターを倒したわけではありません」


「えっ!?」


「うひょひょひょひょひょっ!!やったぜニャンス!俺様は解放されたぜニャンス!!」


 巨大ウサギが叫んでいる。


 あいつはあいつで意思を持っているのかよっ!?


「これで俺様は自由ニャンス!暴れまくってやるニャンス!!」


 あんなデカいのが暴れる!?


 それは危険過ぎるだろ!?


 なんとかしないと!?


「ウサギなら、あの薬が効くんじゃないかな?」


 アビスがそう言った。


「あの薬?ああ、そういえば、あったな!」


 アビスを召喚し、バニー白衣のいた部屋で見つけた、ウサギだけが死ぬ薬の入った茶色いビンを取り出してもらった。


 500ミリリットルくらいしかないけど足りるのか?


 やってみるしかないか!


 俺はビンを、巨大ウサギの口に向かって投げ付けた。


「うひょひょひょひょひょっ!!うげっ、な、何、今のニャンス!?」


 ビンが巨大ウサギの口に入った。


 我ながら見事なコントロールだな!!


「う、うう、うぎゃあああああああああああっ!!!」


 巨大ウサギが苦しみ出した。


 そして、倒れた。


 これは倒したのかな?


 確認しようか。


 俺は巨大ウサギを刀の先端で突いてみた。


 巨大ウサギは動かなかった。


 念のために鑑定してもらおうか。


「総理!この巨大なウサギは死亡していますか!?」


「えー、しています」


 やったぜ!


「これは収納しておくよ」


 アビスが巨大ウサギを収納してくれた。


 相変わらず、とんでもない量を収納できるんだな。


 素晴らしい!


 よし、これで俺たちの完全勝利だな!

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