第194話 寝相が悪い、というか悪過ぎ
しばらくの間、バニー巨木の観察を続けた。
なぜかバニー巨木の周囲には、畑も拠点もない。
大陸の各地で、バニーモンスターたちが畑仕事をしている。
発見したのは、このくらいだ。
たいした情報は得られてないなぁ。
うーむ、どうすれば接近できるのやら?
とりあえず、観察を続けてみるか。
あたりが暗くなってきたぞ。
どうやら日が落ちてきているようだ。
この星にも昼夜はあるんだな。
ん?
バニーモンスターたちが畑仕事をやめて、拠点に戻っていくぞ。
今日の業務は終了みたいだな。
残業をしているヤツはいないようだ。
定時上がりができるなんて、ホワイト企業なのかな?
夜になった。
満天の星空で素晴らしい。
おや?
ひときわ大きい白い星があるぞ。
あれは月みたいなものなのかな?
美しいねぇ。
さて、景色を十分堪能できたし、観察の続きをするか。
えっ!?
あ、あれは!?
バニー巨木が倒れているぞ!?
いったいどうしてしまったんだ!?
ちょっと鑑定してもらおう。
「総理!バニー巨木が倒れていますが、あれはどういうことですか!?」
「えー、あれは寝ているようです」
寝ている!?
木って、寝るのか!?
いや、あいつはバニーモンスターだから寝るのか!?
というか、あれってどうなっているんだ!?
幹が根元から折れているのか!?
いや、根が地中から出て来ていて、そこが折れ曲がっているようだな。
幹は折れていないようだ。
まあ、そんなのどうでもいいか。
それよりも、これはチャンスなんじゃないか!?
今なら接近して、奥義をかけることができるのではないか!?
「総理!今のバニー巨木に気付かれずに接近できますか!?」
「えー、可能だと思われます」
よし、それなら、やってもらおうか!
ヒトクを召喚した。
では、なるべく静かに突撃開始だな!
そろりそろりと近付いて行く。
バニー巨木は横になったまま動かない。
よしよし、そのまま寝ててくれよ。
うおっ、突然バニー巨木が起き上がったぞ!?
ま、まさか気付かれたのか!?
と思ったら、また倒れたぞ!?
なんだ今の行動は!?
寝返りみたいなものなのか!?
訳の分からんヤツだな。
まあ、良いか。
さっさと接近しよう。
こっそりコソコソと近付いて行く。
そろそろ奥義の射程内に入りそうかな?
うげっ、またバニー巨木が起き上がりやがったぞ!?
今度こそ気付かれてしまったのか!?
「ぬぽぴぺぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
突然バニー巨木が奇声を発した。
な、なんだ!?
何を言っているんだ、こいつは!?
そして、またバニー巨木が倒れた。
今のはなんだったんだ!?
寝言なのか!?
バニー巨木は寝相が悪いんだな。
まあ、そんなのどうでもいいか。
さっさと接近しないと。
「ぽぺぴゅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
バニー巨木が奇声を上げながら、ものすごい勢いで寝返りを打ち始めたぞ!?
な、なんだこの寝相は!?
悪いなんてもんじゃないだろ!?
大人しく寝てろよ!?
周囲に拠点や畑がないのは、これが原因みたいだな。
こいつの近くにあったら、寝返りに巻き込まれて破壊されるぞ。
とんでもなく迷惑なヤツだな!
よし、ここからなら届くんじゃないかな?
奥義を使用してもらおう。
「ヒトク、やってくれ」
「了解ッス。いきますよ、カイ・ザンデッチアゲネ・ツゾウワイ・キョクギソウ!」
ヒトクが魔法を使ったようだ。
だが、バニー巨木に変化はない。
成功したのだろうか?
「超社長は超元気でゴワスッス……」
ん?
聞き覚えのない声が聞こえたぞ。
今の声はバニー巨木のものみたいだな。
「超社長は無敵でゴワスッス…… 超社長は絶対に死なないでゴワスッス……」
バニー巨木が変な寝言を言い出したぞ。
これは奥義の効果なのだろうか?
「超社長が死ぬなんて、ウソに決まっているでゴワスッス…… 誤報は削除でゴワスッス……」
これは奥義が成功したと見て良いのだろうか?
ちょっと鑑定してもらおうか。
バニー巨木を起こさないように、小声で頼むよ。
「総理、バニー巨木に秘匿魔法の奥義は効いているのですか?」
「えー、どうやら効いているようです。超社長は死なないと思い込まされているようです」
これで問題は解決だな。
では、戻るとするか。
ダンジョンに戻って来た。
ふう、結構疲れたな。
ひと眠りするか。
起きたら地球に向かおう。
いや、ちょっと待てよ。
まだ懸念事項があるぞ。
超社長も星間転移おろし金を持っているんだよな?
星間転移おろし金を使用不能にしないと、追い詰めても逃げられるんじゃないか?
対策を立てておいた方が良さそうだな。
何か良い手はないか、官邸に聞いてみよう。
「総理!星間転移おろし金を使用不能にする方法はありませんか!?」
「えー、破邪を使ってみましょう」
破邪か、なるほど。
では、実験してみようか。
ヤマさんを召喚して、事情を説明した。
「うむ、承知した。では、ゆくぞ」
ヤマさんがチョコバナナの皮になった。
よし、星間転移おろし金を使ってみよう。
起動しない、うんともすんとも言わないぞ。
これは効果が出ているみたいだな!
後は効果が及ぶ範囲も調べておかないとな。
ちょっと鑑定してもらおうか。
「総理!破邪の効果範囲はどのくらいですか!?」
「えー、
5キロか。
かなり広いんだな。
それだけあれば十分だろう。
これで超社長を追い詰めても逃げられたりすることはないぞ。
懸念が払拭されて良かった。
では、明日に備えて寝るとするか。
おやすみなさい。
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