第106話 敵を知れば勝てる?

 さて、次はどこに行こうか?


 バニーモンスターの情報だから、買取所に行けば良いのかな?


 この町にあるのかは分からないけど、探してみようか。



 入り口上部の壁面に『バニーモンスター買取所』と書いてある洋風の建築物を発見した。


 白いコンクリートのようなもので造られた、小型のビルのように見える。


 ここが買取所か、さっそく入ってみよう。



 中は受付と待合所があるくらいだな。


 人は全然いないなぁ。

 暇そうにしている受付の方くらいしかいないぞ。


 強力なバニーモンスターのせいで、みんな狩場を変えてしまったのか?


 まあ、命を落とすリスクがあるから、仕方ないことだがな。


 では、受付の方に話を聞いてみようか。


「あの、すみません。ちょっと質問があるのですが、よろしいでしょうか?」


 俺は受付にいた、ピンク色のバケツをかぶった人に話しかけた。


「はい、構わないでごわすよ。何か用でごわすか?」


 ごわす!?

 またその語尾なのかよ!?


 バニーモンスターの買取をする人は、すべて語尾が『ごわす』にされてしまうのか!?


 通訳魔法は何がやりたいんだ!?


 訳が分からないぞ!!


 まあ、良いか。

 それよりも、質問をしよう。


「山頂に居座っている、強力なバニーモンスターについて教えてください」


「なぜそれを知りたいのでごわすか?」


「奥義の副作用が出てしまった仲間がいるからです。治療のために薬が欲しいというわけですよ」


「そういう理由でごわすか。ですが、あのバニーモンスターには近付かないで欲しいでごわす」


「それはなぜですか?」


「町が危険だからでごわす」


「えっ!?それはどういうことですか!?」


「山頂にいるバニーモンスターには、強力な大砲を持っていると聞いているでごわす」


「た、大砲!?」


 なんじゃそりゃぁ!?

 恐ろし過ぎるぞ!?


「そうでごわす。すさまじい威力で1発で家を吹き飛ばしたそうでごわす」


 本当にすさまじい威力じゃないか!?


 戦いたくなくなってきたぞ……


「それが撃たれて町の方に飛んで来たら、とんでもない被害になってしまうでごわす。なので、不用意に近付かないようにして欲しいでごわす」


 なるほど、流れ弾が問題なのか。


 確かに、それでは近付けないな。


「分かりました。ところで、なぜそのバニーモンスターは山頂に居座っているのですか?普通なら町に攻めてきそうですけど?」


「作戦だと言っていたそうでごわす」


「作戦?どのようなものなのですか?」


「なんでも副作用を治せなくして、仲間割れを起こさせる作戦だそうでごわす」


 ええ……

 ナニソレ、ダメダメだろ……


「その作戦は、穴が多いような気がしますけど……」


「その通りでごわす。そもそも副作用が出てしまう方は、そんなに多くはないでごわす」


 SIBINはそれに2回もなってしまったけどな!!


「それに奥義を覚えないという手もあるでごわす」


 そのうえ、副作用が出ても石を吐き出してしまえば治るという話だしな。


 穴があり過ぎだろ!? 


 そのバニーモンスターは、作戦を立てる能力が皆無なのでは!?


「なので、別な目的があるのではないかと思われるでごわす」


「なるほど、確かにそうかもしれませんね」


 山頂を占拠する理由か。


 なんだろうか?


 思い付かないな。


「バニーモンスターについて、分かっていることは以上でごわす」


「分かりました。ありがとうございます」


 買取所を出た。



 町の中にある、人気のない空き地にやって来た。


 ここで今度のことを考えよう。


 さて、どうするか?


 流れ弾問題のせいで、山頂のバニーモンスターと真正面から戦うわけにはいかない。


 もし被害を出してしまったら、損害賠償地獄が待っているだろうからな!

 絶対に大砲を撃たせるわけにはいかない!


 というか、大砲を持ったヤツと戦いたくなんてないしな!


 となると、なんとかコツコウだけを拾う方法を考えた方が良いのか?


 みんなとも相談してみよう。


「現地の様子を知るべきだな。ここは拙者が偵察して来よう」


 イネカがそう言った。


 確かに山頂がどうなっているのか分からないと作戦が立てられないな。


「そうだな。では、頼むよ、イネカ」


「承知した」


「気を付けてな!」


 イネカが山に向かって行った。


 俺たちはイネカが帰って来るまで、時間を潰すとするか。


 町を散歩してみよう。



 町を一回りして、空き地まで戻って来た。


 全然人がいなくて、活気がなかったな。


 引っ越せる人たちは、みんな引っ越してしまったのか?


 これは深刻な状況だな。


「今、帰ったぞ」


 イネカが帰って来た。


「お疲れさん。どうだった?」


「ウサギの耳が3段重ねになっている、巨大なバニーモンスターがいた」


「3段か。ということは、バニードラゴンマスクと同じトリプルバニーランクなのか……」


 これは強敵だな。


「それからコツコウだが、バニーモンスターの近くに落ちていた。気付かれずに拾うのは難しそうだ」


「そうか。なら、倒すしかないのか?」


「かもしれんな」


「そういえば、そのバニーモンスターは、どんなヤツだったんだ?」


「それは…… なんとも形容し難いのだが……」


 そんなに説明しにくいヤツなのか?


「大砲の付いた巨大な金属製と思われる箱があってだな、そこから足が4本生えていた」


 大砲付きの箱に足?


 よく分からん姿だな。


「後は箱の真ん中に頭が2つ付いていたな。その両方にウサギの耳が付いていた」


 訳が分からないぞ!?


 いったいどんなヤツなんだ!?


「そんな感じだったのだが伝わったか?」


「うーん、イマイチ伝わってこないかな」


「そうか。すまないな」


「いや、それは良いんだけど。それよりも、バニーモンスターは山頂で何をしていたんだ?」


「周囲を警戒していただけだな」


「そうなのか。何がしたいのだろうか?」


「コツコウを守っているだけに見えたぞ」


 守っているだけねぇ。

 本当に何がしたいヤツなのだろうか?

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