第99話 それに擬態するの!?
土産物屋を出た。
キセツケの粉は1つ10万イオロだった。
他の土産物は1つ1~3千イオロくらいだった。
高過ぎるだろ!?
ボッタクリなんじゃないか!?
これはここで買わずに、山で拾った方が良いのではないか?
確か奥義書には、洞窟の中にあると書いてあったな。
よし、探してみよう。
では、そろそろ山に向かうか。
ニョーロ山に入った。
周囲は緑豊かな森だ。
このあたりは、傾斜はそんなにキツくないな。
さて、洞窟とバニーモンスターを探そうか。
あっ、洞窟を発見したぞ。
切り立った崖に、水平方向に伸びている横穴があった。
入り口の大きさは、高さ4メートルくらい、幅が5メートルくらいだ。
あれ?
なんであんなものがあるんだ?
緑色のひし形金網フェンスが、洞窟の入り口を隙間なく塞いでいた。
しかも、そのフェンスには縦横30センチくらいの『私有地につき、立ち入り禁止』と書いてあるステッカーが付けられていた。
ええっ!?
この洞窟は私有地なのかよっ!?
まさか土産物屋がキセツケを独占するために買ったのか!?
なんということだ!?
どうしようか!?
って、どうにもできないな。
まあ、こうなってしまったものは仕方ない。
もめ事なんて起こしたくないし、ここは大人しく金をためてキセツケの粉を買うことにしよう。
では、バニーモンスター探しに行こうか。
「ちょっと待つのじゃ、トウヤ」
ラビリンに止められた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「その金網フェンスに、ウサギの耳が付いておるぞ」
「ええっ!?どこに!?」
「ステッカーの真上じゃな。針金のように見えるが、あれはウサギの耳じゃ」
「ええっ!?あっ、本当だ!?」
よく見ると、網の針金が緑色のウサギの耳になっている場所があった。
注意して見ないと分からないくらい、巧妙に擬態している。
この金網フェンスはバニーモンスターだったのかよっ!?
なら、ここが私有地というのはウソなのか!?
なんでこんなややこしいことをしているんだ!?
もしかして、洞窟に立ち入らせないようにしているのか!?
もしそうなら、奥義の習得を妨害しているということになるのだが、どうなのだろうか?
まあ、考えても分からないから、どうでもいいか。
それよりも、こいつを倒してしまおう!
とりあえず、こいつは『バニーフェンス』と呼ぼう。
俺はバニーフェンスに接近し、刀を振り下ろした。
バニーフェンスを真っ二つに斬り裂いた。
やったか!?
な、なんだと!?
バニーフェンスが斬り裂かれた状態で動き出した。
えっ!?
あれは自分で自分を分解しているのか!?
バニーフェンスの外枠が外れ、金網の針金がほどけていく。
そして、とうとう針金と外枠の金属の棒だけの状態になった。
あんな姿になって、何をする気なんだ?
そう思った直後、針金と外枠の金属の棒が一斉に俺に向かって飛んで来た。
このための分解だったのか。
どうやら、こいつは1回斬った程度では倒せないようだな。
俺は飛んで来た針金を回避しつつ、刀で斬り付けた。
針金を真っ二つに斬り裂いた。
だが、斬り裂いた針金は何事もなかったかのように、俺に向かって飛んで来た。
1回や2回ではダメか。
ならば、斬りまくってやるとしよう。
その後、何回も針金たちを斬った。
だが、針金たちは動きは止まらなかった。
それどころか、細かく斬られたもの同士がくっついて再生することもあった。
あっ、これはバニー柄クッキーと同じタイプなのかもしれないぞ。
とすると、どこかに本体がいるはずだ、探そう!
みんなにも手伝ってもらおう。
俺は応援を要請した。
「トウヤ、俺はあのステッカーが怪しいと思うぜ!」
すると、ヘーマンがそう言い出した。
ステッカー?
そういえば、先程から姿が見えないな。
確かに怪しいぞ!
「それはあり得そうだな、探してみよう!みんなも探してくれ!」
俺は周囲を見渡した。
ステッカーはいないようだ。
どこに行きやがったんだ!?
「トウヤ、針金どもが飛んで来るぞ!油断するな!」
骸王に注意された。
俺は飛んで来た針金たちを回避した。
くっ、こいつら探索の邪魔だな。
なんとか排除できないものか?
何か良い案はないものか……
あ、そうだ!
あいつらはあまり重くなさそうだから、吸引魔法か排気魔法ならどうにかできるかもしれないぞ!
ちょっとダブルクリーナーヘッドに聞いてみよう。
「やれそう」
やれそうか、ならば、やってもらおう!
ダブルクリーナーヘッドを召喚した。
ダブルクリーナーヘッドは掃除機の排気口を、飛んで来る針金たちに向けた。
そして、掃除機の運転音が聞こえてきた。
どうやら排気魔法を使うようだ。
針金たちは強烈な排気を受けて、吹き飛ばされていった。
おおっ、すごいぞ、ダブルクリーナーヘッド!
よし、今のうちに探そう!
あ、ステッカーを見つけたぞ!
洞窟の岩陰に隠れていやがった。
あれ?
書いてある文字が変わってないか?
今は『くっ、見つかったか!?』と書いてあるぞ。
なるほど、こいつはこうやって意思疎通をするのか。
まあ、どうでもいいか。
さっさと倒してしまおう。
ステッカーを斬り裂いた。
おや?
書いてあった文字が消えたぞ。
これでバニーフェンスを倒したことになるのか?
どうなのだろうか?
そういえば、飛んで来ていた針金たちはどうなったのだろうか?
探してみるか。
針金たちは、地面に転がったまま動かなくなっていた。
念のため、刀で突いてみたが動かなかった。
これはどうやら倒せたようだな、良かった。
「ダブルクリーナーヘッド、お疲れ様!排気魔法のおかげで無事勝てたよ!」
「ん」
ダブルクリーナーヘッドが褒められて照れくさそうにしている。
では、後始末だな。
初見の敵だし、鑑定してもらおうか。
「総理!このバニーモンスターについて教えてください!」
「えー、これは入り口を塞ぐのが趣味なバニーモンスターです」
入り口を塞ぐ趣味!?
なんだよ、その訳の分からん趣味は!?
迷惑なヤツだな!
「体は鋼で作られています。今のトウヤ氏の装備の素材の方が性能は高いので、売却するのが良いと思います」
そうなのか。
なら、これは後で売却することにしようか。
今はアビスに収納してもらおう。
召喚して、収納してもらった。
よし、これで後始末は完了だ。
では、この洞窟に入ってみようか。
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