第96話 やること多くない?

 黄色い水の奥義『黄色い脱力の水』


 これを受けると全身の力が抜けていき、どんな武術の達人であろうと無力化できる。


 茶色い水の奥義『茶色い無気力の水』


 これを受けると生きる気力がなくなり、再生能力が機能しなくなる。

 さらに回復魔法を受けても回復しなくなる。


 こいつは恐ろしい魔法だな。


 この2つの魔法なら、超社長対策になりそうだ。


 超社長は武術にも魔法にも長けているらしいから、回復魔法も使えると思った方が良さそうだし、再生能力も持っているかもしれないからな。


 よし、この2つをSIBINに覚えてもらおう。


 それで、どうやって覚えるんだ?


 あ、習得方法も書いてあるぞ。


 なになに、黄色い脱力の水を覚えるには『ニョーロ』という山にある洞窟の中で『キセツケ』という黄色い石を手に入れる必要があるのか。


 茶色い無気力の水は『イダチョウ』という山にある洞窟の中で『コンウノカセキ』という茶色い石を手に入れれば良いらしい。


 後は、石を粉末状にして、飲み込めば良いそうだ。


 なるほど、分かりやすいな。


 えっ、さらに他の人間のお茶魔法もパワーアップするのか!?


 こいつはお得だ!

 ぜひとも手に入れないとな!


 後は目ぼしいものは書かれていないようだな。


 では、これをSIBINに渡そう。


 俺は次の本を読むか。



 ん?

 背表紙に『ブラッディクリムゾンの奥義書』と書いてある本があるぞ。


 気になるな、ちょっと読んでみるか。


 俺はその本を数ページ読んだ後、そっと本棚に戻した。


 次の本を探そう。



 これは?


 背表紙に『終焉しゅうえん咆哮ほうこうの奥義書』と書いてある本を見つけた。


 今までのものと同じ臭いがするけど、いちおう読んでみようか。


 俺はその本を数ページ読んだ後、そっと本棚に戻した。

 もちろん、今までのものと同じだったからだ。


 なんでこんなのばかりあるんだよっ!?


 誰が書いているんだ!?


 まさか同一人物なのか!?

 それともこの星の人は、みんな書いているのか!?


 いったいどっちなんだ!?


 まあ、どうでもいいか。


 次の本を探そう。



「トウヤ、トウヤ、聞こえるか?」


 イネカから念話がきた。


 何かあったのか?


「じいさんとSIBINの同種族2名が、そちらに向かっている。家を出て、どこかに隠れた方が良い」


 な、なんだって!?


 まさか本物のタロウビンとサブロウビンなのか!?


 そいつらに見つかったら、警察のようなものに逮捕されてしまうかも!?


 それはマズい、逃げないと!?


 はい、全員作業やめ、集合!


 集合したみんなをカードに戻した。


 では、脱出だ、玄関へ行こう!


 あ、ちょっと待てよ。

 玄関から出たら、じいさんたちと鉢合わせになってしまうかもしれないな。


 別な場所から出よう。


 では、どこから出ようか?


 書斎の窓からにしようか、裏庭に出れるみたいだからな。


 俺は書斎の窓から外に出た。



 草が生い茂り、木が数本ある、あまり広くない裏庭だ。


 ここはあまり手入れされていないようだな。


 じいさんだけでは手が回らないのか?


 その奥には、高さ2メートルほどのコンクリートのようなものでできた塀がある。


 そのさらに向こうには、住宅と思われる建物がある。

 和風住宅のような外見だ。


 空は晴れ、色は青い、白い雲が少しある。


 さて、これからどうするか?


 とりあえず、庭からも出るべきか?


 いや、それはダメだな。


 この星に地球人のような生物が存在するのか、まだ分からないからな。


 ヘタしたら未確認生物として、捕獲されてしまうかもしれない。


 外を出歩くのは危険だ。


 仕方ない、ここは裏庭に隠れよう。


 俺は木の陰に隠れた。


 ここでイネカが帰って来るのを待つか。



「こんなところにいたのか」


 イネカが帰って来た。


「おっ、イネカ、お疲れ様。外の様子はどうだった?」


「どうやら、この星には4種類の知的生命体がいるようだ」


「4種類もいるのか。そいつらはどんな姿だったんだ?」


「SIBINのような種族の他に、カクチュー、ヒトクのような種族と、バケツのようなものをかぶったトウヤのような種族がいた」


 バ、バケツをかぶった人間!?


 なんでそんなものがいるんだ!?


 さすがは異星だ、意味が分からないぜ!!


「他には何かあったか?」


「後はじいさんたちが家に着いたということくらいだな」


「じいさんと一緒にいたのは誰なんだ?」


「それは不明だ」


「そうなのか。まあ、良いか。それじゃあ、じいさんの家で得た情報を共有しようか」


 俺が得た情報を、みんなに話した。


「では、ワシから報告しようかのう」


 ラビリンがそう言った。


「この星の名前は『ガーヤミド星』というらしい。3つの大きな大陸のあるそうじゃぞ」


 ほう、そうなのか。


「後は、妙な妄想が書かれた奥義書がたくさんあったくらいじゃな。ワシからは以上じゃ」


 ラビリンもその手の奥義書を見つけていたのか!?


 いったい何冊あるんだよっ!?


「では、次は余が報告しよう」


 カクチューが話し始めた。


「余は植物図鑑を発見して読んでおったのだが、そこに異世界から来た者を強化する薬草が載っておったぞ」


「ええっ!?この星にもあるのかよっ!?」


「うむ、官邸に見てもらったから間違いないぞ。3つの大陸に1種類ずつ生えているそうだ」


「また3種類の薬草があるのか……」


「うむ、入手して修行するのだ。がんばるのだぞ!」


 気が進まないなぁ。


「後は、余も妙な妄想が書かれた奥義書を見つけたぞ。以上である」


 ええっ!?

 書斎以外の場所にもあったのかよっ!?


 いったいどれだけあるんだよっ!?


「次は我が報告しよう」


 骸王が話し始めた。


「この星にもバニーモンスターがいるようだ。そのような記述のある本があった」


「やはりここにも来ているのか」


「うむ、それからこの星でもダンジョンが発生している。住民たちの中にはカードを手に入れている者もいるようだ」


「ということは、カードが売られている可能性があるということか」


「その通りだ」


 魔法の習得に、修行に、カード探しか……


 やることが増えてきたなぁ。


「後は、我も妙な妄想が書かれた奥義書を見つけたぞ。以上だ」


 骸王も見つけてたのかよっ!?


 この家はどうなってんだ!?

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