第95話 じいさんの家の奥義書

 尿瓶のじいさんの家の書斎にやって来た。


 書斎は1階にあり、室内は8畳くらいの板の間だ。


 透明なガラスと思われるもので作られている、大きな窓がある。


 大きさは成人男性が悠々と出入りできるくらいだ。


 そして、本が詰まった本棚が4台置かれている。


 本の形や大きさは、地球のものとそれほど変わらないようだ。



 さて、読んでみるか。


 どれを読もうかな?


 この星の本も地球と同じで、背表紙にタイトルが書いてあるんだな。


 便利で助かるなぁ。


「サブロウビン~」


 おや?

 じいさんが呼んでいるぞ。


「どうした?何か用なのか?」


「サブロウビンや、ワシは買い物に行ってくるクマ。留守番を頼むクマ」


「ああ、分かったよ」


 じいさんは買い物に行くのか。


 あれ?

 もしかして、あのじいさんは一人で出かける気なのか!?


 あんなにボケているのに大丈夫なのか!?


 心配だな。


 あ、そうだ、イネカに頼んでじいさんの後を付いて行ってもらおう。


 そのついでに、外の様子も見てきてもらおう。


 うん、これは名案だな!!


 では、召喚だ。


 イネカに先程の案を伝えた。


「承知した。では、行ってくる」


 イネカが窓から出て行った。


 よし、これで大丈夫だろう。



「トウヤよ、今はこの家には、私たち以外誰もいないのではないか?」


 ポイズンが質問してきた。


「えっ?そういえば、そうかもしれないな。家族の方は誰も見ていないし」


「ならば、今のうちに部屋の中にある黒い円を閉じた方が良いのではないか?」


 確かに、あれを放置しておくのはマズいな。


 じいさんが間違えて入ってしまったら、バニーモンスターの餌食になりそうだ。


 なんとかしないと。


 これはヒトクに頼めば良いのかな?


 ちょっと聞いてみよう。


「閉めることッスか?可能ッスよ。それじゃあ、召喚してくだせぇ。すぐに閉めてきますよ」


 ヒトクを召喚して、居間に向かってもらった。


 よし、これで問題は解決だな。



 あ、そうだ、ここ以外の部屋も調べるべきか?


 今は少しでも情報が欲しいし、そうすべきだな。


 みんなを召喚して手分けして、調査することにしよう。


 残ったみんなを召喚して、読書組と他の部屋の調査組に別れて、行動を開始した。


 読書組は俺、骸王、ヘーマン、アビス、ラビリン、SIBIN、ルギデルだ。



 さて、どの本を読むかな?


 おや?

 この本は?


 背表紙が黒一色で、何も書いてないな。


 なんの本なのだろうか?


 ちょっと見てみようか。


 あっ、表紙にはタイトルと思われるものが書いてあるぞ。


 そこには『超魔天究極奥義書ちょうまてんきゅうきょくおうぎしょきわみ』と書いてあった。


 ええええっ!?


 な、なんだ、この頭が悪そうなタイトルは!?


 ネーミングセンスひど過ぎじゃないか!?


 超魔天って、どういう意味なんだ!?


 究極で極って、どれだけ極めたいんだよっ!?


 だが、ご覧の有様なタイトルでも奥義書ではあるのか。


 なら、超社長への対策になる何かが載っているのかもしれない。


 ちょっと見てみようか。


 うわあ、これは、その、なんというか……


 痛々しいものを書き連ねたノートだな。


 誰かが考えた架空の世界の設定、必殺技、決めゼリフなどが書いてある。


 この星にも、この病気があるんだな。


 ところで、なんでこんなものが書斎の本棚に置いてあるんだ?


 もっと見つからなさそうなところに隠しておけよ。


 まあ、どうでもいいか。


 次の本を読もう。



 おっ、また背表紙に何も書いていない赤い本があるぞ。


 見てみるか。


 また表紙にはタイトルが書いてあるようだ。


 今度は『混沌彗星こんとんすいせい鳳凰開闢ほうおうかいびゃくの奥義書』だそうだ。


 どういうことだ!?


 まったく意味が分からないぞ!?


 これはさっきのと同じ作者が書いたものなんじゃないのか!?


 まあ、いちおう読んでみるか。


 中身は似たようなものでした。


 なんでこんなものが2冊もあるんだよっ!?


 もう、どうでもいいか!!


 次に行ってみよう。



 あっ、またまた背表紙に何も書いてない青い本があるぞ。


 見る価値がなさそうな気もするが、念のために見てみるか。


 表紙には『蒼穹無双そうきゅうむそう極夜きょくや使徒しとの奥義書』というタイトルが書かれている。


 では、中身は……


 似たり寄ったりじゃないか!?


 なんで3冊もあるんだよっ!?


 まったく何をやっているんだ、あのじいさんは!?


 これもボケの症状なのか!?


 もう、いいか。


 さあ、次の本を読もう。



 おっ、これは?


 背表紙に『人間のお茶魔法の奥義書』と書いてある本があるぞ。


 これが目的のものなのではないか?


 いや、どうだろうな?


 これも先程のものと似たようなものなのかもしれないぞ。


 だが、念のために読んでみるか。



 ん?

 表紙に『お値段はなんと驚きの1000イオロ!お買い得ですよ、奥さん!』と書いてあるぞ。


 ほう、ここの通貨の単位は『イオロ』というのか。


 この星にも、お金は存在するんだな。


 ここにしばらく滞在するようなら、手に入れる手段を考えた方が良さそうだな。


 あれ?

 奥義書が市販されているのか?


 しかも、奥さんに買わせたいのか?


 意味が分からないな。


 まあ、良いか、中を読んでみよう。



 人間のお茶魔法のことが、いろいろと書いてある。


 黄色い水や茶色い水を、雨のように降らせたり、消防車の放水のように撃ち出したりしている様子が描かれている。


 これは奥義書というより、教科書や指南書といった感じだな。


 SIBINにも読んでもらった方が良さそうな内容だな。


 いや、これはなんとかお金を手に入れて、買った方が良いくらいかもしれないな。


 そう思えるほど、分かりやすく書いてある。



 おっ、これは!?


 ええっ!?

 な、なんだと!?


 こいつはすさまじい魔法だな!?


 もしかしたら、これが超社長用の魔法なのではないか!?

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