第94話 異星でボケてる原住民と会話する話

 それで、この後はどうするんだ?


 とりあえず、ルギデルを召喚して聞いてみようか。


「少し時間をくれ。このあたりを調べてみよう」


 ルギデルがそう言った。


「ああ、頼んだよ」


 ここはルギデルに任せよう。



 ルギデルが洞窟の行き止まりを調べ始めた。


 ん?

 急にルギデルの体格が良くなったような気がするぞ。


 なんだか筋肉が膨張したように見える。


 もしかして、あれは筋肉魔法を自分に使ったのか?


 なんのために、そんなことをしているのだろう?


 ええっ!?

 何もない空間を殴り始めたぞ!?


 何をやっているんだ!?


 訳が分からないぞ!?



 ルギデルはしばらくの間、素振りをしていた。


 その後、何かを諦めたような感じで、俺の方にやって来た。


「ダメだな。黒い円を出す方法は分からなかった」


 ルギデルがギブアップしたようだ。


「そ、そうか。ところで、あれは何をやっていたんだ?」


「えっ、筋肉魔法で閉じられた黒い円を開けようとしていたのだが?」


 ええっ!?

 それって、筋肉でどうにかなると思っていたということか!?


 筋肉魔法って、そんなに万能なのか!?


「そ、そうなのか。まあ、どうにもならなかったのは仕方ないよ。さて、どうするか?やはりバニーモンスターから、星間転移おろし金を奪うしかないのか?」


「そうだな。それしかないか……」


「兄さん方、ちょっと良いッスか?もしかすると、あっしの開錠魔法ならどうにかできるかもしれませんよ」


 ヒトクがそう言った。


「えっ!?開錠魔法で!?」


 いや、ここは鍵のかかった扉じゃないだろ!?


 開錠魔法ではどうにもならないだろ!?


「ちょっとやってみますよ!」


 まあ、試すだけなら問題ないか。


 気が済むまで、やってもらおう。


「あ、開きましたね」


 ヒトクがそう言うと、洞窟の行き止まりに、直径2メートルほどの黒い円が現れた。


 えええええっ!?

 そんなあっさりと!?


 ちょっと、どうなってんの!?

 あっさり過ぎるだろ!?


 そんなんで良いのかよっ!?


 まあ、もう、どうでもいいか!!


 さっさと行こう!


 ルギデルとヒトクをカードに戻して、黒い円に入った。



 ここが異星なのか?


 木造の天井と壁、床には畳のような緑色の敷物が敷いてある。


 部屋の中央にちゃぶ台のようなテーブルが置いてあり、その上に黒い円が出現している。


 そして、茶色の座布団のようなものの上に、ヒビがたくさん入ったプラスチック製に見える、男性用の尿瓶が置かれている。


 尿瓶の全長は50センチくらいで、SIBINと同じくらいのサイズだ。


 ここは家の中のようだ。


 まるで和風の居間のような場所だな。


 あまり異星って感じがしないぞ。


「なんだクマ?誰か来たのかクマ?」


 えっ!?

 誰かがしゃべったぞ!?


 声が聞こえてきた方向には尿瓶がある。


 えっ、もしかして、この尿瓶がしゃべったのか!?


「ん~?この黒いのは何クマ?」


 どうやらそのようだな。


 ここはSIBINと同じ種族が暮らしている星のようだ。


 さて、どうしようか?


 この家の住民に見つかってしまっているぞ。


 地球の常識で考えると、これは不法侵入だよな。


 このままだと、この星の警察のようなものを呼ばれて逮捕されてしまうのか!?


 それはマズ過ぎる!?


 ここは一時撤退すべきか!?


「ん?もしや、お主はタロウビンなのかクマ?」


 えっ!?

 それ俺に言っているのか!?


 タロウビンってなんだ!?


 もしかして、名前なのか?


 どうしよう?

 なんと答えようか!?


「いや、俺はそのタロウビンではないのだが……」


「ん?タロウビンではないのかクマ?ああ、なんだ、サブロウビンかクマ!」


 今度はサブロウビンにされた!?


 なんでそうなるんだよっ!?


 もしかして、この尿瓶はかなり老いているのか?


 ちょっとボケてきているのようだな。


 いや、これはちょっとどころではないか。


 ものすごくボケてきているみたいだな。


 明らかに種族が違うのにな。


 いや、待てよ。

 もしかしたら、人間型の生物もいるのかもしれないぞ。


 タロウビンやサブロウビンは、その種族なのかもしれない。


 調査してみないと。


「ほれ、そんなところにいないで、こっちに来いクマ!おっと、座布団を用意しなければクマ!ちょっと待つクマ!」


 老尿瓶が近くにあった押入れと思われる場所のふすまを開けた。


 えっ!?

 今、水で人間の手のようなものを作って、襖を開けたぞ!?


 今のは水魔法なのか!?


 水魔法であんなことができるのか!?


 おおっ、さらにその水の手で茶色の座布団を持って来たぞ!


 座布団の大きさは縦横ともに40センチくらいの正方形で、厚さは15センチくらいだ。


 結構大きな座布団なのに、軽々と運んでいる。


 あの水の手は、結構便利なんだな。


 SIBINも使えるようになるのかな?


 後で聞いてみよう。


「ほれ、サブロウビン、ここに座れクマ!」


 せっかくだし、座ろうか。


 俺は礼を言って、座布団に座った。


「いやあ、それにしても、久しぶりクマね~。今日はどうしたクマ?何か用があるのかクマ?」


 用件か。


 なんと答えようか?


 俺がここに来た目的は、超社長を倒せる何かを探しに来たのだから……


「ええと、その、強くなりたいなぁ、と思って来たのだけど……」


「強くなりたいクマか!?いやあ、サブロウビンも立派になったクマ!じいちゃんはうれしいクマ!」


 じいちゃんなのか。


 ということは、サブロウビンが孫なのか?


 孫ということは、おそらく同じ種族だよな。


 このじいさんは、俺が尿瓶みたいに見えているのか?


 このじいさん、ボケ過ぎだろ。


 ん?

 じいちゃんと言ったということは、この種族にも雌雄があるのか?


 どうなんだろうな?


 まあ、そこはどうでもいいか。


 さて、迷惑にならない範囲で、いろいろと聞いてみよう。


「それで何か強くなる良い方法はないかな?」


「うーん、そうクマねぇ。何かあったような気がするけど、じいちゃん忘れちゃったクマ」


 何かはあるのか!?


 そこが分かっただけでも進歩だな。


「その何かを、どこかで調べられないかな?」


「それなら、ここの書斎で調べると良いクマ」


 書斎があったのか。


 それはありがたい!


 ここはお言葉に甘えさせてもらおう!!

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