第92話 小さくて、素早くて、壁を走れる本体を探せ
さて、そろそろ疲れが取れたかな?
みんなはどうなのだろうか?
聞いてみよう。
「もう少し休憩でも良いぞ」
休日のおっさんのように、腕を枕にして横向きに寝転がっている骸王がそう言った。
こいつはまた怠け癖が出ているようだな。
他のみんなはどうなんだ?
「いつでも良いよ」
「私も問題ありませんよ」
他のみんなの疲れは取れたようだ。
なら、もう行くか。
「もう休憩は終わりにしよう。みんな、行くぞ!」
「面倒である」
骸王が行くのを渋っている。
「さっさと行くぞ!!」
無理矢理起こして、ボス部屋に入った。
「よし、いくぞ!戦闘班はクッキーを破壊してくれ!」
「分かりました」
戦闘班がバニー柄クッキーに向かって行った。
「トウヤ、本体を探す班はどう動く?」
イネカが質問してきた。
どうって……
あっ!?
そういえば、決めていなかったぞ!?
これはマズい!?
どうしよう!?
何か良い案はないか!?
ええと、今までの情報から考えると……
「まずツシタは上空から望遠魔法で探した方が良いだろう」
「ああ、分かったぜ!」
「ヒトクは秘匿魔法で探してくれ」
「了解ッスよ」
こいつらは、これで正解だろう。
さて、後はどうするか?
そういえば、本体は狭い岩の隙間に入り込もうとしていたらしいから……
「戦闘班とクッキーが部屋の中央で戦っているから、本体は巻き添えを食うのを避けるために、壁際にいる可能性が高いと思う。壁際には、身を隠せそうな狭い岩の隙間もあるしな」
「なるほどな」
「なので、壁際を探すことにしよう。俺は部屋の壁に沿って左に進むから、ダブルクリーナーヘッドとイネカは逆を行ってくれ。うまくいけば挟み撃ちにできるかもしれないしな」
「分かった」
作戦はこんなものか。
とっさに思い付いた割には、良い作戦なんじゃないかな?
「それでは、行こうか!」
俺は壁沿いを進んだ。
しばらく進むと、なぜかクッキーがよく飛んで来るようになった。
これは明らかに俺が狙われているようだな。
ということは、このあたりに本体がいるのか!?
「トウヤ、後ろにある岩の隙間に、何かが入って行きおったぞ」
ラビリンが教えてくれた。
やはりこの近くにいたのか。
だが、クッキーの攻撃が激しくて探しに行けないな。
ここは援軍を呼ぶか。
「みんな、このあたりに本体がいるぞ!援護してくれ!」
「良いだろう!」
「分かりましたよ!」
戦闘班が俺の近くにやって来て、飛んで来るクッキーを叩き落し始めた。
ダブルクリーナーヘッドとイネカも向かって来ている。
よし、これで探せそうだな。
さっさと見つけて倒してしまおう。
俺は後ろにあった岩を退けてみた。
うげっ!?
な、なんだこいつは!?
そこにいたのは、カサカサと素早く動く、円形のクッキーのような何かだった。
直径2センチくらい、全身が黒くてテカっている。
側面には長さ1センチくらいの、黄色くて細長い虫の足のようなものがたくさん付いている。
これはまるで、ムカデやゲジゲジのような感じだな。
さらに長さ2センチくらいの、虫の触覚のように見える黒いウサギの耳が付いている。
こ、こいつがバニー柄クッキーの本体なのか!?
なんという不快害虫っぷりなんだ!?
すさまじい不快さだな!!
おっと、感心している場合ではないな。
さっさと倒してしまおう。
俺は刀で本体を突き刺そうとした。
くっ、避けられたか!?
本当に素早いヤツだな!?
あっ、飛んで逃げ出したぞ!
本体も飛べるのか!
おのれっ、逃してなるものか!!
俺は刀を振り下ろした。
だが、ひらりとかわされてしまった。
その後、何度も攻撃するが、すべて避けられてしまった。
くそっ、動きが速過ぎる!?
それに避けるのもうまいぞ!
面倒なヤツだな!?
これは俺では倒せそうにないな。
ここはダブルクリーナーヘッドに頼もう。
「ダブルクリーナーヘッド、ここに本体がいるぞ!吸引魔法を頼む!」
「分かった」
ダブルクリーナーヘッドから掃除機の運転音が聞こえてきた。
飛んでいた本体は、なすすべもなく吸い込まれていった。
そして、ダブルクリーナーヘッドからガリガリという音が聞こえてきた。
どうやら噛み砕かれているようだ。
これで倒したのかな?
おっ、飛んでいたクッキーたちが動きを止めた!
しかも、崩れていくぞ。
どうやら倒したようだな。
良かった。
「みんな、お疲れ様!みんなのおかげで無事に倒せたよ。ありがとう」
みんなも喜んでいるようだ。
今回はチームワークの勝利だな。
さて、後始末をしようか。
部屋の中には粉々になったバニー柄クッキーが大量にある。
この粉はどうしようか?
このまま放置で良いかな?
いや、その前に鑑定してもらおうか。
「総理!この粉はなんですか!?」
「えー、これはチョコレートクッキーを粉末状にしたものです。食べられます」
これはただのクッキーなのか。
ということは、飛んだり再生したりしていたのは、本体の能力なのだろう。
小さいのにすごいヤツだな。
さて、食べられるようだし、食べてみようか。
俺は粉を食べてみた。
ああ、確かにチョコレートクッキーだな。
甘くて美味しいぞ。
これを食べずに放置するのは、もったいない気がしてきた。
なんとか活用できないものか?
カオスに頼んで、またクッキーにしてもらおうか。
部屋中の粉を吸引魔法で集めてもらって、すべてクッキーにしてもらった。
直径150センチくらい、厚さ50センチくらいのチョコレートクッキーが400枚できた。
クッキーはアビスに収納してもらった。
いくらもったいなかったとはいえ、作り過ぎたか?
まあ、良いか。
そういえば、カードはないのか?
探してみよう。
「トウヤさん、ここにカードが落ちていますよ」
SIBINが教えてくれた。
おっ、カードがあったのか。
拾いに行こう。
えっ!?
こ、これは!?
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