第85話 8階

 8階にやって来た。


 洞窟の中に、日本の時代劇に出てきそうな長屋があるぞ。


 ものすごい数の部屋があるなぁ。


 長屋で迷路ができているぞ。


 ここも探索に苦労しそうだな。


 それにしても、なんでこんなものがあるのだろうか?


 いつも通り、訳の分からない場所だな。


 まあ、良いか、探索を開始しよう。



 まずは近くにある部屋を調べてみるか。


 えっ!?

 突然、長屋の戸が開いて、中から妙な格好をしたヤツが出て来たぞ!?


 全身一式分がそろっている西洋甲冑だ。


 プレートアーマーというヤツだな。


 身長2メートルくらい、光沢のない銀色をしている。


 なぜか兜の上に、緑髪のちょんまげのカツラを付けている。


 さらにそのカツラの上に、長さ30センチくらいのピンク色のウサギの耳が付いている。


 兜に、ちょんまげに、ウサギの耳か、頭がにぎやかなヤツだな。


 大きなカニのハサミのようなものを、両手に1本ずつ持っている。


 長さ1メートルくらい、色は赤だ。


 あれはなんだ?


 武器なのか?


 カニのハサミの二刀流?


 よく分からないな。


 とりあえず、こいつは『バニーちょんまげ西洋甲冑』と呼ぼうか。



 バニーちょんまげ西洋甲冑が、俺を発見したようだ。


 向かって来たぞ。


 俺は刀を抜いて構えた。


 バニーちょんまげ西洋甲冑が持っていたカニのハサミを、勢いよく振り下ろして攻撃してきた。


 俺は後退して、攻撃を回避した。


 やはりあれは武器なのか。


 なんでカニのハサミなのだろうか?


 西洋甲冑なんだし、両刃の剣を持てば良いのではないか?


 まあ、そんなことはどうでもいいか。


 応戦しないと。


 バニーちょんまげ西洋甲冑が、さらに攻撃を仕掛けてきた。


 カニのハサミを巧みに操り、連続攻撃をしてくる。


 見事なカニのハサミさばきだ、こいつ強いぞ!


 俺は先程から防戦一方で、反撃できない状態だ。


 くっ、どうする!?


「ここは誰かを召喚すべきじゃな」


 ラビリンがアドバイスをしてくれた。


 そうだな。

 では、誰を召喚するか?


「ここは余に任せるが良い」


 カクチューが自薦してきた。


 よし、分かった。

 頼んだぞ、カクチュー!


 カクチューを召喚した。


「これを受けるが良い」


 バニーちょんまげ西洋甲冑が、カクチューの幻影に包み込まれた。


 幻影魔法で目くらましか。


 って、そいつに通用するのか!?


 バニーちょんまげ西洋甲冑が、カニのハサミをデタラメに振り回している。


 どうやら視界をふさがれて、混乱しているようだ。


 こいつにも目があるみたいだな。


 まあ、そこはどうでもいいか。


 それよりも、今がチャンスだ!


 俺はバニーちょんまげ西洋甲冑に接近し、刀を水平に振り抜いた。


 バニーちょんまげ西洋甲冑の首を斬り落とした。


 バニーちょんまげ西洋甲冑は倒れた。


 ふう、なんとか勝てたか。


 勝てたよな?


 どうなんだろうか?


 初見の敵だし、慎重に行動した方だ良いか。


 念のために、倒れているバニーちょんまげ西洋甲冑を刀で突いてみた。


 動かないな。


 どうやら倒したようだな、良かった。


「見事な斬撃であったぞ、トウヤ」


「うむ、斬撃は見事であった」


 みんなに斬撃だけを褒められた。


 ということは、他はダメだったみたいだな。


 もっと修行した方が身のためだな。



 では、初見の敵恒例の鑑定しようか。


「総理!このバニーモンスターについて教えてください!」


「えー、これは地球の甲殻類のような味のするバニーモンスターです。食用で生食もできます」


 甲殻類の味!?


 なんでだよっ!?


 カニのハサミを持っていたからなのか!?


 それとも甲冑が甲殻のようだからなのか!?


 まあ、それはどうでもいいか。


 せっかくだから、食べてみよう。


 手足からは赤と白、胴体からは白い身が出てきたぞ。


 見た目はカニの身のようだな。


 では、いただきます。


 うまっ!?

 本当にカニの味がするぞ!


 これは美味しい!

 どんどん食べよう!


 そういえば、武器として使っていたハサミは食べられるのか?


「総理!このカニのハサミのようなものは食べられますか!?」


「えー、中身は食べられます。生食もできます」


 これも食べれるのか!?


 なら、食べよう!


 これもカニの味がするぞ!


 うん、うまい!



 ふう、もう満腹だな。


 ごちそうさま。


 ところで、この甲冑は何かに使えるのか?


「総理!この甲冑の素材としての評価を教えてください!」


「えー、硬くて丈夫な素材です。しかし、現在使っているものの方が優秀です」


 そうなのか。


 さすがはダブルバニーランクだな。


 なら、この甲冑はどうしようか?


 とりあえず、使い道が決まるまで、アビスに収納しておいてもらうか。



 そういえば、このちょんまげのカツラはなんだろう?


 何かに使えるのか?


「総理!このカツラはなんですか!?」


「えー、それは『エイエンノ・ジュウナ・ナサイトイッテソウ』という名前の植物です。生で食べると少し若返ります。ネンレ・イサショウシ・テソウよりも若返ります。栄養豊富です」


 な、なんだって!?


 これが植物!?


 しかも、いつもの若返るシリーズだったのか!?


 今回のは『永遠の17歳と言ってそう』なのか。


 いつも通りのネーミングセンスだな。


 ところで、なんで頭の上にあるのだろう?


「総理!この植物はなぜ頭部にあったのですか!?」


「えー、それは頭部に寄生する植物だからです」


 頭部に寄生!?


 なんじゃそりゃぁ!?


 怖過ぎるだろ!?


 こいつは俺にも寄生するのか!?


「総理!この植物はトウヤ氏にも寄生しますか!?」


「えー、トウヤ氏には、ポイズン・ロール・ガードがかけられていますので寄生しません」


 良かった……


 って、ちょっと待て!?


 それってかかってなかったら、寄生されるということか!?


 絶対に毎日忘れずにかけてもらおう!



 では、こいつを食べてみるか。


 と思ったが、このウサギの耳が邪魔だな。


 これは何かに使えるのか?


「総理!ウサギの耳は何に使えますか!?」


「えー、バニーモンスターに恨みがある場合は、破いてストレス解消に使えます」


 またそれなのか。


 まあ、良いか。


 ウサギの耳は取り除いて、食べてみよう。


 えっ!?

 このカツラまで、カニの味がするぞ!?


 美味しいけど、違和感がものすごいな!?

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