第81話 7階
7階にやって来た。
えっ!?
ここは町なのか!?
洞窟の中に、レンガと思われるもので建てられた茶色の家が並んでいる。
すべて似たような外装の平屋だ。
床は舗装されていない。
土がむき出しの状態になっていて、所々に草が生えている。
なんだここは?
なんでこんなものがあるのだろうか?
まあ、考えても分からないか。
さて、まずは何をしようか?
とりあえず、他の階にはなかった、家の中を見てみようか。
新しい要素だし、気になるからな。
家の前にやって来た。
この家には、扉が取り付けられていないぞ。
出入り口用の穴が開いているだけだな。
窓もあるが何もはめ込まれていない。
丸い穴が開いているだけだ。
セキュリティーなんてものは存在していないようだな。
まあ、こんなところだから必要ないのかもしれないけどな。
では、入ってみようか。
お邪魔します。
家の中は10畳くらいの部屋が1部屋あるだけだ。
壁紙は貼られていない、壁面は素材がむき出しだ。
天井がなぜか白く光っていて、室内は非常に明るい。
家具は何もない。
誰も住んでいないようだ。
この家はなんのためにあるのだろうか?
まだよく分からないな。
他の家も見てみるか。
隣の家に入ってみた。
内装は先程の家と変わらない。
だが、違う点もあった。
それはこの家には住民がいるということだ。
な、なんだあいつは!?
そこにいたのは、筋骨隆々の人間の手足が付いた縄文土器のような何かだった。
あの炎みたいな形状は、確か火焔型土器という名前だった覚えがあるぞ。
土器の大きさは全長1メートルくらい、色は茶色だ。
人間の手足の部分も、土器と同じ材質で作られているように見える。
土器の縁には、長さ30センチくらいのピンク色のウサギの耳が付いている。
こいつは『バニー火焔型土器』とでも呼ぼうか。
床に座って、何かを行っているようだ。
いったい何をやっているのだろうか?
どうやら粘土で
陶芸家のバニーモンスターなのか?
さて、あいつをどうしようか?
バニーモンスターだから倒すべきなのだろうか?
それとも壺を作っているだけのようだし放っておこうか?
どちらにしようか?
ん?
なぜかバニー火焔型土器が立ち上がったぞ。
こいつ結構長身だな、2メートルくらいある。
そして、俺の方を向いた!?
これはどうやら見つかってしまったようだ。
まあ、入り口に突っ立てただけだから無理もないけどな。
ん?
なんだ?
バニー火焔型土器が、両手で体のあちこちをリズミカルに叩き出したぞ!?
あれは何をやっているんだ!?
威嚇しているのか!?
「どうやらアレは言語のようじゃな」
ラビリンがそう言った。
「ええっ!?アレが言語なのか!?なんと言っているんだ!?」
「うむ、通訳しよう『いらっしゃいませ、ご用件はなんでしょうか?』と言っておるようじゃな」
ええっ!?
あれでそんなことを言っているのか!?
ただ適当に叩いているように見えるぞ!?
いや、そんなことはどうでもいいか。
それよりも返答しないとな。
「すみません。特に用はありません。失礼します」
俺はそう言って立ち去ろうとした。
ん?
まだ体を叩いているぞ。
今度は何を伝えようとしているんだ?
「あれは『なぜ何も答えないのですか?』と言っておるようじゃな」
ラビリンが通訳してくれた。
えっ?
返答ならしただろ?
あ、そうか、通訳魔法の効果が切れていて、言葉が通じないのか。
仕方ないので、ラビリンを召喚して、先程俺が言ったことを通訳してもらった。
ついでに通訳魔法をかけてもらった。
今度からダンジョンを探索する時も、通訳魔法とポイズン・ロール・ガードをかけてもらうことにしよう。
ん?
またバニー火焔型土器が体を叩いたぞ。
「なるほど、貴様は覗き魔ということでがすね!ぶっ殺すでがす!」
おおっ、バニー火焔型土器が、何を言っているのか理解できるぞ。
さすが通訳魔法だな……
って、ちょっと待て!?
さっきはラビリンが敬語で通訳してくれていたじゃないか!?
なのに、なんで今は妙な語尾の付いたタメ口なんだよっ!?
通訳魔法って、効き目に個人差があるのか!?
後、俺は覗き魔じゃないぞ!?
なんでいきなりそんな解釈をするんだよっ!?
とにかく否定しないと!
「ちょっと待ってください!誤解ですよ!私は覗き魔ではありません!ただの客ですよ!」
「問答無用でがす!死ぬでがす!!」
バニー火焔型土器が襲ってきた。
取り付く島もないのかよっ!
仕方ない、戦うか!
と思ったのだが、バニー火焔型土器は作り中の壺を踏んで、足を滑らせて仰向けに転倒したぞ。
その際、床にぶつかって、土器の部分が割れた。
バニー火焔型土器は動かなくなった。
ええ……
何やってんだよ……
ドジっ子かよ……
では、バニー火焔型土器を鑑定してもらおうか。
初見の敵だからな。
「総理!このバニーモンスターの特徴を教えてください!!」
「えー、全身がクッキーでできています。そのまま食べられます」
クッキー!?
こいつは土器じゃないのかよっ!?
クッキーなのに、なんで動いていたんだ!?
意味の分からんヤツだな。
まあ、良いか、いつものことだし。
では、せっかくだし、ちょっと食べてみようか。
いただきます。
確かにクッキーだな。
プレーンクッキーの味がする。
甘くてサクサクしていて、とても美味しいぞ。
ふう、食った食った。
ごちそうさま。
量が多いから、全部は食べられないな。
余った分はアビスに収納してもらおう。
そういえば、バニー火焔型土器が作っていたものはなんなのだろうか?
これも実はクッキーなのか?
「総理!この作りかけのものはなんですか!?」
「えー、それは粘土製の土器です」
これは普通の土器なのか。
バニー火焔型土器は、土器型クッキーの陶芸家だったのか?
訳の分からん存在だな。
ついでに、この家が何で建てられているのかも教えてもらおう。
クッキーなら非常食にもなるしな。
「総理!この家は何で建てられているのですか!?」
「えー、それも粘土で作ったレンガですね」
クッキーなのは、バニー火焔型土器だけなのか。
なんでこいつだけが粘土ではないんだ?
まあ、どうでもいいか。
ここは意味の分からないものだらけのダンジョンだしな。
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