第78話 ドラゴンマスクの不審者から10分間時間を稼ぐ話

 というわけで、時間を稼がなければいけなくなった。


 さて、どうするか?


 素直に、このまま逃げ回るしかないのか?


 いや、待てよ。


 ここはバニードラゴンマスクに話しかけてみようかな。


 俺の巧みでもない話術でも、時間稼ぎくらいにはなるだろう。


 あまり自信はないけどな!


 よし、やってみよう!


「そこの君!なかなかやるようだな!君は何者なんだ?」


「貴様に教える必要はないニャン!」


 取り付く島もない!


 まあ、俺も先程、この質問に答えなかったから、当然の結果なのかもしれないけどな。


 だからといって、諦めるわけにはいかない!


 もっと話しかけてみよう!


「君はトリプルバニーランクのバニーモンスターなのか?役職に就いているのか?」


「な、なぜランクや役職のことを知っているニャン!?」


 おっ、バニードラゴンマスクの動きが止まった。


 それに動揺しているぞ。


 これはチャンスだな。


 この話題をもっと掘り下げてみよう。


「なぜって決まっているだろ。教えてもらったからだ」


「なんだとだニャン!?誰に聞いたんだニャン!?答えるニャン!!」


 誰にか……


 答えはバニーダブルマグロにだが、ここは素直に答えるべきなのだろうか?


 いや、ここはデタラメを吹き込んでみようかな。


 もしかしたら、バニーモンスターたちの組織が混乱するかもしれないしな。


 よし、やってみるか。


「大統領に聞いたんだ」


 正確には大統領を目指していたヤツにだがな!


「な、なんだってだニャン!?そんなバカなことがあるわけないニャン!?大統領はそんなことをする方ではないニャン!」


 ほう、大統領は信用されているんだな。


 フフフッ、良いことを思い付いたぞ。


 ここは大統領の悪評をばらまいて、もっとこいつらを揺さぶってやろう。


 ネガティブ・キャンペーン作戦開始だな!


「超社長のことも聞いたぞ」


「な、なんだとだニャン!?いったい何を聞いたんだニャン!?」


 おおっ、食いつきが良いねぇ。


 さすがは超社長だな。


 でも、俺ばかりが情報を言わされるのはフェアじゃないよな。


「おっと、その前にこちらの質問にも答えてもらおうか。ランクと役職は?ここで何をしている?」


「仕方ないニャン。ランクはトリプルバニーランクで、役職は巡査部長だニャン。何をって、当然この星の侵略だニャン!」


 巡査部長!?


 それって、確か警察の階級じゃなかったか!?


 なんでそんな役職があるんだよっ!?


 相変わらず、訳が分からん連中だな。


 まあ、そこはどうでもいいか。


 それよりも、侵略をしているという方が重要だよな。


 侵略をしているということは、その対象となるものがいるということだよな。


 近くに日本人の拠点があるのか?


 それとも隣の国へ行こうとしていたのか?


「さあ、答えてやったのだから、答えるニャン!」


「あらゆる武術に秀でていて、すべての魔法を扱えるそうだな。後、強力な兵器を所有しているらしいな」


「なんだ、その程度の情報しかないのかニャン」


 これはたいした情報ではないのか。


 なら、これはどうなんだ?


「あらゆる攻撃を防ぐものや、広範囲を破壊するような兵器があるとも言っていたぞ」


「な、なぜそれをだニャン!?大統領はそんなことまで言ってしまっていたのかニャン!?」


 明らかに動揺しているようだな。


 これって、秘密兵器の情報だったりするのか?


 なぜ、そんなものをバニーダブルマグロが知っていたのだろうか?


 こいつらの組織は、意外と情報管理が甘いのか?


 まあ、今はそんなことはどうでもいいか。


 さあ、もっと揺さぶってみよう!


「星間転移おろし金という、異星へ行くことができる道具があるとも言ってたな」


「そ、そんなことまで知っているのかニャン!?」


 おおっ、動揺しているな。


 どうやら効果は抜群のようだ。


 まだまだいくぜ!


「ギデルヴィド星では、大陸の一つを完全に占領したとか言っていたな」


「くっ、なんということだニャン!?いったいどこまで情報が漏れてしまっているんだニャン!?」


 愕然がくぜんとしているな。


 これでだいぶ大統領の信用を落とせたのではないか?


 内乱でも起きてくれたら、こいつらと戦っている人たちが少しでも楽になるのにな。


 まあ、そんなにうまくいくわけないか。


 事実を確認されて、数日謹慎処分になるくらいかな?



「貴様をここで殺すわけにはいかなくなったニャン。捕らえて、情報を吐かせるしかないニャン!」


 えっ!?

 なんでそうなるんだよ!?


 って、そう不自然でもないか。


 立場が逆だったら、俺もそうするよな。


 ところで、捕えた後は、やはり拷問になるのか!?


 なりそうだよな!?


 そんなのお断りだぞ!?


 能力発動まで、後どのくらいなんだ!?


 あ、なんとなく後何分で発動するのか分かるぞ。


 後7分くらいだな。


 こんな便利機能が付いている能力だったのか。


 親切で素晴らしいな。


 って、後7分も時間を稼がなければいけないのか!?


 ああ、気が重い……


「さあ、いくニャン!」


 バニードラゴンマスクがまたバタフライで向かって来た。


 さあ、がんばって逃げよう。


 後7分だ!


 俺は必死に攻撃を回避しつつ、逃げ回った。



 そして、7分が経過した。


 すると、突然、視界がゆがみ、体が宙に浮かぶような感覚がした。


 気が付くと、周囲の様子が変わっていた。


 ここは見慣れた洞窟の中だ。


 どうやらダンジョンに召喚の能力の発動に成功したようだ。


 た、助かった……


 ああ、良かった……


 とてつもなく疲れたぞ……


 俺はその場に寝転がった。

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