第75話 装置探し

 ゼヴィート王国軍の爆撃が続いている。


 バニーモンスターの拠点にミサイルのようなものが、次々と命中し爆発している。


 このままでは拠点の建物は、すべて倒壊するだろう。


 当然、中にある星間を移動する装置も破壊されることになると思われる。


 俺たちは装置が破壊されるところを、ただ見ていることしかできないのであろうか?


 できないんだよなぁ……


 あの爆発の中に入って行ったら、確実に死ぬだろうし。


 ああ、現実は非情だなぁ。



「おお~、やってるッスね~」


「これはすごいダス!今回の王国軍は気合が入っているダス!」


 クリーナ族とカミブク族の2人組がやって来たぞ。


 会話の内容から察するに、この2人は冒険者のようだな。


「兄貴、これって、いつもよりすごいッスか?」


「ああ、今回のはものすごいダス。いつもの倍くらい撃っている気がするダス」


 いつもの倍なのか。


 最近は失敗続きだったらしいから、戦力を増強したのか?


「兄貴、これからどうしたら良いッスか?こんなんじゃ近付けないッスよ!」


「ミサイル攻撃をやめるまで待っていれば良いダスよ」


 兄貴と呼ばれているカミブク族の方は、拠点攻めに何度も参加しているようだ。


「やめた後は、どうなるッスか?」


「バニーモンスターが出て来て戦闘になることもあれば、王国軍が撤退することもあるダス」


 そうなのか。


 さすがは経験者、参考になるなぁ。


「俺たちはいつ幼体を捕りに行くッスか?」


「ミサイル攻撃をやめた後が良いダス。そのタイミングならバニーモンスターが出て来ても、王国軍の方に行ってしまうダス。その隙に素早く捕って逃げるダス」


 なるほど。


 なら、俺もそのタイミングで拠点に向かおうかな?



 ミサイル攻撃が続いている。


 人生であんな大量の爆発を見ることになるとは思わなかったな。


 俺の人生、とんでもないことになっているねぇ。


「それにしても、あの建物は全然壊れないッスね!」


「理由は分からないダスが、あの建物はものすごく強固ダス。あれのせいで、この拠点はなかなか攻略されないダスよ」


 特殊な素材でも使っているのか?


 これはひょっとしたら、装置が破壊されずに済むかもしれないぞ。


 後は、バニーモンスターが拠点から出払ってくれれば良いのになぁ。


「バニーモンスターって、のんきな連中なんッスかね?あれだけ攻撃されても出て来ないッスよ。変な連中ッスね」


「すぐ出て来る時もあれば、なかなか出て来ない時もあるダス。あいつらのことはよく分からないダス」


 これだけ攻撃されているのに出て来ないのは、確かに変だな。


 もしかして、他の星に行っているのか?



 ん?

 あ、あれは!?


 5人組のクリーナ族が、大きな白いミサイルのようなものを持って来たぞ!?


 長さが6メートルくらい、直径1メートル弱くらいあるように見える!?


 まさかあれを撃ち込むつもりなのか!?


「あ、兄貴、ものすごくデカいのがあるッスよ!?」


「ああ、これはマズそうダス!ここはいったん離れるダス!」


 俺もそうしよう!


 拠点に背を向け駆けだした。



 拠点の方から、大きな爆発音が聞こえてきた。


 あのデカいミサイルを撃ったみたいだな。


 そろそろ戻っても良い頃合いかな?


 行ってみるか。



 先程いた場所に戻って来た。


 兵士たちと、魚型のバニーモンスターたちが空中で戦っていた。


 バニーモンスターたちは、やっと出て来たのかよ。


 重役出勤だな。


 爆撃の方は行われていない。


 弾切れになったのか?


 戦闘に集中しているだけなのか?


 何が原因なんだろうな?


 拠点の建物のいくつかは半壊しているようだ。


 黒い円のある建物は、よく見えないな。


 周囲の畑に冒険者はいない。



 さて、これからどうするか?


 ここで、もう少し様子を見るべきか?


 それとも拠点に行ってみるべきか?


 うーむ、どうしようか?


 ここは危険だけど、行ってみようかな。


 虎穴に入らずんば虎子を得ずというしな。


 よし、決定だ、行ってみよう!



 黒い円のある建物の近くまでやって来た。


 ぎゃああああっ!?


 黒い円のある建物が全壊しているぞ!?


 まさかあのデカいミサイルが直撃したのか!?


 なんということだ!?


 しかも、その建物のガレキをバニーサルなどのバニーモンスターたちが撤去しているぞ。


 なんで戦闘中に、そんなことをしているんだ!?


「さっさと退かすでゴサル!」


 シルバーバニーサルが叫んでいる。


 なんだか焦っているような感じだな。


「ああ、マズいでゴサル。超社長から賜った『星間転移おろし金』を失ったら、解雇されてしまうでゴサル……」


 気になる発言があったぞ!?


 星間転移おろし金って、なんだよ!?


 それが俺の探しているものなのか!?


 おろし金とか聞こえたけど、調理器具のおろし金ではないよな!?


 通訳魔法の不具合だよな!?


 それとバニーモンスターって、解雇されるのか!?


 解雇されたら、どうなるんだ!?


 フリーのバニーモンスターになるのか!?


 訳が分からないぞ。


 まあ、そこはどうでもいいけどな!



 さて、これからどうする?


 ガレキを撤去しているバニーモンスターは数十体はいる。


 全員撤去作業に集中していて、俺の存在に気づいていない。


 現状はそんな状態だな。


 どうしよう?


 あいつらと真正面から戦うのは危険だよな。


 うーむ、良い方法はないものか……


「トウヤ、俺のガス魔法で、あいつらをまとめて倒してしまおうぜ!」


 ヘーマンが提案してきた。


 数が多いし、それでいこうか。


 ここは重要な局面だから、切り札を出すとしよう。


 ヘーマンを身体能力そのまま召喚で召喚した。


「おっしゃ!くらえ!!」


 ヘーマンからブバッという音が聞こえた。


 その直後に炎が放射された。


「ギャアアアアアアーー!!!」


 バニーモンスターたちとガレキは炎に包まれた。


 バニーモンスターたちを倒した。


 おおっ、これはすさまじいな!


 って、これでは星間転移おろし金も焼かれてしまったのでは!?


 ガレキを退かして、探さないと!


 俺はガレキを退かそうとした。


 熱っ!?


 ガレキがものすごく熱い!?


 まあ、焼いたし、当然か。


 これではガレキを撤去できないな。


 そうだ、SIBINに水をかけてもらおう。


 まだ周囲に敵がいるかもしれないから、身体能力そのまま召喚で召喚しよう。


 SIBINが出て来た。


 そして、SIBINが茶色い水をガレキにかけた。


 ちょっと!?

 なんで茶色い水なんだよっ!?


 ん?

 なんだ?


 ゴゴゴッという感じの地鳴りのような音が聞こえてきたぞ。


 地震か?


 えっ!?


 うわあああああああっ!?


 な、なんだこれは!?


 落下している!?

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