第74話 プランニング

 ゼヴィート王国中の古物屋を巡った。


 だが、カードは売っていなかった。


 明日は拠点攻めが行われる日だな。


 忙しくなりそうだし、そろそろ王都に戻ろう。


 そして、宿を取って、ゆっくり休むことにしよう。



 前に泊まった宿の個室にやって来た。


 そろそろ日が落ちそうな時間だな。


 ちょっと早いが夕飯を食べて、寝ることにしようかな?


 いや、ちょっと待てよ。


 明日の計画を立てた方が良いかもしれないな。


 戦争中にアドリブで動ける自信はまったくないし。


 ある程度は想定しておいた方が身のためだと思う。


 よし、みんなとも相談しながら、計画を立てよう。



 ええと、まずは情報を整理しようか。


 俺の目的は星間を移動する手段を手に入れることだよな。


 そのためには、あの大きな黒い円のある建物の中に入って、星間を移動する装置を奪うなり、解析するなりしなければいけないと思われる。


 問題はその装置がどういったものなのか、まったく分からないことだな。


 前に建物に入った時は、周囲のバニーモンスターや黒い円に気を取られていて、装置の類はよく見ていなかったんだよな。


 誰か覚えている者はいるか?


「いいえ、よく覚えていません」


「ワシもじゃ」


 みんなも覚えていないのか。


 いったいどのようなものなのだろうか?


 機械のようなものなら、取り外してアビスに収納すれば良いだけなんだけどな。


 そういえば、ダンジョンの5階の黒い円とつながっている廃墟では、魔法陣の上に黒い円があったよな。


 もしかすると、今回もそういったものなのかもしれないな。


 もしそうだとしたら、魔法陣を書き写せば良いのかな?


 うーむ、どうなんだろうか?


 まあ、念のために、書き写す準備はしておこう。


 ダンジョンのマップ用に紙とペンはあるから、それを使うか。


 ああ、こういう時にスマホがあれば、撮影するだけで終わるんだがなぁ。


 俺のスマホは家に置いてきたんだよな。


 ダンジョンで破壊されたり、紛失したりすると、困るからという理由で。


 持って来れば良かったな。


 今更言っても仕方ないけど。


 そういえば、この星にはカメラは売っていないのだろうか?


 うーむ、どうなんだろうか?


 まあ、売っていたとしても、今は金はないし、探す時間もないけどな。


 ん?

 カオスなら作れるかな?


 ちょっと聞いてみるか。


「仕組みが分からんから作れんぞ」


 仕組みか、俺もよく分からないから無理か。


 仕方ない、大人しく書き写すとしよう。



 さて、次に考えることは、どうやって黒い円のある建物に入るかだな。


 戦闘中に入れるものなのかな?


 隙があれば、なんとかなるのか?


 その隙は、いつできるのだろうか?


 そもそもバニーモンスターやこの国の兵士たちは、どのように戦うのだろうか?


 バニーモンスターはいろいろなヤツがいるから、不明確な部分が多いが、この星に来た時は大軍を突撃させていたよな。


 今回もただ突っ込んで来るだけなのだろうか?


 もしそうなら、全員が出払ったタイミングを見計らって、建物に入ってしまえば良いだけなのにな。


 そんな都合の良いことが起こってくれないかな?


 起こってくれたら、うれしいなぁ。



 この国の兵士たちは、どうなのだろうか?


 前に王都の近くで見た冒険者のように戦うのか?


 そうなると、兵士たちは接近戦を仕掛けることになるのか?


 いや、待てよ。


 門の見張りはクリーナ族ばかりだったから、兵士はクリーナ族が多いのかな?


 とすると、吸引魔法と排気魔法で戦うのか?


 そう仮定すると、遠距離から何かを排気魔法で射出して攻撃することも考えられる。


 その場合の兵士側の戦法は、まず遠距離から攻撃して、バニーモンスターが接近して来たら、近接戦闘に切り替えるということになるのか?


 どうなんだろうか?


 うーむ、分からないことがあり過ぎる。


 ちょっとみんなに聞いてみるか。


「戦士なら正々堂々と真正面から戦うに決まっている」


 骸王がそう言った。


 その理屈はバニーモンスターには通用しなさそうだと思うぞ。


「遠距離戦の後に近距離戦に移行するという、トウヤさんの推測は当たっていると思いますよ」


「ワシもそうじゃと思うぞ」


 SIBINとラビリンがそう言った。


 SIBINたちも賛同してくれるのか。


 他のみんなはどうだ?


 俺の考えに賛同する者と、よく分からないと答える者がいた。



 では、これらを踏まえて、結論を出そうか。


 俺たちの当日の行動は、まずは戦場の近くに隠れて、機をうかがう。


 近距離戦になったら、隙を見て建物に侵入し、お宝をいただく。


 いただいたら逃げる。


 想定外のことが起きた場合は、臨機応変に対応する。


 これで良いかな?


「それで良いと思いますよ」 


「うむ、ワシもそう思うぞ」


 みんな賛成してくれた。


 よし、決定だな。


 さて、明日に備えて、今日はもう寝るとするか。



 次の日の朝。


 俺たちはバニーモンスターの拠点の近くの森にやって来た。


 集合時間までは、まだ時間がある。


 侵入できるようになるまで、ここに隠れていることにしよう。



 ……そろそろ時間だ。


 ん?

 上空を何かが飛んでいるぞ。


 あれはクリーナ族だな。


 それも大軍だ。


 彼らが王国の兵士なのかな?


 おや?

 掃除機の排気口に見慣れないものが付いているぞ。


 外見はミサイルのようだな。


 色は白っぽい、長さは1メートルくらいだ。


 あれはなんなのだろうか?


 あ、兵士たちがミサイルのようなものを、バニーモンスターの拠点に向けて発射したぞ。


 うわっ!?

 着弾と同時に、爆発が起こった!?


 あいつら、あんな兵器を持っていたのか!?


 その後も次々とミサイルを撃ち込まれて、拠点の各地で爆発が起こっている。


 容赦ない爆撃だな。


 これがゼヴィート王国の軍事力なのか?


 俺たちは彼らの力を過小評価していたようだ。


 昨日の想定は的大外れだな!!


 あ、このままだとマズい!


 建物ごと星間を移動する装置まで破壊されてしまうじゃないか!?


 どうしようか!?


 あの爆撃の中に突っ込むのだけは遠慮したいぞ!

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