第68話 それは紳士なのか?

 バニーオオトカゲと対峙している。


 さて、どうするか。


 むっ、バニーオオトカゲが、ゆっくりと近付いて来ている。


 接近戦を仕掛けるために、間合いを詰めているのか?


 その後も、バニーオオトカゲは俺をにらみ付けながら、じりじりと迫って来た。


 そして、バニーオオトカゲが口を開けて、勢いよく飛びかかって来た。


 だが、身体能力が強化された俺にとってはたいした速さではないな。


 その攻撃を横に跳んで回避し、その直後に刀を振るった。


 バニーオオトカゲの首を斬り落とした。


 こいつはそんなに強くなかったな。


 さて、こいつを売却するか。


 いや、待てよ。

 初めて会ったヤツだし、ここは鑑定してから決めようか。


 良質な素材になるようなら、売らずに利用することも考えよう。


「総理!このバニーオオトカゲの特徴や利用法を教えてください!!」


「えー、バニーオオトカゲの特徴は毒があることです。み付くと同時に体内に毒を流し込んできます。流し込まれた生物は徐々に衰弱していき、いずれは死に至ります」


 ナニソレ怖い!?


 こいつ毒を持ってたのかよっ!?


 あ、でも、俺は大丈夫か。


 ポイズン・ロール・ガードをかけてもらっているからな。


 これからも毎日忘れずにかけてもらうことにしよう。


「えー、利用法は肉は焼けば食べられます。皮は丈夫なので加工して利用できます」


 ほう、そうなのか。


 今の大型のバニーモモの素材から作った服と、どちらが優れているのだろうか?


「総理!!バニーオオトカゲと大型のバニーモモの素材は、どちらが優れていますか!?」


「えー、大型のバニーモモの方が優れています」


 そうなのか。


 それならバニーオオトカゲは売却しよう。


 解体は面倒だからしなくて良いか。


 王都を汚してしまいそうだから、血は抜いて洗っておこう。


 SIBINを召喚して、水魔法で洗ってもらった。


 よし、では、持って行こうか。



 王都の門で見張りのクリーナ族に職務質問をされてしまったが、なんとか売却できたぞ。


 お値段は、ちょうど50万アエレだった。


 直径4センチくらいの金色の硬貨を5枚もらった。


 厚さは500円玉くらいだ。


 片側には10万アエレと書かれている。


 もう片側にはサイバコ族の絵が描かれているぞ。


 なぜサイバコ族の絵なんだろうか?


 彼らがリサイクル魔法で作ったからなのだろうか?


 製作者の特権なのか?


 それから、この硬貨はどっちが表なんだろうな?


 まあ、そんなことはどうでもいいか。


 カードを買いに行こう!



「ありがとうございました~!」


 古物屋でカードを買った。


 いやあ、買えて良かったなぁ。


 おかげでまた無一文になったけどな!


 ああ、やれやれだな~。


 まあ、良いか。


 そんなことよりも、召喚してみよう。


 いや、ちょっと待てよ。

 ネクタイと会話しているところを見られたら、不審者だと思われてしまうか?


 うーん、どうなんだろうか?


 ネクタイと会話をしている紙袋のおっさん……


 この星の方々はどう感じるかは分からないけど、俺の感覚では不審者だな。


 ここは念のために、誰もいない場所に行った方が良さそうだ。


 どこか良い場所はないかな?



 王都の中にはなさそうなので、外に出ることにした。


 そして、王都から離れたところにある雑木林にやって来た。


 よし、周囲には誰もいないな、ここなら召喚しても問題ないだろう。


 俺はカードを取り出した。


 おや?

 カードの文字が日本語になっているぞ。


 なんでだ?


 所有者が変わったからなのか?


 細やかな心配りだな。


 では、召喚するとしようか。


 紳士の聖鎧・ネクタ・イが出て来た。


 長さ10センチくらいのネクタイだ。


 空中に浮いている。

 こいつも飛べるタイプのようだな。


「ワタクシを召喚したのは、あなたですか?」


 紳士の聖鎧・ネクタ・イが話しかけてきた。


 落ち着いた余裕のある大人というか、紳士という感じの印象を受ける。


「ああ、そうだ。俺は角野当也だ。トウヤとでも呼んでくれ。よろしく頼むよ」


「ワタクシは紳士の聖鎧・ネクタ・イと申します。ネクタで良いですよ。こちらこそよろしくお願いします」


「分かったよ。ところで、紳士魔法って、どんな魔法なんだ?」


「名前の通り、紳士が使用する魔法ですよ」


 紳士が使用する魔法!?


 なんだそれ!?

 まったく分からんぞ!?


「具体的にどのようなことができるんだ?」


「今は対象となったものを、もろくする魔法だけしか使えませんよ」


 脆くする魔法?


 ゲームで言うなら、守備力を下げる魔法なのかな?


 敵によっては役に立ちそうだな。


「その魔法をかけると、どのくらい脆くなるんだ?」


「そうですね。ネクタイだけしか身に着けていない人間くらい脆くなりますね」


 なんだその例えは!?


 全裸にネクタイだけの状態なのか!?


 ものすごく変態的だな!?


 どのくらい脆くなるのか、まったく伝わってこないぞ!?


 それに全裸の人間にかけたら、どうなるんだっ!?


 ネクタイの分だけ堅くなるのか!?


 訳が分からんぞ!?


 まあ、これは検証してみるしかないか。


 ネクタにはカードに戻ってもらって、腰に貼ろう。



 さて、この後はどうしようかな?


 ん?

 そういえば、古物屋ってあの店以外にもあるのかな?


 普通に考えて、他にもありそうだよな!?


 なら、他の店にもカードが売っている可能性があるのでは!?


 当然、あり得るな!


 これは世界中の古物屋巡りをするしかないのか!?


 戦力アップは必要だし、その方が良さそうだな。


 そうなると、お金もまだまだ必要だよな。


 世界中の古物屋がありそうな都市を調べる必要性もあるぞ。


 やることが増えてきたなぁ。


 まあ、良いけど。


 おっ、日が落ちてきたぞ。


 今日はこのくらいにして、夕飯を食べて寝るとするか。

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