第20話 VS2階のボス

 さて、今度は俺の番だな。


 カードを3枚貼っていない状態で、どのくらい戦えるのか調べておこう。


 それなりに戦えれば、俺の出番もあるかもしれないからな。


 倒したバニートビウオは、アビスに収納してもらったぞ。



 むっ、またバニートビウオがいたぞ。


 よし、あいつと戦ってみよう。


 行くぞ!!



 うっ、普通に歩いている時は気にならなかったけど、全力で走ったりシャベルを振るったりすると、いつもより体が動いていないのが分かるぞ。


 明らかに身体能力が低下している。


 バニートビウオの速さに付いて行くのがやっとだ。


 防戦一方で攻撃をしている暇がないぞ!?


「トウヤ、倒せないようなら交代しろ!」


 骸王がそう叫んだ。


 気遣ってくれているようだ。


 ありがたい限りだな。


「もう少しだけ自力でがんばってみるから、手を出さないでくれ!」


「承知した。無理をするな」


「ああ、分かっている!」


 さあ、もうちょっと踏ん張ってみるか。


 とは言ったものの、どうすれば良いのだろうか?


 バニートビウオは縦横無尽に空中を泳ぎ回り、胸ビレで攻撃してくる。


 俺は避けるのが精一杯だ。


 水得ていない魚のくせに腹立たしい!


 なんとかヤツに反撃しないと。



 しばらく戦って分かったことがある。


 俺の身体能力も技術も、まったく足りてないということだ!!


 これは今は無理っぽいな。


 ここは素直に交代しよう。


 意地を張っても仕方ないからな。


「すまない、骸王、代わってくれ!」


「承知した」


 骸王がそう言って、バニートビウオに向かって行った。


 骸王はバニートビウオの胸ビレを紙一重で回避し、尾の付け根をつかんで壁に叩きつけた。


 バニートビウオは動かなくなった。


 おおっ、見事だな!!



 さて、これで問題がハッキリしたな。


 このままだと、俺が足を引っ張るかもしれないということだ。


 もっと3階のモンスターと戦って修行した方が良さそうだ。


 新入りのポイズンのレベルが上がれば、俺の身体能力をさらに上げてくれるだろうからな。


 ついでに3階の地図も完成させてしまおうか。


 では、がんばるか。



 5日後。


 3階で修行しまくった。


 そして、毎日バニーウニを食べまくった。


 ちょっと飽きてきた。


 ポイズンの体はかなり成長した。


 太さ20センチくらいの蛇になり、とぐろの高さは1メートルくらいになった。


 レベルの方もかなり上がったのだろう。


 ステータスはこうだった。


 レベル  …… 形は悪くない、ちょっと臭いが気になる。


 強さ   …… 今日はまあまあだな!

 頭脳   …… ほう、このツヤは悪くはないぞ!

 速さ   …… これは、とても普通な感じですねぇ!!

 幸運   …… この形は!?ちょっと良いね。


 特殊   …… 毒が効かないのです!!

         念話、念聴、念視も得意です!!


 特記事項 …… 何もありませんでしたーー!!!


 こいつらは何を評価しているんだ!?

 という感じのステータスだな。


 当然、俺の身体能力の上昇量も増している。


 これなら骸王たちを召喚しても、足手まといにはならないはずだ。


 よし、そろそろ大型のバニータコバナナの皮と戦ってみるか。


 さあ、行こうか。



 2階のボス部屋の扉の前にやって来た。


 骸王、ダブルクリーナーヘッド、ヘーマンは召喚済みだ。


「よし、みんな行くぞ!!」


「うむ」


「分かった」


「ああ、行こうぜ!!」


 俺は扉を開けた。


 大型のバニータコバナナの皮が部屋の中央にいた。


 まずはヘーマンに先制攻撃をしてもらおう!


「さあ、行くぜ!!俺の火魔法をくらいな!!」


 ヘーマンからブバッという音とともに炎が放射された。


 炎が一直線に大型のバニータコバナナの皮に向かって行く。


 大型のバニータコバナナの皮は炎に包まれた。


 やったか!?


 どうなんだ!?


 えっ!?

 こ、これは!?


 大型のバニータコバナナの皮がいたところには、黒焦げの巨大なバナナの皮が2本分とカードが落ちていた。


 ええ……


 本当にやったのか!?


 倒しちゃったのか!?


 これはすごいな。

 俺の出番はまったくなかったな。


 あの修行の日々はなんだったのか!?


 いや、無駄になるわけではないけどさ。


 なんか、こう、わだかまりが残るよな。


 まあ、仕方ないか。

 気を取り直して、あのカードを見てみよう。



 ええと、名前は『破邪之聖剣はじゃのせいけん八岐甘蕉やまたのばなな』だそうだ。


 ええ……


 これはまたすさまじい名前だな。


 というか、聖剣なのにバナナなのか?


 意味が分からないな。


 その下には、ヘタとは反対の部分の先端から、8股になるように皮がむかれているバナナが描かれていた。


 色は黄色だ。

 果肉はないようだ。


 バニータコバナナの皮から、ウサギの耳を取り払ったような外見だな。


 これで聖剣なのか?


 さらにその下の部分には、こう記載されていた。


 レベル  …… まだまだ青くて、とても悲しい。


 強さ   …… こいつは、とんでもないなまくらだぜ!?

 頭脳   …… ふっ、やるじゃあないか!

 速さ   …… いやあ、これはダメダメですねぇ。

 幸運   …… くっ、な、なんだこのすさまじい気は!?


 特殊   …… 破邪が得意なのです!!


 特記事項 …… おおっと、何もありません!ありませんよ!!!


 幸運がすごそうな感じだな。


 後、破邪ってなんだ?


 そのままの意味で良いのか?


 確か邪道を破るという意味だったような覚えがあるけど、どういうことなのだろうか?


 まあ、良いか。

 召喚して聞いてみよう。


 それでは実行だ!!


 破邪之聖剣・八岐甘蕉が出て来た。


 空中に浮いているぞ。

 こいつも飛べるようだ。


 見た目は身長10センチくらいのバナナの皮だけど、金属っぽい光沢がある。


 金属製のバナナの皮なのか?


「なんじがわれの使い手か?」


 八岐甘蕉が話しかけてきた。

 お固い感じの口調だな。


「ああ、そうだ。俺は角野当也だ。トウヤと呼んでくれ。よろしく」


「吾は破邪之聖剣・八岐甘蕉である。よろしく頼む。吾のことは気軽に『ヤマさん』とでも呼ぶが良い」


 ヤマさん!?


 すごく軽い感じになったぞ!?

 それで良いのか!?


 まあ、本人がそう言っているんだから、それで良いのか。


「ああ、分かったよ。ヤマさん。ところで、破邪が得意らしいけど、破邪ってなんだ?」


「そのままの意味である」


「そのままというと、邪道を破るで良いのか?」


「うむ、その通りである」


「どんな効果があるのか、具体的に知りたいのだが?」


「吾が存在するだけで、邪道は破られるのである」


「そ、そうなのか」


 分かりづらいぞ!?


 もしかして、召喚しておくと、空き巣みたいな犯罪者が寄って来なくなるのか?


 防犯用のバナナのお守りなのか!?


 もし、そうだとしたら、ものすごく役に立ちそうだな!

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