第10話 草とたらことカボチャ

「総理!この草はなんですか?総理!!」


「えー、それは『ニカイノクサ』ですね。食べることもできますが、美味しくはありません。栄養は多少はあります」


 官邸に2階に生えている草の鑑定をしてもらっている。


「総理!こちらの草について答えてください!」


「えー、それは『ニカイ・タダノクサ』ですね。食べることもできますが、味はいまひとつです。栄養は多めです」


 この記者に質問されて、総理が答える小芝居は毎回やるんだな。


 ところで鑑定って、こんな能力だったか?


 使うと空中にウィンドウが出てきて、そこに情報が記載されているというイメージがあったのだが?


 まあ、どうでもいいか。

 情報が手に入れば、それで良いんだよ。


「総理!こちらの草は、どのようなものですか?」


「えー、それは『ワカ・ヅクリシテソウ』ですね。生で食べると少し若返ります。栄養豊富です」


 はぁっ!?

 な、なんだって!?


 今、ものすごいことを言ったぞ!?


 このほうれん草みたいな草を食べると若返るのか!?


 『若作りしてそう』なのに!?


 って、名付け親のネーミングセンスなんて、どうでもいいか!!


 さっそく生で食べてみよう!!


 体が若返ればダンジョン探索もやりやすくなるだろうしな!


 俺はワカ・ヅクリシテソウを引き抜いて食べた。


 味もほうれん草みたいだな。

 意外とうま味や甘味があって美味しいぞ。


 他には生えていないのか!?


 周囲に2本生えていたので、引き抜いて食べたぞ。


 効果はあったのだろうか?


 後で鏡を見てみるか。


「総理!この草について、回答してください!!」


「えー、それは『エイヨウ・ナサソウニミ・エテアルソウ』ですね。食用で栄養豊富です。味はとても美味しいです」


 ほう、栄養豊富で美味しいのか。


 ぜひとも、その草は採取しておきたいぞ。

 やっておこう。


 色の薄いクローバーみたいな草だ。

 本当に栄養がなさそうに見えるな。


 さて、そろそろ進もうか。


 官邸をカードに戻して腰に貼った。


 では、出発だ。



 ワカ・ヅクリシテソウが生えていないか、注意深く探しながら進んで行く。


 ついでに見たことのない草が生えていたら、採取するようにしている。


 進行速度が低下しているけど、これは仕方ないよな。


「トウヤ、何かいるぞ!」


 なんだって!?


 骸王が何かを発見したようだぞ。


 そこにいたのはウサギ耳のカチューシャを付けた、淡いピンク色のたらこに、足が4本生えた化け物だった。


 足は豚の足のようだ。


 全高150センチくらい、全長2メートルくらいだ。


 あ、あれは、いったいなんなんだ!?


 『バニー豚足たらこ』とでも呼べば良いのか!?



 あ、バニー豚足たらこが突進して来たぞ。


 速度はかなり速いな。


 どうやら発見されてしまったようだ。


 仕方ない、戦うか。


 俺はバニー豚足たらこの突進を横に跳んで回避し、たらこの真ん中あたりにシャベルを振り下ろした。


 うわっ!?

 な、なんだと!?


 あっさりとたらこが破れたぞ!?


 そして、バニー豚足たらこは動かなくなった。


 ええ……

 ちょっと、なんなんだこれは?


 バニー足バナナに比べると弱過ぎないか?


 ひょっとして、2階最弱だったりするのか?


 まあ、どうでもいいか。



 さて、この破れているたらこは、どうしようか?


 これは食べれるのか?

 ちょっと官邸に聞いてみるか。


 腰からカードをはがして召喚した。


 おや?

 官邸の様子が変わっているぞ。


 ボロボロのあばら家から、新築のような白い色の木造の小屋になっているぞ。


 大きさは同じくらいだ。


 バニー豚足たらこを倒したから、レベルアップして進化したのかな?


 お、総理が出て来たぞ。

 記者たちも出て来た。


 こいつらには変化はないな。


「総理!この淡いピンク色の物体について答えてください!!」


「えー、それはたらこと豚足ですね。食用です。味はとても美味しいです。生でも食べられます」


 食べられるのか。

 しかも、生食もできるのか。


 では、持ち帰って食べてみるか。


 切り分けて、クーラーボックスの中に入れた。


 官邸のカードも腰に貼り直した。


 よし、探索を再開しよう。



 また新手の化け物を発見してしまったぞ。


 ウサギ耳のカチューシャを付けた、濃い緑色のカボチャだな。


 カボチャはの全幅2メートルくらい、全高120センチくらいだ。


 ウサギ耳は長さ60センチくらいで、ピンク色をしている。


 浮いて移動している。


 『バニーカボチャ』とでも呼ぼうか。


 バニーカボチャは、まだ俺に気付いていないようだ。


 よし、ならば容赦のない先制攻撃だな!!


 世の中の厳しさを思い知れ!!!


 俺はバニーカボチャのカボチャの部分を、シャベルでぶん殴った。


 金属同士がぶつかったような鋭い音が、あたりに響き渡った。


 な、なんだと!?


 こいつ硬過ぎるだろ!?

 金属製のカボチャなのか!?


 手がしびれたぞ!?


 バニーカボチャが俺の頭部を目がけて、突進して来た。


 バニー足バナナより速い!?


 俺はなんとかしゃがんで、回避することができた。


「トウヤ、また来たぞ!!」


 骸王が警告してきた。


 バニーカボチャが、再び俺に突っ込んで来た。


 俺は横に跳んで、辛うじて避けた。


 しかし、バニーカボチャはすぐさま旋回し、俺の方に向かって来た。


 こいつ旋回性能が高過ぎないか!?


 このままでは、いずれ直撃してしまいそうだ。


 そうしたら、最悪潰されて、死亡なんてことになりそうだ。


 くそっ、なんとか反撃しないと!


 これって、世の中の厳しさを思い知ったのは、俺の方だったんじゃないか!?

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