第9話 バナナと官邸
ええと、とりあえず、こいつは『バニー足バナナ』と呼ぼうか。
では、2階の敵の強さを見せてもらおうか。
俺はバニー足バナナに向かって行った。
そして、シャベルを振り下ろした。
その直後、突然バニー足バナナのバナナの皮が、上の方からむけた!?
その皮でシャベルを払いのけただと!?
な、なんだ今のは!?
こんな方法で攻撃を回避してくるのか!?
姿はあんなのでも、こいつは強敵のようだ。
これは油断できないな。
気を引き締めてかからないと!
今度はバニー足バナナが攻撃してきた。
むけた皮でジャブのような牽制攻撃をして、蹴りでとどめを刺そうとしてくる戦法のようだ。
むけた皮と蹴り技のコンビネーション!?
変な格闘術の使い手だな!?
その後も、バニー足バナナは隙のない連続攻撃を繰り出してきた。
俺は反撃もできずに逃げ回っているだけだ。
くそっ、どうすれば良いんだ!?
良い案はまったく浮かばず、しばらく相手の攻撃を回避していた。
なんだかだんだんと相手の動く速度に、目が慣れてきたぞ。
これなら反撃に移れるかもしれないな。
では、どう反撃するか?
やはりここは足を攻めるべきなのだろうか?
足技の方が強力みたいだからな。
バニー足バナナが上段蹴りを放ってきた。
俺はタイミングを合わせて、その足をキャッチした。
そして、そのまま足を振り回し、壁に激突させた。
バナナの果肉の部分が、真ん中から折れたぞ。
バニー足バナナは動かなくなった。
これは……
倒したということで良いのか?
バニー足バナナをシャベルで突いてみたが、ピクリとも動かなかった。
どうやら倒したようだ。
ふう、なんとか勝てたか。
良かった~。
相当疲れたから、ちょっと休憩しよう。
さて、あのバナナはどうしようか?
見た目は美味しそうなんだけど、食べれるのかな?
果肉の部分だけを持ち帰ってみるか。
バニー足バナナの果肉を採取し、他の部分は埋めた。
まだ時間はあるな。
もう少し2階を探索してみるか。
では、行こうか。
おおっ!!!
あれはカードじゃないか!!!
しばらく進むと、通路の真ん中にカードが落ちていた。
やったぞ!!
これで戦力が大幅にアップするはずだ!
さっそく拾おう!!
「俺は5枚目のカードを手に入れた!!」
俺はそう言いながらカードを掲げた。
特に意味のない行動だが、ここでの戦力アップは純粋にうれしかったので、なんとなくやってしまったのだ。
骸王に何をやっているのか、とツッコまれてしまったがな。
では、カードを見てみようか。
ええと、名前は『官邸』のようだ。
官邸って?
総理とか、大臣とかが、在任中に住む邸宅のか?
この絵でなのか?
名前の下には、木造のあばら家と呼ぶにふさわしい、今にも倒壊しそうなボロボロの建物が描かれていた。
壁は腐った木材といった感じの色をしている。
こんなので官邸とか、どんな貧乏国家なんだ?
本当に国として機能しているのか怪しいな。
まあ、どうでもいいことか。
ステータスを見てみよう。
そこには、こう記載されていた。
レベル …… 悲しさで涙が止まらない……
強さ …… すさまじく弱い!弱過ぎるぞ、貴様ァ!!
頭脳 …… ふん、なかなかやるようだな!
速さ …… これはちょっと残念過ぎますねぇ。
幸運 …… 良いか悪いかで言うと、良い方かな?
特殊 …… 特技は鑑定なのです!!
特記事項 …… なんと書くことがありませんでしたーーー!!!
鑑定!?
官邸が鑑定能力を持っているのか!?
こ、これは!?
まさかダジャレなのか!?
まあ、そこはどうでもいいけどな!!
だが、鑑定という能力は気になるぞ。
もしかしたら、いろいろな情報が手に入るかもしれないからな!!
さっそく召喚して聞いてみよう!
では、官邸を召喚だ!
官邸という名のあばら家が出てきた。
全高30センチくらいだな。
空中に浮いているぞ。
こいつもダブルクリーナーヘッドみたいに、浮きながら移動するのか。
では、話しかけてみるか。
「初めまして、俺は角野当也だ。トウヤと呼んでくれ。よろしく」
ん?
あばら家の入り口が開いた。
中から不審者が出て来たぞ!?
ショッキングピンクの目出し帽にサングラスをかけている、身長10センチくらいの人間型の生物だ。
白いタンクトップに、茶色のハーフパンツに、茶色の腹巻をしている。
それに黒いサンダルを履いているぞ。
体型はビール腹のだらしない感じだ。
なんなんだ!?
こいつは!?
えっ?
さらにあばら家の中から誰か出て来たぞ!?
身長10センチくらい、スーツを着ている人間型の生物が数名いる。
『報道』と書かれている腕章を付けている。
こいつらは報道記者なのか?
その報道記者たちが、目出し帽の不審者の周囲に集まったぞ。
いったい何が起こるんだ!?
「総理!挨拶をされてますよ!総理、答えてください!!」
「えー、お初にお目にかかります。私は官邸と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
目出し帽の不審者が、報道記者に促されて挨拶をしてきたぞ。
なんだこれは!?
どういうことなんだ!?
そもそも、あの不審者は総理大臣なのか!?
こいつを総理にする国って!?
とてつもなくヤバそうだぞ!?
それで良いのか!?
国民たち!?
まあ、どうでもいいか。
ええと、とりあえず、鑑定能力について聞いてみようかな。
「鑑定能力って、どんなものなんだ?ちょっと使ってもらって良いか?このバナナを鑑定して欲しいのだが……」
俺はバニー足バナナの果肉を見せたながら言った。
「総理!どうなんですか?総理!!」
「えー、それは食用ですね。生で食べることもできます。栄養豊富です」
この小芝居は毎回やるのか?
まあ、良いか。
とにかく、このバナナは食べれるうえに、栄養も豊富と。
すごいじゃないか!
ちょっと食べてみよう!
甘くて、さっぱりとした後味で、とても美味しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます