第7話 ついに見つかる

 俺がダンジョンを発見した日から、2か月が経過した。


 世界規模の大事件が起こった。


 なんと俺の家以外の場所でダンジョンが見つかったのだ。


 それも複数。


 世界の各地にできたそうだ。


 原因は不明だ。


 変なウワサならネットに流れているけどな。


 マッドな科学者が変な実験をやっていたとか。

 怪しいカルト宗教の連中が変な儀式をしたとか。


 モテないおっさんが天に祈ったからだとか。

 モテないおばさんが世界を呪ったせいだとか。


 変な隕石が地球の近くに来ていたとか。

 神の試練だとか。


 宇宙人の仕業だとか。

 異世界が転移して来たとか。


 ただの自然現象だとか。


 いろいろと流れているぞ。


 みんなの想像力がたくましくて面白いなぁ。


 って、そんなことを言っている場合ではないぞ!


 これは、とうとう俺以外のダンジョン探索者が出てきて、競争になるということだ。


 俺がリードできるのも、ここまでなのか?


 いや、まだだな。

 カードを腰に貼ったら、身体能力が強化されるという現象は発見されていないようだ。


 モンスターが召喚されるカード自体は見つかっているのだがな。

 しかも、召喚できることも判明しているようだ。


 召喚している様子を撮影した動画が、動画投稿サイトに存在するのだ。


 ただ他のカードから召喚されるモンスターも、身長10センチ程度で、ものすごく弱いみたいだ。


 おまけに変な形のモンスターばかりだしな。

 急須のようなのとか、座薬みたいなのとかがいたぞ。


 当然、戦闘では役に立たないと思われている。


 実際にダンジョンでウサギに踏み潰されている動画もあるからな。


 これならダンジョンの開拓が進むのは、もう少し時間がかかるのかもしれない。


 今のうちにリードを広げておこう。



 では、準備ができたし、ダンジョンに行くか。


 最近は小型のバニーサンドゴーレムを、それなりに短い時間で安全に倒せるようになってきた。


 俺も成長しているようで、うれしく思う。

 腕とかに筋肉が付いてきたしな。


 もう少し修行したら、大型のバニーサンドゴーレムを倒せるかもしれない。


 よし、出発しようか。



 むっ、あそこに小型のバニーサンドゴーレムがいるぞ。


 しかも、俺に気付いていないようだ。


 では、容赦なく不意打ちだな!


 フフフッ、悪く思うなよ!

 勝負の世界は厳しいのだ!


 俺は素早く小型のバニーサンドゴーレムに接近し、頭部をシャベルでぶん殴った!


 小型のバニーサンドゴーレムは崩れ去った。


 よしよし、うまくいったぞ!


 この調子で行こう!!


 さて、次を探すか。


「トウヤ、トウヤ、聞こえるか?」


 えっ!?

 今、何か聞こえたぞ!?


 いったい、なんなんだ!?


 周囲を見回してみたが、誰もいない。


 えっ!?

 まさか幽霊とか!?


 いきなりホラー展開なのか!?


「我だ、骸王だ。今、新しく覚えた能力を使用し、カードの中から話しかけている」


「新しい能力!?」


 話しかけてきたのは、幽霊ではなく、骸王だったのか。


 ……いや、ある意味、幽霊みたいなものだったな。


「そうだ、どうやら我の方から話しかけることが可能になったようだ。さらに周囲も見えるうえに、音も聞こえる」


「おおっ、それはすごいな!ところで、周囲が見えるって、どのくらいの範囲が見えるんだ?」


「トウヤの頭上に目がある。そこから周囲を見渡すことができる」


「視点の移動はできるのか?」


「どうやら不可能なようだ」


「先行してダンジョン内を調査するのは無理か。とすると、不意打ち対策になるくらいだな。まあ、それでも十分ありがたいけどな」


「うむ、後方は我が見張るとしよう」


「ああ、頼むよ」


 話し相手にもなりそうだな。


 傍から見ると、独り言をつぶやいている、変人に見えるのだろうけど。


 話す時は周囲に気を付けよう。



 その後も、小型のバニーサンドゴーレムを倒していたら、他の面々も話しかけることができるようになったぞ。


 ダブルクリーナーヘッドも頭脳のステータスが上がったようで、話すことができるようになった。


 みんな成長しているんだなぁ。


 素晴らしいぞ!!



 夕方くらいになったので、帰って来た。


 いやあ、今日はいつもより多く倒せたなぁ。


 骸王のおかげで、周囲への警戒をする時間を減らせて探索がスムーズになった。


 良いことだ。


 この調子でがんばろう。


 ウサギ耳の豚とウサギも狩ってきたので、肉を冷蔵庫に入れておこう。


 では、休憩しようか。


「トウヤ、トウヤ!!」


 ん?

 この声は骸王か?


「どうしたんだ?」


「暇である。召喚しろ」


 ええ……

 どういうことなの?


 ちょっと聞いてみようか。


「骸王、なんで急にそんなことを?」


「よくは分からんが、カードの中にいる時も起きているようになったのだ。今までは眠っているようだったのだがな」


「能力が増えたせいなのか?」


「おそらくそうであろう」


「カードの中って、どんな感じなんだ?」


「ダンジョンの内部のようなものだ。出口のない小部屋があるだけだ」


 そうなのか。


 それは暇そうだな。


 よし、召喚しよう!!


 みんなを召喚した。


「邪魔するぞ」

「お邪魔します!」


 それぞれが思い思いにくつろいでいる。


 家の中が、急ににぎやかになったなぁ。


 なんだかペットを飼い始めたみたいな気分になったぞ。


 まあ、もっとも、姿の方はアレだけどな。

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