第2話 腰にカードを貼ろう

 持っていたカードを投げたら、ものすごい速さで飛んで行って、ウサギの頭に突き刺さったぞ。


 さっき起こった現象は、こうだったよな。


 いったいなんなんだ!?

 なんでそんなことが起こったんだよっ!?


 って、今考えるのはやめた方が良さそうだ。


 ここは危険だ、いったん帰ることにしよう。


 と思ったのだが、残念ながら腰が痛くて動けなかったぞ。


 仕方ない、痛みが取れるまで、大人しくしていよう。


 とりあえず、ウサギが来ないように祈っていようか。


 来るなよ~、出るなよ~!

 振りじゃないぞ!!



 そうだ、カードは拾っておかないとな。


 もちろん動けるようになってからだが……


 そういえば、骸王はどうなったんだろうか?


 骸王が潰されたあたりを見てみた。


 ん?

 あれは?


 カードが落ちているぞ。


 あれは骸王のカードなのか?


 動けるようになったら調べてみるか。


 あれ?

 後1枚のカードは、どこに行ったんだ?


 確か持っていたはずなのだが?


 おや?

 なぜか腰に貼り付いているぞ?


 なんでこんなところにあるんだ?


 腰を痛めた時に手で触ったから、その時にくっ付いたのか?


 まあ、どうでもいいか。

 回収しておこう。



 ようやく痛みが引いて、動けるようになったぞ。


 ウサギに襲われなくて、本当に良かった。


 さあ、さっさとカードを回収して帰ろう。


 骸王のカードを拾った。


 そして、ウサギに突き刺さっていたカードを引き抜いた。


 そういえば、あんな突き刺さり方をしていて、カードは破損していないのだろうか?


 カードを注意深く観察してみた。


 まったく傷付いていないようだ。

 こいつはずいぶんと頑丈なんだな。


 あっ、そうだ、このウサギの死体はどうしようか?


 埋めた方が良いよな?

 腐って臭うと困るし。


 まあ、後で良いか、今は帰ることにしよう。


 いろいろあって、疲れたからな。


 黒い円を通って帰還した。



 さて、一息つくとするか。


 緑茶でも飲もう。



 ふう、落ち着いたな。


 さて、これからのことを考えようか。


 ……ものすごく今更ながら怖くなってきたぞ。


 俺も無茶をやったものだ。


 危険があることは覚悟はしていたつもりだったのだが、実際に襲われると怖いものだな。


 だが、これを乗り越えないと成功者にはなれないよな。


 よし、気合を入れ直して、またがんばるとするか。


 では、まずは何からにしようか?


 とりあえず、カードを見てみるか。



 これは骸王のカードか。


 おや?

 骸王の絵が消えているぞ。


 これはウサギにやられてしまったからなのか?

 この状態で召喚はできるのか?


 ちょっと試しに召喚してみようか。


 あれ?

 出て来ないぞ。


 これはもう骸王を召喚できないということなのか?


 いや、どうやら違うみたいだな。


 特記事項の欄に『現在治療中』と書いてあるぞ。


 そのうちに治って、召喚できるようになるのかもしれないな。


 今は待つとしよう。



 では、次のカードを見てみようか。


 カードの1番上には『ダブルクリーナーヘッド』と書いてある。


 その下には『Y』の上側の先端部分に、掃除機の床用ノズルが2個くっ付いているようなものが描かれている。


 色は白だ。


 な、なんだこれは!?

 ものすごく使いにくそうだぞ!?


 なんでこんな形になってしまったんだ!?

 意味が分からんぞ!?



 さらにその下には、こう記載されていた。


 レベル  …… 悲しみの涙がホロリ。


 強さ   …… こいつは鍛えがいがありますよ、軍曹!

 頭脳   …… 素直な良い子ではあるのですが、成績の方は……

 速さ   …… いやあ、実に残念な感じですねぇ!!

 幸運   …… 良くも悪くもないんじゃないの?


 特殊   …… はずれです!!


 特記事項 …… な、なんと、書くことがありませんでしたーーー!!!


 うーん、相変わらずの意味不明な評価だが、なんとなく弱いというのは伝わってくるぞ。


 カードに書いてあるのは、これだけだな。



 では、召喚してみようか。


 実物も見てみたいしな。


 俺はカードを持って、ダブルクリーナーヘッドを召喚と心の中で唱えた。


 カードが青白く光って消えた。


 そして、全長10センチくらいのダブルクリーナーヘッドが現れた。


 こいつも小さいなぁ。


 掃除機としては使えなさそうだ。


 では、話しかけてみるか。


「初めまして、俺は角野当也。トウヤと呼んでくれ。よろしくな」


 フレンドリーに話しかけてみたぞ。


 ……ん?


 何も言わないぞ?


 どうしたのだろう?


 あっ、もしかして、しゃべれないのかな?


 頭脳の評価が、かなり悪い感じに書かれていたから、そのせいなのだろうか?


 おっ、動き出したぞ!


 しかも、空を飛んだだと!?


 部屋の中を、ゆっくりと移動しているぞ。


 もしかして、部屋の中を探索しているのか?


 なんだか動物っぽい感じだなぁ。

 まるで前に飼っていた猫のようだ。


 ええと、あいつはどうしよう?


 そういえば、カードに戻すことはできるのだろうか?


 ちょっと試してみるか。


 俺は心の中でダブルクリーナーヘッドは、カードに戻れと唱えてみた。


 ダブルクリーナーヘッドが消えて、代わりにカードが現れたぞ。


 なるほど、こうやってカードに戻せるのか。



 では、最後のカードを見てみよう。


 カードの1番上には『繊細なガラスのSIBIN』と書いてある。


 その下には、透明なガラス製のように見える男性用の尿瓶の絵が描かれていた。


 な、なんだこれは!?


 ただの尿瓶なのか!?



 さらにその下には、こう記載されていた。


 レベル  …… ただ落涙するばかりであった。


 強さ   …… これはかなり弱いっすよ、旦那。

 頭脳   …… ほう、なかなかやるじゃあないか。

 速さ   …… これは残念な感じですねぇ。

 幸運   …… 中の中の下吉ですね!


 特殊   …… 特技は人間のお茶魔法です!


 特記事項 …… な、な、な、なんと!なにもなしです!!!


 人間のお茶魔法!?


 なんだそれは!?


 尿瓶が出す人間のお茶って、やはりアレのことなのか!?


 いったいどんな魔法なんだ!?


 何に使うんだ!?

 嫌がらせか!?


 訳が分からなさ過ぎるぞ!?



 カードに記載されているのは、これだけだな。


 さて、どうしよう?


 この尿瓶を召喚してみようか?


 うーむ、ちょっとなぁ……


 召喚をためらってしまうよな。


 いきなりこの魔法を撃ってくるような、異常者かもしれないし。


 いや、偏見は良くないか。


 実際に会ってみたら、良いヤツかもしれないしな。


 よし、召喚してみようか!


 繊細なガラスのSIBINを召喚した。


 全長10センチくらいの、ガラスっぽいもので作られている、尿瓶のミニチュアだ。


「私を呼び出したのは、あなたですか?」


 しゃべった!?

 こいつもしゃべるのか!?


 というか、いったいどこから声を出しているんだ!?


 まあ、どうでもいいか。


 世の中には、不思議なことがたくさんあるということにしておこう!!


「ああ、そうだ。俺は角野当也だ。よろしくな!」


「トウヤさんですね。私は繊細なガラスのSIBINと申します。よろしくお願いします」


 骸王と比べると、ずいぶん礼儀正しいな。


 やはり偏見は良くなかったようだ。


「あんたは、いったい何者なんだ?カードの中から出て来たのか?」


「何者と聞かれましても、よく分かりませんとしか答えられません。カードと言われましても、なんのことか分かりませんよ」


 それなら実際に見てもらおうか。


 ダブルクリーナーヘッドのカードを見せて、召喚するところも見てもらった。


 だが、カードについては、よく分からないそうだ。


 こいつらはいったい何者なのだろう?


 まあ、良いか。


 ダンジョンの調査が進めば、何か分かるかもしれないしな。


「ところで、この人間のお茶魔法というのは、どんなものなんだ?」


「黄色と茶色の水の球が飛んで行きますよ。使ってみましょうか?是非とも見て欲しいですね!」


 黄色と茶色の水の球!?


「いや、ちょっと待ってくれ!?部屋の中で使わないでくれ!?後で見せてくれ!なっ!」


「そうですか。分かりましたよ。残念ですね」


 あ、危なかった。


 部屋の中が悲惨なことになるところだった。



 さて、これでカードは見終わったな。


 では、次は何をしようか?


 そういえば、なんでウサギにカードが突き刺さったのだろうか?


 俺の力は普通の人間くらいしかないから、あの威力が出るのは不自然だよな。


 このカードは投げると、必ず高速で飛んで行くものなのか?


 それとも腰に貼り付いていたカードのせいなのか?


 いや、もしかしたら、火事場の馬鹿力というヤツなのかも?



 これは実験してみなければいけないようだな。


 とりあえず、腰にダブルクリーナーヘッドのカードを貼ってみた。


 うーん、特に変化があるようには思えないぞ。


 そういえば、どこかに20キロのダンベルがあったなぁ。


 鍛えようと思って買ってみたけど、全然使ってないヤツが。


 ちょっとそれで実験してみるか。


 腰に貼った状態と、貼ってない状態を比べてみた。


 腰に貼った状態の方が、明らかに軽かった。


 カードを腰に貼ると、身体能力が向上しているようだ。


 ウサギを倒せたのは、これのおかげなのかな?


 他のカードでも試してみた。


 骸王のカードは変化がなかった。


 これは治療中のせいかもしれないけどな。


 SIBINのカードでも軽くはなったのだが、ダブルクリーナーヘッドほどではなかった。


 カードによって変化量に違いがあるのか。


 もしかして、ステータスのレベルや強さが関係あるのかな?


 腰以外の場所にも貼り付けてみたが、効果はなかった。


 なんで腰限定なんだよっ!?


 意味が分からなさ過ぎるぞ!?


 腰好きがカードを作ったのか!?



 次はカードを投げてみるか。


 どこで投げようか?


 適当に投げて、何かを壊してしまったら非常にマズいしな。


 というか、壊して良い場所なんて日本にはないよなぁ。


 やっぱりダンジョンの中で試すしかないか。


 もう1回ダンジョンに入ってみた。


 よし、壁に向かって投げてみるか。


 何度かやってみた。


 このカードは丈夫で投げやすいだけみたいだな。



 というわけで、結論。


 ウサギを倒せたのは、カードを腰に貼ったからである!!


 世の中は不思議でいっぱいだなぁ、と思いました!!!

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