第2話「ここどこ?…」 「無人島だね…」
「今か…」
彼女から注がれたお酒を開ける。
「はぁ…高かったんだけどなぁ…やけ酒用がフランベ用だとは…はぁ…」
そういってサバ入りのフライパンに度数の高いお酒を入れる…あとで味見してみよう…
まぁ予想はしていたがフライパンは盛大に火を噴いていた。
「料理人の炎が揺れているってか?…何言ってるんだろ俺…」
そうして手早くサバを違うお皿に入れて浸かったフライパンに醤油とオイスターソースを入れる。
この時のオイスターソースや醤油の跳ねるような音が食欲を大いにそそる。
そこに切った野菜たちを入れる。
「シイタケとかあったらいいんだけどなぁ…」
そうつぶやきながら軽く炒めてからサバをもう一回フライパンの中に入れる。
そうして少ししてからお皿に盛りつける。
「あい…サバのソテー…みたいなやつ?…うーん…この料理名は…なんちゃって簡単サバのソテーにしよう」
そういってテーブルに置いて彼女の顔を見る。
…ていうかもう白米盛り付けてるんだな…早いな。
「え…あっ…あぁ…ありがとう。」
彼女はびっくりしているのだろう…だって彼女の視線は俺と料理を行ったり来たりしているからだ。
「冷めねえうちに食べちゃいな。」
俺はさっきのお酒をコップに入れてグビっと飲む。
「…ふぁああ…うんめぇぇぇぇ」
おっさんぽい声が出てしまったが…やべえなこれ…うんめぇよ…疲れた後に最高だ。
彼女はこっちを見てびっくりしていたがご飯を食べるのに必死なのかソテー?と白米を交互に食べている。
「うまい?」
そう聞くと彼女は興奮しているのか早口気味に言う。
「うまいも何もやばいよ!!…白米と合いすぎだ!…お前魔法使いみたいだ!!」
「あんがとさん」
おっと…俺も食べ終わてないんだ…食べないとな…
そうして一室に二人の食べる音が響き渡る。
パクパク
パクパクパクパク
パクパクパクパクパクパク
パクパクパクパクパクパクパクパク
…さっきのソテーみたいな感じにしてもいいがやっぱり素材の味を生かした素焼きがいっちゃん美味い気がするな。
…
……
………
「「ごちそうさまでした!!」」
少しして食べ終わると彼女も食べ終わったようだ…って早いな。
「ん…おぉいい食べっぷりだ…感心するぜ。お粗末さまでした。」
俺は彼女の分と俺の分のお皿を台所に持って行って洗った。
「んじゃ…あとでな。」
そういって彼女を見ると彼女は少し悲しそうな顔をしていた。
「なんでそんな悲しそうな顔してんだよ…」
前を向きなおしてお皿を洗う…この冷たい感じが俺の心を表しているような感じでなんか嫌になる。
別にもうここに未練はないと思っている。
別に暗殺される理由も知っている…でも…でも…そんな顔されたらいやだって思ってしまうだろ…
「シャキッとしろよ…お前の行動を信じろ」
水を切ってかごに入れる…後ろを振り向きたくない…まるで人生を振り返るような気がして嫌になる。
でも…その気持ちをぐっと抑えて後ろを…彼女を見た。
すると彼女の瞳からは涙が出ていた。
「な、なに泣いてるんだよ…」
俺の声はいつもよりも高くて変な感じがした。
顔も熱く感じる…何だってんだよ。
「ね、ねぇ…」
彼女の引きずったような声が部屋に響き渡る。
「あ、あのさ…私と一緒に逃げよう…」
「え?…」
彼女の言ったことに耳を疑ってしまう。
「私…あなたを殺したくないよ…嫌だよ…だって…だってさ…こんな暖かいの放したくないよ!!」
あなたは泣きながら訴えるように言う…
「…な、なんなんだよ…やるならとっととやれよ…」
俺はもうわけがわからなくなってきた。
生きたいのか生きたくないのか…でも一つ言えることは彼女に会う前の俺と今の俺の心境は全然違うことだけはわかった。
「やらない…やらないよ!!」
彼女は俺のうつむいている顔に手を当てて彼女の顔の前に向けさせた。
「私と一緒に逃げよう!!…私はまだあなたのご飯を…作ったご飯を食べたいよ!!」
真剣な眼差し…俺の中で何かが変わったような…そんな気がした。
「…好きにしろ」
俺は今の気持ちを隠すように言った。
すると突然
ダン!!ガシャン!ガン!!
銃声や物が壊れる音が鳴り響いた。
「っち…もう来たのか…」
「え?」
彼女はさっきの真剣な眼差しとは違う真剣な眼差しでこっちを見てきた。
「少しだけ眠っててもらうよ…大丈夫…絶対助かるから…」
そういって彼女の手が勢いよく首に当たる。
「はぅっ…」
そうして俺の意識は消えていった。
…
……
………
パタパタパタパタ
「んんっ…」
あ、あれ?…町が小さく見える…俺死んだのかな…
周りを見ると彼女がいた。
「え…ちょ…ここどこ?」
そういうと彼女は不気味な笑顔でこう言った。
「ヘリコプター…あなた調べたところによると車とか密閉された乗り物全般苦手なのよね?…さぁ我慢だぁ!!」
「え?」
俺はだんだん意識を取り戻していくと頭が真っ青になるのを覚えた。
「死なせてくれよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお」
そこから俺は泡を吹いたように気絶した。
…
……
………
目が覚める…いてぇ…なんか腰がすんげえ痛い…なんか俺横になってる。
彼女は俺の顔を覗く。
だんだん意識が戻りつつ辺りを見わたすと…ここは…ここは…?
「ここどこ?…」
そういうと彼女は
「無人島だね…」
そう返ってきた。
え?…
「えぇぇぇぇええぇぇぇぇぇ?!?!!?!」
俺の声は海の音によってかき消された。
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