第10話保健室警察退治③

私達は土曜、一葉の家に集まり作戦会議を行った。

一葉のお母さんと一葉のフランス人のお祖母さんには、課題をやると嘘をついた。

一葉はスマホを机に置き、私と柚に見せた。画面には、Twitterのアカウントが映っていてよく見るとアカウント名が、保健室警察廃止団体となっていた。

「これ、一葉が作ったの?」

私は聞いた。

「うん!昨日作った!」

一葉はVサインしながら答えた。

私が画面に映ったフォロワー数を見たらま1桁だった。それに関して、作成した一葉曰く、他校には保健室警察なんて当たり前だがそんな団体はなく、具体的に何をやっているかわからない人もいるからだそうだ。

Twitterのアカウントを見たところで、私達は作戦会議を始めた。


頭のいい一葉の作戦はこうだった。


①Twitterで日々の活動をツイートする。


②保健室警察にわざと捕まる。


③捕まった際、ボイスレコーダーのスイッチをONにする。


④ボイスレコーダーを校長先生に提出。その後、放送委員に許可を貰い録音したものを流す。


以上を実行することにした。


この日からTwitterで活動内容に関するツイートをアップしたりした。

そんなある日…。柚がフォロワー数が最初の頃より増えた事を報告した。

「凄い!1,000人になった!」

柚は興奮して話した。

「あ!中には応援のコメント来てる!あ!こっちのツイートはうちの学校の生徒からだ!」

私は驚いた。

「順調順調!後はボイスレコーダーだ!」

一葉は嬉しそうに言った。


数日後、私は兄が使っていたボイスレコーダーを学校に持って来て2つ目の作戦を決行した。

保健室警察にわざと捕まる役を柚はやりたがっていたが、あちらから見たら常習犯だから危険だというので私が行く事になった。

「椎菜ちゃん頑張って!無事を祈ってる!」

柚は私と握手をしながら言った。


私は早速保健室へ行き加山先生に相談してると池田さんと前田君がやって来て私の腕を掴んで歩いた。私は、2人に見つからないようにボイスレコーダーの電源をONにした。

池田さんは相変わらず暴言は吐くし、腰巾着の前田君は、もはや夏目漱石の『坊っちゃん』の野だいこにしか見えなかった。


次の日の放課後、私は録音したボイスレコーダーを一葉と柚の前で再生した。


「貴様、高3の癖にまだ保健室に相談しに言ってんのか!」


「大学生になったり社会人になったりしたらそんな人いないんだぞ!」


「前田!早く原稿用紙持って来い!こいつは、愛宕柚の友達だから枚数は2倍にしてやる!」


「ちーがーうーだーろ!ちゃんと心から反省しろよ!」


他にも池田さんは罵詈雑言を浴びせていた。


その時、一葉のスマホの着信音が鳴り、見てみるとTV局から私達のツイートを見て是非取材したいといった内容のメールだった。

「一葉、どうする?取材受ける?」

私は聞いたが、一葉は遮るように

「後で!」

「何で?」

柚は聞いた。

「校長先生にボイスレコーダー提出してからにしよう!」

一葉の意見に私も柚も賛成した。


翌朝、私達は校長室に行き、校長先生にボイスレコーダーを提出した。校長先生は驚き、後で池田さんや他の保健室警察のメンバーを呼び出す事にし、私達は早速放送委員の許可を貰い、校内放送でボイスレコーダーを再生し、流した。

この校内放送を聞いた生徒は「やっぱりね」って思う者もいれば「信じられない」と思う者もいた。一方、保健室警察のメンバーは池田さん以外は何も言えない者がほとんどだった。

そして、校長先生からお叱りの言葉を受け、メンバーだった先生や保護者もすぐ呼び出された。

校長先生は長い保健室警察の洗脳から解かれたみたいで繰り返し「私は目が覚めました!」と言っていたそうだ。


今まで後回しにしていたTVの取材も受け、校長先生はカメラの前で不祥事を起こした有名人みたいに謝罪していた。私達も勿論インタビューを受けた。


その2日後、保健室警察は廃止になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る