ほどほどに


 アルが食事の準備をしている。人間とはなんとも面倒な行程をかけて飯を食うもんだ。まあ、我もアルの作る飯は好きだが。


「ブラン、そこの瓶とって!」


 ふん。我を使おうとは、生意気なやつだ。面倒だが、アルに怒られるのもまた嫌だ。


「ありがとう」

『……ふん。旨い飯を作れよ』


 瓶の中身を鍋に注いだアルが、再び瓶を渡してくる。中身が軽くなっていて、持ちやすくなった。それを元の場所に戻そうと持っていく。

 ふいに独特な香りがして、瓶口に鼻を寄せた。この匂いはなんだ?

 瓶口にはまっていたものを抜いて、ペロリと舐めてみた。


『こ、これは!』


 なんとも言い難い味だ。だが、何故か舐めるのをやめられない。


『むふ、ふふふ、ははは』


 頭がふわふわする。なぜだかとても楽しい。


『ふくくくく、ハーッハッハ!』

「……ブラン、何してるの」


 なにかいっているな。はて、なぜそんなおそろしいかおをしているのか。


「この酔っぱらい狐! なんで白ワイン全部飲んじゃってるの?!」

『ほえがにゃんだあぁ?』


 うるさいやつだなぁ。


「折角お祝いのメニュー作ったのに」

『ふ、はっはっは』


 いわい? はてなんのいわいだったか。


「もう、ブランは寝てなさい!」

『うーむ、ひっぐ……、んー?』


 ゆらゆらするなぁ。お、ねどこにつれてきてくれたのか。ふむふむ。おやすみ……。


「あーあ、折角ご馳走作ったのになぁ」


 しあわせだなぁ。

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