第33話 覚悟
ロンベルトとティラが地下に落ちていった。
「ロンベルトたちのことを助けに行く。もちろん冒険者なんだから、みんなついてくるよな?」
ティラ。あの子は俺の大事なパーティーメンバー。
そしてロンベルト。あいつとはさっきであったばっかりで、何も知らないけど友達だ。
そんな奴らのことをみすみす見捨てることなんてできない。
俺はみんなの気持ちは、ロンベルトたちにあるのだと一緒だと思い聞いたのだが……。
「いえ。私は一度この迷宮をでます」
Sランクパーティーであるリロが、心がもこもっていないことを言ってきた。
「……な!? なんでだよ! ロンベルトとティラが落ちていったんだぞ!?」
こいつは何を考えている!?
まさかこいつは、仲間を見捨てて自分だけ迷宮から出て助かろうとしているんじゃないのか!!
「すみません。言葉が足りませんでした。私は一度、迷宮管理委員会の人たちに新たなSランク冒険者を招集してくれと応援を呼んでくるのでこの迷宮を出ます」
「応援……!? そんなの呼んでもいつになったら来るんだよ!! 一週間としたら、なにも食料を持っていないロンベルトとティラはとっくに野垂れ死んじゃうぞ!!」
何なんだこいつッ!!
まだ一度も戦ってもないくせに、偉そうにものを言いやがって……。目の前にロンベルトとティラが落ちた穴があるんだぞ!
今すぐ、みんなで助けに行った方がいいに決まってんだろ!
「ロット。仲間が死んでしまうかもしれないか心配になる気持ちもわかるが、少し落ち着け」
さっきまで、野蛮人だったザイラが俺の肩に手を当てながらまるでわかったかのようなことを言ってきた。
「お前なんかに、この気持ちがわかるか……!?」
俺は勢い余って手をあげそうになったが、途中で
止まった。
見たのは顔。目は細く俺のことを見ている。そして頬が一つも上がっておらず、真剣そのものだった。先程まで、スライムに挑んでいたときの野生っぽさはなくなりキッとしている。
まさかこいつ、本当に俺の気持ちがわかってるというのか……?
「……いいか。少し深呼吸をして、落ち着け。冷静になれ」
そう思ったら俺は自然と、ザイラの言葉を受け入れていた。
「すぅ〜……はぁ〜……」
俺はとりあえず、ザイラに言われた通り何度も繰り返して深呼吸をする。するとどうだろうか? 先程までの狭かった視野が広がった気がした。そして、少し心の高ぶりも落ち着いた気がする。
「落ち着いたな?」
「あぁ……取り乱してすまなかった」
まさか俺が仲間を失いそうになるとあんなに取り乱すとは……。今まで一度も、仲間は死んだことがないから自分でも衝撃だ。
もし、仲間が本当に死んだら俺は一体どうなってしまうんだ……。うっ……そんなの、考えるだけ無駄なことだ。
「よし。今から方向を定める」
俺がそんなことを思っていたら、ザイラが仕切り始めた。俺のことを冷静にしてくれたんだ。前までは野蛮人とバカにしてきたが、今は別になんの意見もない。ザイラはここで一番力が強く、周りが見えている。なのでこの場ではリーダーで間違いないだろう。
「俺様とライラとロットは、下に落ちていったロンベルトとティラの救出。その他のものは迷宮から出ていけ」
ザイラは、端的にするべきことを話した。のだが、その内容は全然理解できない。俺とザイラとライラが、下に降りるんなら話し方からするとそれって……。
「サリィとボロダインは足手まといになるってことか?」
「あんまり仲間のやつに、キッパリ言うのは嫌だがそうだ。実際、こいつらはスライムと戦っているときなんにもしないでただ後ろに突っ立ってただけだからな」
たしかに、ザイラの言っていることは事実。だが二人は、ティラと毎日仲良くしていた。一緒にティラのことを助けに行きたいに決まっている。
俺はそう思って、ザイラに意見しようとしたのだが先にサリィの口が開かれた。
「私はいいわよ。自分でも、お荷物にはなりたくなかったからね」
「おいらは、もう体がボロボロどすから不満なんてないどす」
二人は俺の方を向きながら言ってきた。ここの話を仕切っている、ザイラに向かってではなく俺に向かってだ。
まさかこいつら、俺が納得しないと予想していたのか……?
「お前たち……」
俺は自然と、涙が出そうになった。だがこんなところで無駄に涙なんて流したくない。そう思って、踏ん張る。涙を流すのはすべてが終わってみんなで、一緒に酒を飲むときでいい。
「よし!」
俺は両手のひらで顔を挟んで、気合を入れ直す。
「決まったな。行くぞ」
そうして俺は、ロンベルトとティラがいる地下へと降りていくことになった。
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この話、完全に投稿するの忘れてました。
すまぬぬぬぬぬぬぬ!!
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