第37話 その時彼女らは
ロットたちと別れた私たちは、色々な荷物を持って迷宮の出口を目指していた。
「えっと……あなた、リロっていう名前よね?」
私はおぼろげな記憶を思い出して、先頭に立っているちっちゃいのに聞いてみる。
この子はおかしい。だって、Sランクパーティーで戦いに行くこともできたのに率先して迷宮から出て応援を呼ぶといったから。ほかのSランクパーティーの人たちとは性格が違いそう。
「はい。そうですけど……?」
よかった名前、間違えてなかった。
安堵のため息をついているとリロは先頭にいたのだが、足並みをそろえて横にきた。
背はあのちびっこのティラよりも少し小さい気がする。外見だけだとまだまだ子供に見えるけど多分Sランクパーティーにいるんだし、子供って言うわけではないと思う。
「なんであなたは、Sランクパーティーで戦いに行くっていう選択肢があったのに迷宮から出ることを選択したの? もしかして、私たちのことを気にしてのこと……?」
「あなたたちのことを気にする? そんなことないです。たしかに私には戦いに行くという選択がありました。ですが、戦いはあの二人に任せればいいんです。私はあの人たちのサポート。前線では戦わず、主に依頼だったり魔石を集めたりと脇役的な存在ですから」
多分……というか、この先私が言おうとしていることは絶対に言ってはいけないことだと思う。その言葉は、これまで脇役的存在としてSランクパーティーにいたリロに失礼なのは承知。
だけど口が勝手に……。
「……あなたはそれでいいの?」
失言だったと慌てて口をふさぐ。
だけど、言ってしまったものは取り返しはつかない。リロを見ると、彼女はため息をしていた。もしかしてこういうことを聞かれるのは私が一度目じゃないのか?
そう思った私は、問の答えが気になるので謝罪や訂正をすることなく返答を待った。
「別にそれでいいです」
意外な言葉だった。
もしかして私たちのために嘘をついているんじゃないとリロの顔を覗いてみたけど、特にそれといったものはない。本心からなんだろう。
「私も最初は、彼らのように冒険者としての高みを目指していました。ですが、私は途中で自分の限界を感じて引退しようとしていたんですがそのときに拾ってくれたのがあの人たちです」
リロは少し頬を上げながら語り始めた。
私とボロダインは何も言わず、ただ聞く。
「あの人たちはすごかった。何をするにも常人の数十倍のことができて、いつでも力がみなぎっている。私も当時はAランク冒険者として活動していたので、ある程度自信はあったのですがあんな圧倒的なものを見たらそんなものなくなりました。そして、あれが高みの冒険者なのだと実感して絶望しました」
リロは苦笑しながら言ってきた。
絶望……。もし私も、あの獣人の人たちと一緒にいたら絶望していると思う。あの高みは私には高すぎる、と。
「私はある日、もうパーティーにいても自分の未熟さを感じて嫌になるだけなので脱退を申し出たんですがザイラさんに、「お前はお前のすべきことをしろ」と言われ気づきました。冒険者は、なにも魔物と戦うだけではないことに」
魔物と戦うためじゃない。
それってどういうことなんだろうか? 私も冒険者をしているのにわからないんなんて恥ずかしい。
そして同時に悔しい。
「Sランクパーティーには、それに見合った力の冒険者の脇役がいる。あのね? 脇役っていうのは結構大変なんだよ? 例えば、パーティーに依頼したい国だったり権力者と話をしないといけなかったりパーティーの財産管理だったり……」
そんなこと知らない。そんなこと初めて知った。
もしかして私だけがリロの言葉が初耳なのかと不安になったのでボロダインの顔を見てみたけど、顔に初耳だということが書いてあった。
私は自分だけ知らなかったんじゃないとホッとした。
「戦いとは全く関係のないことでも、それはパーティーにとって大切なことだから蔑ろにすることはできないの。あなたたちのパーティーにもこういった脇役をする人がいるでしょう?」
リロは当たり前かのように聞いてきた。
「いや……心当たりがないです……」
「そうなの……あなたも?」
「おいらも心当たりがないどす……」
私もボロダインも知らなかったってことは、もしかしてティラがしていたのかな……? いやそれはない。あのこは引っ込みじあんだから、そんなパーティーの顔になれるわけない。って、ことはロット? いやあのバカにはリーダーと脇役の掛け持ちなんて、そんな器用な真似できるわけがない。
じゃあ一体誰が……?
「脇役がいないパーティーは、多分だけどそういうこと全部リーダーがやっていると思う」
「ロットが……?」
私は一番ありえない人物の名前が出てきたので思わず、聞き返してしまった。
「まぁ、私はあなたたちのパーティー体制に口出すつもりはないんだけど、脇役とリーダーを掛け持つのはかなり大変らしい。それがザイラが脇役である私をスカウトした理由なんだけどね」
「脇役……」
もしリロの推測が正しければ……というよりかは、多分正しい。ロットが掛け持ちをしているとして、いつも細かいところがおろそかなのは疲れていたからなの?? わかんない。
あのバカが私の知らないところで勝手に苦労して、勝手に頑張っていると思うとなんか腹が立ってきた。
私たちは信頼しあっているパーティーなのに。そんなことも相談できなかったのかな……?
いずれにせよ、ロットたちが無事に帰ってきたら問いたださないといけない。
「なんか、長ったらしい老人の昔話みたいだったね……。つまり私は、パーティーには脇役が必要だとということを言いたかったの」
「じゃあ今まで、面倒なことは全部ロットに任せていたということになるどす……」
リロは私たちの顔色が悪くなったのがわかったのか、話をやめようとしたがどうやらそんなことボロダインにはそんな巧妙な意図なんて読めなかったようだ。
「っす〜……あなたたちがしてこなかったのなら、そういうことになるね……ごめん! なんか、私から持ちかけた話だけど空気悪くなったら忘れて?」
「はい。そうしておきます……」
そう言うとリロは再び先頭に戻って私たちのことを先導するかのように、歩きはじめた。
私とボロダインはそんな姿を見て、お互いに少し足の速度を下げる。
「おいら冒険者は魔物を倒せばいいと思ってて、パーティーのことなんか全然知らなかったどす」
「私も今、初めて知ったのよ……」
「ちょっと〜……何そこでコソコソ話してるの? おいていくよ?」
「あっ、今行きます!」
「おいらも」
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下の方から☆を……☆をくれぇええええ!!
30話以上公開して☆が合計19個(´・ω・`)
☆って作者にとって、見てくれてる人がいるんだって実感するし貰えると一番嬉しいんだよね。
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