第8話 キャシーの正体



「ふぁ〜……」


 あぁ〜よく寝た……。

 昨日はよくわからない迷宮に入って、ドラゴンを倒してそのドラゴンの魔石が1000万リースもして、さらにキャシーっていう女の子と楽しく酒が飲めた。本当に最高の1日だったなぁ〜……。


 今日も冒険者ギルドにでもいって、なんか依頼でも受けようかな。


「ん? なんだこれ?」


 俺の左手にやらかい物体がある。

 試しに動かしてみる。やっぱりやらかい。そして、触り心地が最高だ。

 ん? なんか突起物もあるな……。

 これは一体何なんだ?


「あ、あの……」


 俺が手の感触を確かめている方から声がした。なんだと思い、顔を向ける。するとそこには、すべすべそうな肌を出し布団で体を隠そうと必死になっている女の子がいた。


 ん? そうだ! 俺は酒を飲んでから、キャシーと一緒に寝たんだった。

 なんでこんなこと忘れてたんだよ……。


「あっごめん!」


「いえ……別に嫌じゃなかったんですけど……」


 キャシーがなにか小声で言ってる。

 聞こえてるんだぞ? 聞こえてるぞ! 嫌じゃないってどういうことなんだ!! もっと触ってもいいのか!?!?


 ふぅ〜……。危ない危ない。

 俺のゴットハンドが暴走するところだった。


「昨晩は、申し訳ございませんでした!!」


「え!?」


 キャシーはいきなり、俺に向かって謝ってきた!

 それも全裸のまま!! なんで謝っているのか気になるけど、それより見えそうで見えないアソコが気になる。


「突然、部屋の中に押しかけて襲っちゃうなんて……。あの時、酔っていたのであまり理性がきかなかったんです」


「いやいや、あれくらい大丈夫だよ」


 うん。実際、全然大丈夫じゃなかったよ。今、体中が痛い。まぁ、これは昨日の迷宮でのものかもしれないけど。


 キャシーって見かけによらず結構アグレッシブだったから俺、翻弄されちゃった。あんなに激しい女の子初めてだ……。


「それでなんですけど……」


「ん?」


「私のパートナーになってください!」


 キャシーはもう一度、全裸で頭を下げてきた。

 今回は可愛らしいアレが見えて最高。


「パートナー?」


 どういうことだ? パートナー……。そういうことをするような仲って言うことなのかな……? いや、そんなこと頭を下げてきたお願いするようなことなのか? キャシーって淫乱だな!!

 

「はい……。私実はサキュバスでして、一度シた方以外の精では死んでしまうんです……」

  

 キャシーは背中から黒い翼と、腰辺りから黒い尻尾を見せて言ってきた。


 サキュバス……? ほえぇ〜。本でしか見たことがないけど、実在したんだ……。ん? ちょっとまて。今、一度シた人以外の精じゃないと死んじゃうって言わなかったか? 


 ……ていうことは、まさかあれが初めてだったのか!? サ、サキュバス恐るべし!!


「まぁ、生きるためなら仕方ないのか?」  


「はい! 仕方ないのです!」


 キャシーは満面の笑みを浮かべた。


 これって、食糧ができたから嬉しいんだよな……?

 そんな笑顔見せられると、俺勘違いしちゃうよ?


「パートナーになるってことはいつと一緒にいないといけないよな?」


「はい。私とロンベルトさんはいつでもどこでも一心同体です!」


 一心同体って……。それはちょっと言い過ぎじゃない? 俺は食糧でキャシーは捕食者なのに。そんなにパートナーができたことが嬉しいのか……。


「とりあえず俺は今日も冒険者ギルドに行って、なにか適当な依頼を受けるけどキャシーも一緒に行くか?」


「はい! 行きます!」


 こうして俺とキャシーはお互い服を着て、同じ宿から冒険者ギルドに向っていった。



  *



 冒険者ギルドに行った俺たちは、キャシーの登録を済ませておいた。項目欄にある身元がわからないので、とりあえず俺の妻ということにしておいた。サキュバスなんて書いたら、変なこと思われそうだしな。


 そして、登録が終わったので適当な依頼でも受けようと思ったんだけど……。


「えっとこちらの方は?」

 

 いつも、優しくしてくれる巨乳の受付嬢さんが隣りにいるキャシーと俺のことを交互に見ていて全然話が進まない。


 説明するのが面倒くさいので言うのが嫌なんだけど……。


「あぁこの人は……」


「妻です!」


「「え!?」」


 冒険者ギルドにいる、全員の受付嬢さんが一斉に俺の方を向いてきた!


 あ、あれ? 俺ってこんなに知り合いいたっけ?


「えっとご、ご結婚おめでとうございます?」


 いつもの受付嬢さんは疑問を顔に残しながら、祝福してきた。


「いや、結婚なんてしてませんから!」


「え……。パートナーになってくれるっていうあの言葉、嘘だったんですか?」


 キャシーはか弱い声になりながら俺に訴えかけてきた。

 

 え!? パートナーってそういうことだったのか!? 俺って騙されて勝手に結婚されたことになってたの!?

 ヤバイヤバイヤバイ。全然状況が理解できない。


「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ」


 これって結構やばい状況なんじゃないか?

 俺と結婚したつもりでいるキャシー。そして、俺のことを怪訝な顔で見てくる受付嬢の人たち。


 どうしようどうしよう……。なんて言うのが正解なんだ!?


「おうおうおう。ロンベルトォ〜……どうしたんだ? そんな慌てて……。薬草だと思ってたのが雑草だったのか?」


 俺が困っていると、突然肩に手をかけてバカにするかのように話しかけてきた人物がいた。

 ニラーだ。

 まさかこいつ、今どういう状況なのかわからないのか? 周りの受付嬢が明らかに嫌な目線を送っている。


「なんですかあなた。ロンベルトさんの肩から手を離しなさい!」

 

 キャシーは急に怒鳴った。


 な、なにぃ〜……?なにしてるんだよ……! 肩に触った程度でそんなに怒っちゃって。まぁ、独占欲が強いのはちょびっと嬉しいんだけど喧嘩売っちゃだめでしょ!


「あぁん? なんだてめぇ」


「ニラー様に向かって失礼よ!」

「なによ。クソ女!」


 ニラーの言葉に、後ろにいる女二人が同調してきた。

 

「私はロンベルトさんのパートナーです!」


 キャシーはどこか誇らしげに言い放った。

 うん。パートナー。パートナー。それが正解。妻ではないよね?


「ははぁ〜ん。お前、女を捕まえてきたのか」


「捕まえたなんて!」

 

 俺はただ、彼女が生きていくために必要な精をあげるパートナーになっただけだ。

 そんな言い方良くない。ん? 今の俺のほうが良くないんじゃないのか?


「おい嬢ちゃん。こんな草むしりしかできないようなポンコツなんか捨てて、こっちにこないか?」


 こいつ……。


「な!? 正気ですか!?」

「なら、私たちはどうなるんですか!?」


「お前たちは黙ってろ!」


 ニラーは後ろにいる女に向かって怒鳴った。


 あの二人はいつも、ニラーに同調して俺のことをバカにしてくるけどちょっぴりかわいそう。


「俺と一緒に来たらこいつといるよりかは金が入るし、夜もいい思いができると思う。どうだ?」


「…………な」


 キャシーは下を向いて呟いた。

 

「なんだ? くる気になったか?」


「バカにするなッ!!」


 キャシーは思いっきりニラーの顔を殴りつけた!


「がっ……」


「きゃっ!」

「ニラー様ッ!」


 ニラーが頭から倒れていった。

 それを見た女二人は駆け寄っていった。


 は、はぇ〜……。キャシーって結構怒らせるとヤバめなんだな。いや、ニラーの立場がわからないだけか? まぁそんなことどうでもいいや。


 いつも突っかかってきたやつをぶん殴ってくれて、なんかスッキリした。


「よ、よぉ〜し! じゃあ今日も、薬草採取しにいくか」


 

  

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