第2話:食べられるの?



 さて、とりあえず食材は手に入った。

 私は魔法のポーチから道具を取り出す。



 「やっぱ便利だよね、そのポーチ」


 「うん、こっちに飛ばされた時にこれ預かって持っていたのが助かった。シャルさんに感謝だね」



 このポーチ、腰にちんまりと付いているけど実は数次元ポケットみたいに完全に違う大きさの物が入る。

 そして食べ物なんか入れておくと何時までも腐らず新鮮なままの姿を保てる。



 「あ、そうだいらないコカトリスしまっておこう」



 私はコカトリスをむんずとつかんでポーチに入れる。

 するとあの巨体をすんなりとポーチに収容できた。



 「えへへへへ、これで当分お肉食べれるね!」

 

 「うん、そうなんだけどさぁ……」


 コカトリスってちゃんと食べられるのかな?


 一応石化毒は「消し去る」力を使ってこの肉も対応しているけど普通の鶏肉と違ってちょっと紫色っぽい。

 オーストラリアのミューとか言う鳥がこんな様な色らしいけど、食べた事無いからわからない。



 「あのさルラ、これって食べられるよね??」


 「うん? 大丈夫じゃないの? だって鶏ぽかったもん」



 私はコカトリスの姿を思い出す。


 確かに見た目は雄鶏だけど尻尾が蛇みたいになっている。

 そしてくちばしはなんか半分石っぽい色してた。


 見た目に反してこの怪物草食で、特定の草しか食べないらしい。


 ちょっと前に立ち寄った町ではそんな事言ってた。

 そしてやたらとその草から出来た解毒剤を進められたけど、私には必要ない。



 「さて、とりあえず味見だけはしてみましょうか?」


 「ん、お任せぇ~♪」



 調理台とまな板、そして包丁を取り出して小さ目に切ってみる。

 そして岩塩を取り出してふりかけ、その辺にある枝にくっつける。



 「ルラ、その辺の石で火花作って、サラマンダーを呼び出すから」


 「ほい、じゃあこれでやってみるね!」

 

 ルラはその辺に落ちている石を二つ掴み高速で擦る。

 すると、かきーんっと言う音がして火花が飛び散る。

 私はすぐに精神集中してサラマンダーを呼ぶ。



 「炎の精霊よ、私たちに炎を!」



 準備していた枯葉にその火花は消える事無く飛び散り、ぼっ! と火が付く。

 目を凝らしてみるとその炎の影に体から炎を燃え上がらせるトカゲが半透明で見える。


 「ありがと、これでこのお肉焼ける」


 薪を放り込み更に火を大きくする。

 そして先程の枝に刺した肉を焼き始める。



 じゅぅじゅぅ


 

 小さめに切ったその肉片は音を立てて焼け始める。


 「お姉ちゃんまさかこれだけ?」

 

 「いやいやいいや、流石に食べた事の無いお肉をいきなり食べる勇気は無いわよ。それにどんな味かわからないしね」


 「鳥なんだから鶏みたいな味なんじゃないの?」


 それを聞いて私は生前に兄の大学の学園祭で騙されて食べさせられた鳩の肉を思い出す。

 最初は変わった鶏肉で結構おいしいと思ったけど、鳩と知った時の私の純真な心を返せ。

 平和の象徴をまさか食べさせられるとは思わなかった。


 ……まあ、確かに味は悪くなかった。


 兄の話ではアジア圏では普通に食べてるらしい。

 インド料理の中には鳩肉のカレーなんてものもあるらしいから驚きだ。



 と、そんな事を考えていたら結構とおいしそうな匂いでこんがりと肉が焼き上がる。

 私はそれをすぐにまな板の上で二つに切って自分の口に放り込んでみる。



 「あー、お姉ちゃんずるい!」



 文句を言うルラの口にも残り半分を振り込む。



 ぱくっ!

 

 もごもご……



 「うーん、味は確かに鶏だ……」


 「なんか硬いね……」


 焼き鳥のイメージで口に放り込んだけど味は確かに鶏だった。

 しかもささみみたいに脂っ気がほとんど無いやつ。

 

 まあ、エルフの身体には助かるのだけど、流石にこの硬さは。

 まるで少し戻したスルメの様な硬さだった。


 「これ硬すぎ! こんなの噛んでたらホルモンより大変だよ!!」


 「うーん、味はいいんだけど、こんなに硬いんじゃ普通に料理しても硬いままだなぁ。照り焼きなんて夢のまた夢だよ?」


 「えーっ! あたし照り焼きでも焼き鳥でも何でもいいから食べたい! せっかく捕まえたのに!!」


 ルラはそう言ってまた手足をバタバタさせる。

 ポーチの中にはまだ木の実とか有るから食べるものには困らないけど、せっかく捕まえたコカトリス、食べないってのももったいない。


 それに味は悪くない。



 「うーん焼いたり炒めたりはだめかぁ。ねえルラ、煮込み料理じゃ駄目かな?」


 「煮込み料理でも何でもいい! お肉食べたい!!」



 私は、はいはいと言いながらもう一度ポーチに手を突っ込む。

 そして前の町で買った瓶をいくつか取り出す。



 「さて、それじゃぁやってみましょうか!」


 

 腕まくりをしながら私はこの肉を捌き始めるのだった。 


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