女の子を抱えた消防士

karudom

女の子を抱えた消防士

その家には、女の子とその父親が住んで居た。妻を早くに亡くし、男手一つで女の子を育てていた。

しかしある日、その2人が住んでいる家が火だるまになっていたのだった。たまたま近所を通りがかった通行人が消防署に電話をし、家の消火活動が始まった。

消火活動は終わり、家主や通報者に取り調べをすることにした。しかし、家主とは連絡が付かなかった。通報者に事情を聞くと、警察が思わず頭を抱えるような出来事を口にした。それは...

「小さな女の子を抱えた消防士姿の男性が、燃えている家の中に向かって歩いて行った」っと...。

消化後、人の死体は見つからなかった。しかし、通報者や近くで見ていた人たちはみんな口を揃えてその光景を見たと主張している。

どうやら、何度も歩みを止めるよう声をかけたらしい。しかし、その消防士姿の男性は歩みを止めず、なにかに取り憑かれたかのように聞く耳も持たずに燃えている家の中へ女の子を抱えたまま歩いていった、と。

調べてみるとさらに謎は深まった。男性と男性に抱えられた女の子は、この燃えた家の家主であり、親子。さらに、父親の職業は服装通り、消防士だったことも分かった。

後日、彼が所属している消防署に連絡をすると、その日彼は休日だったそう。「娘を連れて遊びに行く」と同僚には笑顔で話していたらしい。とても真面目でリーダーシップがあり、どんなに辛い時でもみんなの前では笑顔を絶やさない人だったと。

そんな彼が、なぜ火災当日、消防士ながら消火活動もせずかつ消防士の服を着て燃える家の中へ向かい、娘と一緒に姿を消したのか。娘さんは燃える家の中に一緒に連れ込まれたのに抵抗はなかったのか。分からないことだらけだ。その真相は未だ謎に包まれている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女の子を抱えた消防士 karudom @karudom

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ