21

ミケを包む光が、一際大きくなった。


私は、出来うる限りの想いを込めて、ミケの頭を、優しく撫でる。


「ありがとう、ミケ。私は、もう、大丈夫だから。薫さんに、よろしく言っておいておくれ」


「ニャーゴ」


ミケが、私に鳴いた。


それを最後に、ミケの体は、きらきらと輝く光の粒となって、虚空へと消えていった。


辺りを包む光が、一層、強くなる。


勢いを増す光と共に、私の意識も薄れていく。


『秀次様。本日は御来場、誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております』


消えゆく意識の最後で、あの小劇場の、黒色に身を包んだ彼女の声が、遠くの方で聴こえた。

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