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「ニャーゴ」


鳴きながら、ミケが私の膝に滑り込んでくる。


「お前…、一体何処に行ってたんだい?」


「ニャーゴ」


私の気持ちなど知る由もなく、ミケが呑気に鳴いている。


「そう言えば、フィルム映画が無くなった代わりに、私達は、お前と出会ったんだったな」


結婚して間もなく、世の中から、小劇場は徐々に姿を消していき、それと同時に、私達の時間から、フィルム映画も消えていった。


ミケと出会ったのは、そんな時だった。


街の小さなペットショップで、売れ残っていた、小さな子猫と出会った時、私達夫婦の間に空いてしまった穴が、埋まるのを感じた。


フィルム映画が無くなり、何処と無く、味気のない生活を送っていた私達に、この子が、また新しい色を、与えてくれたのだ。


「ニャーゴ」


ミケの鳴き声を合図に、目の前のスクリーンが、モノクロの点滅を繰り返しながら、ゆっくりと、動き始める。

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