15
「ニャーゴ」
鳴きながら、ミケが私の膝に滑り込んでくる。
「お前…、一体何処に行ってたんだい?」
「ニャーゴ」
私の気持ちなど知る由もなく、ミケが呑気に鳴いている。
「そう言えば、フィルム映画が無くなった代わりに、私達は、お前と出会ったんだったな」
結婚して間もなく、世の中から、小劇場は徐々に姿を消していき、それと同時に、私達の時間から、フィルム映画も消えていった。
ミケと出会ったのは、そんな時だった。
街の小さなペットショップで、売れ残っていた、小さな子猫と出会った時、私達夫婦の間に空いてしまった穴が、埋まるのを感じた。
フィルム映画が無くなり、何処と無く、味気のない生活を送っていた私達に、この子が、また新しい色を、与えてくれたのだ。
「ニャーゴ」
ミケの鳴き声を合図に、目の前のスクリーンが、モノクロの点滅を繰り返しながら、ゆっくりと、動き始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます