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「ミケを、ご存知なのですか…?」


私は、彼女が、ミケの名前を知っていた事に驚く。


私達夫婦には、特に親しい知人もいなかった。


ミケの事を誰かに話した事は、もちろんなく、私達以外に、ミケの名前を知っている人が居る事は考えづらい。


「ええ。ここは、生前、故人に寵愛を受けていた者が、その故人の紹介により訪れる事の出来る場所でございます」


そう言うと、彼女は黒いスーツのポケットから、白縹色のチケットを取り出す。


「紹介を受けた者は、このチケットを手に、ここを訪れます。上映演目は、その者によって様々ですが、ある者はそれを追憶と呼び、ある者は、それを走馬灯と呼んでいました」


そこまで彼女が話した所で、私の目の前を、明るい光の玉のようなものが、横切って行った。


「うわっ!」


「またのお越しをお待ちしております」


彼女は、そんな私を気にする事もなく、光の玉に綺麗にお辞儀をする。


「今の、光の玉は…」


「ここを訪れる、お客様の一人です。人間の言葉で言うと、付喪神、と言った所でしょうか。

なるほど、人の目には、光の玉に見えるのですね」


付喪神?


この人は、一体何を言っているんだ。

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