7
ひらりと、桃色の花びらが、辺りに落ちていく。
その度に、仄かに甘い香りが、穏やかな空気を包み込んでいた。
ー不思議と、心が落ち着く。
ここ数ヶ月、一人で春を感じる度に、感情が悲しく凪いでいたのに、
この、桜色で満ちた景色は、悲しくさせる所か、私の心を、暖かく、緩やかなものにさせていた。
長く続く階段を登っている今も、何故か疲れを感じる事はなく、どこか活力のようなものが込み上げているぐらいだ。
ーこんな穏やかな気持ちになれたのは、いつぶりだろう。
遠く失ってしまった、あの日の景色が、再び私の中で色を持ち始めた気がした。
しばらく、そんな面持ちで登り続けていると、気付けば、山頂まで辿り着いていた。
山頂には、淡い桃色の木々と共に、懐かしい、小劇場のようなものが、建てられている。
ーこんな所に…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます