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ひらりと、桃色の花びらが、辺りに落ちていく。


その度に、仄かに甘い香りが、穏やかな空気を包み込んでいた。


ー不思議と、心が落ち着く。


ここ数ヶ月、一人で春を感じる度に、感情が悲しく凪いでいたのに、


この、桜色で満ちた景色は、悲しくさせる所か、私の心を、暖かく、緩やかなものにさせていた。


長く続く階段を登っている今も、何故か疲れを感じる事はなく、どこか活力のようなものが込み上げているぐらいだ。


ーこんな穏やかな気持ちになれたのは、いつぶりだろう。


遠く失ってしまった、あの日の景色が、再び私の中で色を持ち始めた気がした。


しばらく、そんな面持ちで登り続けていると、気付けば、山頂まで辿り着いていた。


山頂には、淡い桃色の木々と共に、懐かしい、小劇場のようなものが、建てられている。


ーこんな所に…?

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