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ふわり、と
懐かしい香りが、辺りを包んだ。
妻とミケと、三人で良く見ていた、淡い桃色の、花の香り。
ひらひらと、一枚の花弁が、私の足元に落ちる。
ゆっくりと、顔を上げた、私の目の前には、
辺り一面、御所染色の景色が広がっていた。
「綺麗だ…」
ーこんな所があったなんて…。
この街に越してきて、もう随分と経つが、こんな場所がある事を、私は今の今まで知らなかった。
ーまだまだ、知らない事の方が多いな。
桜の木々の間を通り抜けるように、長い階段が続いている。
どうやら、ここは、桜が群生している小山のようで、その階段は、山頂の方へと続いていた。
「年寄りには少しきついが、これも何かの縁だろう」
意を決して、体を痛めないように気をつけながら、一歩ずつ、階段を登り始める。
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