3
居間には、庭に面した形でちょっとしたベランダがあり、そこの揺り椅子に、いつも妻が座っていた。
ミケは、そんな妻の膝で、いつも気持ちよさそうに寝ていて、私は、そんな穏やかな風景を見ているのが、好きだった。
妻が亡くなってからは、その揺り椅子には、ミケがいつも座っている。
その姿は、まるで、亡くなる直前の、妻の姿のようでもあった。
「ミケ、ご飯持ってきたよ」
呼びかけるが、反応がない。
居間の揺り椅子に、ミケの姿はなかった。
ー庭にでも、出ているのだろうか。
珍しいなと思いつつ、ミケの名前をもう一度読んでみる。
ミケが、一人で散歩に行くことは、もうほとんど不可能だ。
そんな体力すら、今のあの子には残っていない。
それでも偶に、庭に出ていることもあるが、そんな場合でも、いつもエサの時間になれば、名前を呼べば、すぐに顔を見せてくれる。
なのに、今日は、幾ら名前を呼んでも、顔を見せる事はなかった。
「ミケ…?ご飯だよ」
相変わらず、反応がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます