デジャヴ

 ピンクペタルと言う名前が決まってからも、当然社員の募集は続いていた。しかし私は今日、面接官を理夏に任せていつぞやの喫茶店に来ていた。無論、仕事としてだ。私は喫茶店に入ると、店長らしきお爺さん、いや店長の永島さんに挨拶をした。

「おはようございます、今日はよろしくお願いします。」

「ええ、よろしくお願い致します。谷坂を呼んで参りますので、少々お待ちくださいませ。」

そう。今日は私にメロンソーダを運んできた男の子、谷坂さんに用事があってこの店に来たのだ。

 遡ること数日前。私はあの時覚えた既視感が気になり、営業時間終了間際にお店を訪ねた。谷坂さんとお話しをしてみたかったのだ。私は永島さんと谷坂さん本人に許可を貰って谷坂さんを店の外に連れ出した。普通こんな怪しい申し出は絶対に承諾しないだろう。しかし、店長の永島さんも当人である谷坂さんも、私の申し出を二つ返事で承諾してくれた。理由は全く分からないがとにかくラッキーだ。私達は店の入り口の横に設けられているテラス席に、二人で向かい合って腰を掛けた。そして私は早速谷坂さんに質問を投げ掛けたのだ。

「私と谷坂さんって、何処かでお会いしたことありましたっけ?」

「ある、と思います。ぼ、僕もそんな気がします。」

谷坂さんはしどろもどろに返事をした。私は好奇心からさらに質問を続ける。

「何処なのでしょうね、私達が会った場所は。」

「わ、分かりません。ごめんなさい。」

「そうです、よね。変なこと聞いてすいません。」

私は、要らぬことを聞いてしまったと謝罪をした。

「いえいえ、大丈夫です。こちらこそ思い出せなくてすいません。」

それを彼は、優しく受け止め謝罪までしてくれた。その時、私はまた何か覚えのある感覚に襲われたが、謝った手前で聞き直すのは無粋だと思い、その疑問を胸中にしまった。彼は誰なのだろう。素朴な疑問と好奇心が胸中を駆け巡る中、私は自分でも驚くような妙案を思いついた。

「あの、谷坂さん。良ければ私の友達がやっている会社に来て頂けませんでしょうか?」

「え?」

驚くのも当然だ、提案をした私ですら驚いているのだから。私は胸中を駆け巡る疑問と好奇心の偶然の産物により、谷坂さんを社員にしてしまおうと言う妙案を思い付いたのだ。

「それは一体どういうことでしょうか?」

私は、ピンクペタルの今の状況と谷坂さんに投げ掛けた妙案にについて詳細を説明した。

 そしてあれから数日の時間が経った今日、その妙案の返事を貰いにきた訳だ。果たしてどんな返事だろうか。














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彩りある雫に葛藤を ソウカシンジ @soukashinji

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