17話 研修旅行(7)

「佐藤くん! 佐藤くんだよね!?

 探してたよ! スキーには慣れてると思ってたからこのコースでうろうろしていたんだけど……」


 同じバイト仲間だった東風谷がいた。

 そういえば同じ学校だとは聞いていたが、出先で出会うとは思っていなかった。


「というか俺を探してたって言ってたけど、なんで俺のことを?」

「そりゃあもちろん一緒に滑るためだよ!

 中級者コースに来てるってことは、スキーにはそれなりに慣れてるんだよね?」

「いや、俺は今日が初めてのスキーだよ」


 中級者コースにいるんだし、やったことがあると思われるのは当然だろう。


「というか一応言うけど、俺は一人で滑ってるわけじゃないよ?

 その人にスキーを教えてもらってる」

「一緒に登校していたあの人?」


 (なんだ? 東風谷の目線が一気に鋭くなった気がする……)。


「腕まで組んで仲良さそうに登校して……

 佐藤くんの事情は店長に聞いたからなんとなくは知ってたけど…… 他の人にお世話になっていたんだね」


 なんだろう、悪いことはしていないはずなのになぜか問い詰められている感じがする。


「それに店長に顔出してないよね?

 店長、かなり心配してたしせめて生存確認ぐらいはする方が良いんじゃない?」

「あ、ああ…… そうするよ」


 東風谷の目がめちゃくちゃ怖い。

 普段の東風谷を知っているだけあって、なまじ表情の変化が読めてなおさら怖い。


「でも今はとにかくスキーを楽しもうか!

 一緒に滑ろうよ!」

「いや、だから俺には連れが……」


 強引に連れていかれそうになった時……


「優真くんいました! いましたよー!

 もう、どこに行って…… 誰ですか?

 その仲よさそうに手を繋いでる人は」


 三日月さんの表情も急に曇った。

 二人とも見つめあっているが、お互いを敵対視しているような感じだ。


「あ、ほんとにいた!

 咲ちゃんがめちゃくちゃ心配……

 何この修羅場? なんでこうなったの?」

「俺も分からないんだよ……」


 この間にも二人は俺のことについて言いあっていた。

 

「私が佐藤くんとは先に出会ってるんです!

 一緒にいる権利は私にあるはずです!」

「もう一度言いますけど優真くんは私と一緒に住んでいるんです。

 きちんとプロポーズまでしてくださったんですよ?」


 三日月さんと出会った瞬間、東風谷は敬語になった。

 一応知らない人にはきちんと敬語で話すのだろう。


 あと頼むから抑えてくれ三日月さん。

 東風谷がすっごい睨んできてるし、唸り声まで出し始めた。


「どうなんですか佐藤くん!

 どっちを選ぶんですか!?」

「もちろん私ですよね!

 私は優真くんを信じていますから」


 ハーレムが羨ましい…… 

 なんて思ったことはあったが、こんな状況になるぐらいなら独り身の方がましだ。


「そりゃあもちろん三日月さんを選ぶよ。

 俺達は夫婦なんだから」


 さすがに三日月さんに軍配が上がる。

 東風谷はあくまでバイト仲間だ。


「そんな……」


 東風谷は信じられないといった表情でこちらを見つめてきた。


「私も佐藤くんのことが好きだったんですよ!

 バイトで私のことを助けてくれた時からずっと……

 なのに…… なのになんで……」


 東風谷は涙を流しながら訴えてきた。

 こんな経験はみんな初めてなのだろう。

 誰も、何も声をかけてあげることは出来なかった……


「私には蓮がいるから正直聞き入れてもらえるか分かんないけど、恋愛は諦めないことが大事なんだよ?」


 不意に口を開いたのは凜だった。


「私は小学校から蓮と一緒にいて、ずっと蓮と過ごしてきたからあんまり分かんないけどね。

 今まで何人も蓮に告白して、その度に私に何か言っていく人はいたの。

 私の方がー とか、なんでお前がー とか

 でもなんでそうなるのか分かんない。

 男子は一人しかいないの?

 その人にフラれたら全部終わりなの?」


 凜も自分なりの経験をしてきたのだろう。

 

「まあ私は蓮にフラれたら死んじゃうかもだけどね。

 フラれてもたぶん諦めないよ」


 そう付け足した凜は赤い顔をして蓮の方を見つめていた。


「え、私なんで惚気を間近で見せられているんですか?

 付き合ったらこんなに楽しいよっていう自慢ですか?」


 さすがの東風谷も困惑していた。

 もちろん俺達も困惑していたのだが……


「そういうことですか!」


 東風谷はこのよく分からない惚気から何かを学んだらしい。


「私に佐藤くんのことを諦めるなと言いたかったのですね!

 そのために惚気ているのを見せてモチベーションを引き出していたと……」


 だんだん話が違う方に進んできた。


「あのー…… 違うよ? てかこの子誰?

 初対面の人にめちゃくちゃ力説してたんだけど……」

「バイト先の同期」


「そんなことを言っていられるのも今のうちですよ佐藤くん……

 私のことしか考えられないようにしてあげますから!」


「なんで俺に関わる人はみんなどこか拗らせてるんだよ……」

「やっぱり私のこともそう思っていたんですね!

 そう思っていたなら言ってくださいよ!」

「いやだって彼女に愛が重いよなんて言える彼氏いる?」


「私の前でみんなで惚気ないでくださいー!

 私だって早くそっち側に……」


「なんで俺は毎回凜に巻き込まれてるの?

 事情分からない時に限って問題が起きてるし……」

「蓮はそれが良いのー!

 私といてくれたらそれで……」


「あーーー!!!!

 もう分かりました、私は宣戦布告します!

 三日月さんは覚悟の準備をしておいてください!

 佐藤くんが私にとられる覚悟を!」


 そう言って東風谷は去っていった……


「結局なんだったの……」


 

 それでもこの後は4人でゆっくりスキーを楽しんだのであった。



(いやそんなのでまとめないでください!)

 


――――――――――――――――――――



 part17

 

 まさか本当に優真くんの事を狙ってる人がいたとは……

 嫌な勘が当たってしまいました。


 優真くんのバイト先の同期だそうです。

 いやほんとに男の人の取り合いなんて起きるんですね……

 

 優真くんが私を選んでくれて本当に安心しました。

 愛が重いと言われたのはショックでしたが……


 これからも周りに注意しなければなりませんね。

 優真くんは私だけの人です!



――――――――――――――――――――



 お読みいただきありがとうございました!

 

 Twitter効果は絶大で、PVもフォローも一気に増えました! とても感謝してます。


 こんなに見てもらえるなら毎日投稿しなければ無作法というもの……

 ということで、毎日投稿頑張っていきますので次回もよろしくお願いします!

 

(東風谷については今後深掘りしていきます。

 少しだけ二人きりのイチャイチャをお楽しみください)。

 


 




 

 


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