18話 研修旅行(8)

「まさか今日もこんなにドタバタするとは思ってもなかったよ……

 明日ぐらいは平和に過ごせたらいいな」

「そうですね。

 優真くんの事を狙う不届き者が出ないことを今後は願わないと」


 三日月さんはスキー以来俺にくっついて離れてくれない。

 いやまあ離れてほしくはないんだけど。


「明日は朝から自由観光、夕方にかまくらでご飯食べたりするんだよね」

「自由観光ですか!

 いろいろ優真くんと行ってみたいところがあったんですよ」


 それはありがたい。

 だが、あくまで班行動だ。

 蓮達に許可を得なければ。


「蓮、明日は……」

「言われなくても分かってるよバカップル。

 二人きりで楽しんでこい」


 さすが俺の唯一の友人だ。


「ということは明日は二人で行動ですね!

 とても楽しみです!」


 そう言って三日月さんは俺に抱きつく腕に力をいれる。


「ど、どうしたの?

 なんか力強くなってるけど……」

「もしかしたら私や優真くんの事を誘ってく

る輩がいるかもしれないので牽制です」


 いや、輩って。

 一応みんなクラスメイトなのに……

 

 座席近くのこっちを見てた男子達の表情が急に死んだ。

 頼むからこっちに恨みの視線を向けないでくれ。


「ったく、ところ構わずイチャつくなよ

 腫れ物みたいな扱い受けてるじゃねぇか」

「お前にだけは言われたくねぇ。

 昨日の出来事大声で暴露するぞ」

「俺が悪かったですやめてください」


 バスの中で笑いが巻き起こった。

 もしかしたら空気が冷えていたのを盛り上げてくれたのかもしれない。

 さすがは蓮だ。


「そういえば、結局明日の予定まで話しちゃってるけど、最初先生が内緒にしていたのに大丈夫なのかな?」

「どうやら先生が勝手に言っていただけみたいで、他のクラスは最初に全部話されていたみたいですよ?」


 そうだったのか。

 確かに先生も途中から適当になってきていたし、本当に自分がやってみたかっただけみたいだ。


 その後も三日月さんと話していたのだが、なんだかホテルに着くのが遅く感じる。

 すぐに着くと聞いていたのでなおさらだ。


「よし、そろそろ今日のホテルに着く。

 自分の荷物はしっかりまとめておけよ!」


 ようやく着いたみたいだ。

 窓の外を覗き込み、見えた光景は……

 

 昨日と同じホテルだった。

 

「今日もここに泊まるんですか?」

「本来なら明日の目的地に近いホテルのはずだったんだけど、大雪で交通網がストップしているらしい。

 だから俺達は引き返してここに今日も泊まるって訳だ」


 でも文句を言ったりする生徒は一人もいなかった。

 このホテルは本当に居心地が良かったし、むしろみんな喜んでいるぐらいだろう。


「というか、その場合俺達はもう一回4人で一緒に寝ることになるのか?」

「そうなったら今日も優真くんと2人でイチャつくことが出来ないじゃないですか……

 2日お預けはさすがに寂しいです……」

「咲ちゃんほんとにすごいね……」


 なんて話していると、前から先生が来た。


「いや、今日はお前らの班も2部屋使っても大丈夫だぞ。

 ただ、しっかり同姓同士で寝てもらうがな。

 これ以上俺の前で惚気を見せるんじゃねぇ」


 しっかり先生に釘をさされた。

 三日月さんはめちゃくちゃしょんぼりしていたが、俺や蓮は違った。


(別に勝手に部屋を移動しても、点呼さえしっかりすればバレないんじゃね……?)


 普通に考えて、いくら先生でも部屋の中まで許可なしに入ってくることはないだろう。

 そう思って内心喜んでいたのだが……


「私、三日月さんの部屋に行きたいな!」

「それいいね! 私も話聞きたいなー

 点呼の前までなら行っていいよね!?」

「いや、あの……」


「それならば俺達は佐藤の部屋にお邪魔するとしよう。

 じっくり話を聞かせてもらおうじゃないか」

「え、ちょ、待っ」


 どうやら俺達に安息はないみたいだ……



――――――――――――――――――――



 part18

 

 今日は優真くんと一緒に寝られないなんて……

 同棲を始めて以来、一日も一緒に寝なかった日はないというのに……


 嫌です! 絶対に寝たいです!

 今日こそは2人でイチャイチャしたいです!


 ――え? 私の話を聞きたい?

 もう、私は優真くんと過ごしたいのに……

 さっさと話を済ませるとしますか。



――――――――――――――――――――



 お読みいただきありがとうございました!

 

 今回は短かかったですが、明日も投稿します!

 (優真side、咲side)


 次の話もよろしくお願いします!

 


 




 

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