16話 研修旅行(6)

 朝からバタバタしていた俺達も、なんとか食事の時間に間に合った。

 

(さすがは良いホテルだ……

 朝から豪華なバイキングとは。

 明日以降のホテルが不安になったなぁ)


 さすがに人が多いところでイチャつく事は出来ない…… と、思っていたのだが、


「優真くん、一緒に食べましょうか!」


 その瞬間、空気が凍ったのが分かった。

 周りを見るまでもなく、俺の方に視線は集中しているのが分かる。


「なんで佐藤と……?」

「しかも下の名前で呼ばれてるし……」

「あいつらやっぱりそういう関係じゃ……」


 明らかに俺達について言われている

 

 人の注目を浴びるのは好きではないため、すぐにでも逃げ出したいのだが、三日月さんはすぐに隣の席に座ってきた。


「あの、みかづ……」

「優真くん? また名字呼びになってますよ?

 昨日は口では言い表せないほどの情熱的な告白をしてくださったのに……」


 やばい。

 間違いなく俺も顔が真っ赤だ。

 他クラスの場所からも会話が聞こえてくる。


「き、急にどうしたの?」

「噂で聞いたんですよ、スキーの時に優真くんのことを誘おうとしている無礼者がいると。

 だからこその牽制です」


 なるほど、三日月さんは何か間違いが起きないようにしてくれているのか……


「って! 納得できるか!

 そもそも内緒にするんじゃなかったっけ?」

「内緒にしようとも考えていましたが、打ち明けた方が私も優真くんにも他の人が寄り付かないですし、いつでもイチャつけるではないですか。 それとも嫌でしたか……?」


 男子からは嫉妬や憎悪の目、女子からは好奇や興味の目で見られている。

 食事が終わったら質問攻めに遭うだろう。


「この後のプランは……?」

「もちろんノープランですよ?

 優真くんにすべてお任せします」


 なんて言いながら俺の腕に抱きついてきたので、なおさら大変な目に遭った。


 結局、俺達は食事後からバスに乗り込む時間まで質問攻めにされていたのだった。


「疲れた……

 人に注目されるのって疲れるんだね」

「もちろんですよ。

 私だって自慢にもなりませんが、外を歩いていたりしたらいろんな人に見られるんです。

 中には下卑た目線で見てくるような人もいるので、前までは外を歩くのもあまり好きではありませんでした」


 三日月さんも大変な思いをしたのだろう。


「ってことは……

 もしかしてあまり外に連れ出さない方が良かったりした……?」

「いえいえ、優真くんが隣にいてくれるだけで幸せですし、視線も減るので助かってますよ」

「それなら良かったよ」


 少し不安にはなったが、本当に大丈夫なのだろう。


「というか優真くんは自分のことを卑下しすぎなところがあります。

 もっと自信を持って生活した方がかっこよく見えますよ?

 まあ今でも充分かっこいいですけど」


 正直自分のことをあまり良いとは思っていないので反応に困る。


「それなら今度私が優真くんをおしゃれさんにしてあげましょう!

 服のセンスは普通に良い感じなので、あとは髪型とかですかね」

「お手柔らかにお願いします……」

 

 そんな会話をしながら移動時間を楽しんだ。

 


「よし! じゃあ今から自由時間だ!

 スキーなりスノボなり好きにしろ!

 他の人に迷惑だけはかけるなよ!」


 バスで1時間ほど揺られた後、俺達は目的地のスキー場に着いた。


 ここもどうやら有名なスキー場らしい。

 休日の朝からすごい人の量だ。

 

「人が多いですね……

 初心者の方は滑るのが怖いと思うかもしれませんが、優真くんは私がいるので大丈夫ですよ!」


 三日月さんは早くもスキー用の服に着替えていた。

 このスキー場は服のレンタルもできるらしいのだが、俺達は出発の前日に買っておいた。


「よし、こっちも準備できたよ」

「それじゃあリフトに行きましょうか!」


 そう言われ、三日月さんに手を引かれながら進んでいく。

 前に進むだけでもなかなか難しい。


「うーむ、優真くんはまず板を付けたまま歩くことを練習してみましょうか

 リフトで他の方にご迷惑をかけるわけにもいきませんし」


 ということでまずは歩く練習から始まった。

 いろんな歩き方と滑り方を数十分ほど練習して、普通に動けるようにはなった。


「うんうん。

 これで大丈夫そうですね。

 それじゃあ改めて登りましょうか!」


 そうして俺達はリフトに乗ったのだが、


 

「思っていたよりも怖く感じるな……

 宙ぶらりんでいる感じがする」

「何回か乗れば慣れてきますよ。

 それに私が抱きついているのでバランスも崩れません!」


 ちなみに4人乗りのリフトのため、横に2人一般人の方がいたのだが、案の定すごい目で見られた。


「これ本当に初心者コースだよね……?

 想像より高いし、急なんだけど……」

「今日の予定は中級者コースまで行く予定だったのですが……

 もしかすると無理かもしれませんね……」


 三日月さんにがっかりされた気がする。

 なんか急に悲しくなってきた。

 ここは良いところを少しでも見せなければ!


「じゃあとりあえず……

 ここまで来てください!」

 

 なんて言いながらすいすい進んでいく。

 うん、良いところは他のところで見せることにしよう。


「ほら! 優真くん早くしてくださーい!

 抱きしめられるの待ってるんですよー!」


 大声で叫ばないでほしい。

 そのせいで周りからの目が痛すぎる。


 覚悟を決めた。

 (こうなったらどうにでもなれ!)


 ビクビクしながら滑ってみたが……


「あれ? 案外滑れるもんだね」

「むー…… 優真くん運動神経も良かったんでしたね…… スキーもでしたか」


 思っていたよりも簡単に進めた。

 三日月さんは納得していなさそうだが、まあもっといろんなことが出来るしいいだろう。


 それから数十分後……


「一回上のコースに行ってみよっか」

「おかしい…… おかしいです……

 私の完璧なイチャイチャ計画が……」


 なんかぶつぶつ言っているがどうかしたのだろうか。

 まあ腕を組んでついてきてくれるので、おそらく大丈夫なんだろう。


「よーし行くよー!」

 

 滑り出し初めてすぐに気づいた。

 すぐに来るところではなかったと。

 思っているよりも速度が出始めた。


「やばいかもこれ……

 って、前の人! 危ないですー!」

「え……? きゃあ!」

 

 間一髪避けられた。

 しかし、かなり危なかった。

 お相手の方は大丈夫だろうか。


「本当にごめんなさい……

 大丈夫…… え?」

「え? 佐藤くん?」


 思わぬ出会いとなってしまった……



――――――――――――――――――――



 part16

 とうとう言ってしまいました……

 

 クラスメイトの注目は集めてしまいましたが、これで優真くんと私に近づいてくるような人はいなくなったでしょう


 それにこれからは学校でもイチャイチャ出来ます!

 普通の学校が楽しみになるとは……

 そんなこともありえるのですね!


 それより、スキーです!

 優真くんも結構滑れるじゃないですか!

 運動神経が良いとは言え、ここまですぐに出来るようになるとは……


 あれ? 優真くんの姿が消えました。

 先に滑ってしまったのでしょうか?

 ふふっ、子供みたいにはしゃいでますね!

 とりあえず自分も滑るとしましょう。



――――――――――――――――――――


 

 お読みいただきありがとうございました!

 

 投稿まで結構ギリギリでした……

 毎日投稿がどうのこうのでTwitterが盛り上がっていたので、自分も頑張らなければ!


 あ、そうそう。

 この度、ラノベ専用のTwitter垢を作りました。

 良ければそちらもお願いします。


 最後に、前回もお読みいただきありがとうございました。

 次回もよろしくお願いします!

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