15話 研修旅行(5)

(うーん、もう朝か……

 昨日は1日忙しかったな……

 三日月さんとのキス…… 良かったなぁ)。


 なんて思いながら体を起こそうとしたが、なぜか起こせない。

 自分の足を見てみると、三日月さんが足を絡ませていた。


 三日月さんの寝相が悪いのは知っていたが、ズボンがまくれ上がっていて、太ももどころか下着まで少し見えている。


(足に抱きつきたい……

 いや落ち着け、周りには蓮達がいるんだ)。


 凜の布団には誰もおらず、代わりに蓮の布団に膨らみが2つある。

 なんやかんや言いつつも蓮達も2人で寝たのだろう。


 しかしそろそろ起きなければ。

 今日は朝早くから動くわけではないため、もう少しゆっくり寝ていられるのだが、早起きの習慣を崩すわけにはいかない。


 ただこの状況を何とかするためは、三日月さんを起こさなければならない。

 仕方なく起こすことにしたのだが……


「三日月さん、起きてー。

 俺ランニング行ってくるから」

「うーん…… 優真くんは私の愛が重いって言うんですか…… うーん……」


 なにやらうなされている。

 昨日のことを夢で見ているのだろうか、三日月さんの目から涙がこぼれている。

 さすがに無視はできない。


「大丈夫だよ。

 俺は離れないからね」


 そう言って手を握ると、安心したのだろうか三日月さんはすやすやと寝息を立てだした。

 

(いや起こさなきゃいけないのに寝かしちゃってどうするんだよ)


 この押し問答を2回ほど繰り返した後、三日月さんが俺に抱きついて離れなくなったので、結局日課は諦めることになった。



「おい、起きろー。

 もうすぐ朝御飯の時間だぞ。

 こんな時にも2人で仲良く寝やがって」


 蓮に頬を軽く叩いて起こされた。

 時間を見ると本当に朝御飯の時間の少し前だった。


「お前らも2人で寝てたんだから良いだろ」

「次言ったら口縫い付けるからな?」

「昨日の蓮は積極的だったもんねー!」

「凜、お前は頼むから黙っていてくれ……」


 そんな会話を続けること数分。

 一向に三日月さんが起きる気配はない。

 

 ちなみに三日月さん呼びに戻ったのは、嫌だからとかではなく、単純に周りの目を気にしてのことだ。


 万が一、ポロっと口にしてしまうと、大変なことになってしまう。


 だから決して恥ずかしいとかではない。


 そんなことをしている間に、時間はどんどん過ぎていってしまう。


「ほら、布団どけるよ。

 そうしないと咲ちゃんは起きなさそうだし」

「ああ分かった…… 

 いや待て、蓮は出ていってくれ」

「なんで俺出ていかされるの!?」


 こんな状況で布団をめくったら、三日月さんの体を見られてしまう。

 いくら蓮が彼女持ちとは言え少し嫌だ。


「ちっ、分かったよ

 なんか話せない事情でもあるんだな」

「助かる」


 そうして蓮には出ていってもらった。


「よし、これで大丈夫だね

 咲ちゃん起きてー! ……え?」

 

 凜は勢い良く布団を奪い取った。

 

 そこには下半身に下着しか着けていない三日月さんの姿があった。

 思わぬ光景に目が惹かれる。


「ちょ…… 優真?

 婚約したからって、私達が隣で寝ていたのにそんなことしていたの……?」


 脳の理解が追い付かない。

 ただやばい考えを向けられている事は分かった。


「してねぇよ!

 俺が朝確認したときには、ズボンがまくれ上がって足が見えていただけだったんだよ!」

「で、その足を直さずにじろじろ見ていたと……」


 反論できない。

 確かに綺麗だとか抱きつきたいとか挟まれたいとかは思ったけど、邪な気持ちは決してなかったと言いたい。


 そうして凛とガヤガヤしていると、三日月さんは目を覚ました。


「ふわぁ…… おはようございます。

 優真くんも凜ちゃんも何やら朝から元気なようで…… !?」


 あ、やばい布団めくったままだ。


 なんて思ったもののもう遅い。

 耳まで真っ赤になった三日月さんは、凜から布団を奪い去り、そのまま布団に籠った。


「ななななな…… なにをしたんですか!?

 いくらプロポーズしたとは言え、凜ちゃん達がいる横でなんて……

 ハレンチです! 変態です!」

「なあ、凜。 どうにかしてくれよ……

 あいつどっかに消えやがった!」


 まずい。

 言い逃れが出来ない状況だ。

 正直普段のお風呂はいいのかと聞きたかったが火に油を注ぎそうなので踏みとどまった。


「いや…… その……

 三日月さんの寝相が悪すぎてそうなったと言うか……」

「私の寝相が悪いと言っても、そんな言い訳は信じられません!」


 非常にまずい。

 このまま嫌われたら死ぬことを検討するどころか、実践してしまう。


「よし分かった。

 こうなったら命を捧げよう……」

「もう、優真くん…… そういうことはお家に帰ってからならいくらでも……

 ちょ、優真くん!?

 何をしようとしているんですか!」


 なぜか止められた。


「なにって……

 嫌われたから死のうかと思って……」

「嫌ってませんよ!?

 とりあえず落ち着いてください!

 凜ちゃんどこ行ったんですかー!」


 なにか言っているが俺の耳には入らない。


「呼ばれて飛び出て凜ちゃんでーす!

 って、ちょいちょい!

 なに早まってるのー!」

「凜ちゃんが何かしたんでしょ!

 優真くんを止めてくださいよ!」

「いや、でも…… ねぇ?」


 その後5分ほど説得されて俺は止まった。

 廊下に立たされていた蓮はめちゃくちゃ怒っていたが、まあ大丈夫だろう。


 朝からどたばたした俺らの班は、案の定時間に間に合わず、再び怒られることになったのであった。



――――――――――――――――――――



 part15

 

 朝から大変な1日です……

 

 朝起きたらズボンを脱いでいて、下着だけで優真くんのとなりに寝ていました。

 

 最初は凜ちゃん達のいる前でセッ…… エッチなことをされたのかと思いましたが、どうやら本当に私の寝相が悪かったご様子。


 もうお嫁に行けません! なんて言おうと思いましたが私はとっくにお嫁さんでした(笑)


 むしろそれで自暴自棄になった優真くんを止める方が大変でした……

 

 優真くんは案外メンヘラさんだったりして?

 まあそれでも私は受け入れますけど。


 これからスキーだというのに、すごく疲れてしまいました……

 優真くんと一秒でも長く一緒にいられることを願って、今日も一日頑張ります!



――――――――――――――――――――


 

 お読みいただきありがとうございました!

 

 本来ならスキー突入の予定でしたが、書きたいシチュエーションが見つかったため、急遽入れ込みました。

 自分の欲望が全開でしたが、次回からは理性を保つように善処します。


 さて、この小説も書き始めて17話。

 Twitterに進捗を載せていたら、リア友に見つかりました。

 こんな感じの小説なので周りに言いふらされたら世間的に死んでしまいます。

 みなさまもご注意ください。


 最後に、前回もお読みいただきありがとうございました。

 

 常連さん、ご新規さん、どちらもお世話になっております。

 次回もよろしくお願いします!

 


 

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