9話 学校(後編)

 授業の時間は早々に終わり、お昼休みの時間になった。

 

 俺に昼食を共にする人はいないため、今日も寂しく一人飯…… と思っていたのだが、


「みんなで一緒に食べようぜ!」

 そう言って蓮と凜は三日月さんを連れてきた。

 

「急にどうした? 普段は二人で食べてるんじゃなかったか?」

「いや二人で食べようと思ってたんだけどね?

 咲ちゃんが、優真が一人でごはん食べてて寂しそうだけど近寄れない…… って言ってたから」

「ちょ、ちょっと凜ちゃん?

 それ言っちゃダメ…… じゃなくてそんなこと言ってないよ?」


 誤魔化し方が致命的に下手くそだ。

 かわいすぎて、自然と顔がにやけてしまう。


「蓮、これ連れてきたの間違いじゃない?」

「間違いないな。

 じゃあ俺ら二人で食ってくるから」


 このまま二人だけでごはんを食べることになったら周りから関係を怪しまれてしまう。

 三日月さんと昼食は食べたいし、なんとか二人にはここにいてもらいたい。


「大丈夫だ。

 お前らが言うような惚気はしないと誓うから 一緒にご飯を食べてくださいお願いします」

「しゃーねぇなぁ、後でなんかおごれよ」

「ありがとうございます蓮様」


 こうして俺達は一緒に昼食を食べることになった。


「お前、三日月さんに弁当まで作ってもらってるのか…… めっちゃ美味そうだし」

「何を言っても三日月さんお手製の弁当はお前にはあげんぞ」

「分かってるわそれぐらい。

 てか、惚気ないって言ったよな?」

「惚気てなんかないから」


 (これが誰かと飯を食べる嬉しさか……

 話し合いながら飯を食べるのもいいかもな)


 そう思いながら昼食を食べていると、隣に座っていた三日月さんに袖をつままれた。

 その愛くるしい動作に思わず心臓が跳ねる。


「どうした?」

「一緒にご飯を食べられると喜んでいたのに、優真くんはずっと三上さんとお話ししているじゃないですか…… 寂しいですよ……」

「ご、ごめん」


 どうやら三日月さんは俺の心臓を止めようとしているらしい。

 破壊力抜群の上目遣いにやられる。


「じゃあ後はお二人で……」

「おい待て、行かせないからな」

 

 この状況で二人きりにされると理性が抑えられなくなってしまう。

 結局、落ち着いて昼食は食べられなかったのだった。


 そのまま時間は経って放課後。


「今日もおつかれさん」

「おう、お前らの惚気を明日も見せられると思うと不安になってきたよ」

「それなりに抑えるから安心しておけ」


 休み時間に三日月さんとのメールを見てにやにやしていると、蓮に怒られた。

 さすがにこれ以上怪しまれるのはまずいので二人の意見は素直に聞くことにした。


 三日月さんとは人通りの少ない道で出会うことにしたので、そこまでは一人だ。


 (来週には研修旅行がある…… 告白するとしたらその時になるだろう)

 

 どのような場所でどのような告白をするのかはある程度決めている。

 おそらく三日月さんは了承してくれるとは思うが、万が一の事を考えると体が震える。


 (もしフラれたらどうなるのだろうか……

 前のような生活に戻れるだろうか……)


 何てネガティブな事を考えていると、

 

「だ~れだ?」

 唐突に目を防がれて、声をかけられた。


「三日月さん、どうしたの?」

「優真くんがなにやら良くないことを考えていたようなので、雰囲気を明るくするためです」

「ありがとうね、でも大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないです。

 優真くん、すごい暗い顔をしていましたよ?

 なにかありましたか……?」


 三日月さんにはお見通しのようだ。

 ただ、さすがに言うわけにはいかない。


「研修旅行の班について考えてただけだよ。 

 三日月さんと一緒になれたらなって」

「なにかはぐらかされた気もしますが……

 まあいいでしょう」


 なんとか三日月さんは引き下がってくれた。


「でも、確かに来週は研修旅行ですね!

 すっかり忘れていました」

「高校に入って初の泊まりだからね。

 すごく楽しみだよ」


 (この感じだと…… 大丈夫かな)

 気づけば、さっき抱いていた負の感情なんてなくなっていた。

 今思うことは、三日月さんとの研修旅行を楽しむことだけだ。


 なんて談笑していると、家についた。


 「「ただいま」」

 「「おかえり」」


 俺達が作ったルールの一つに帰宅時の挨拶はしっかりと、というものがあった

 

 三日月さんが言うには、

「こうやって挨拶するのは一つの夢だったんですよ。

 ただいまーって言われるの、すごく嬉しいじゃないですか」

 ということらしい。


 (研修旅行に向けて頑張らないと……)

 その後には試験もある。

 三日月さんに愛想を尽かされないためにも改めて気合いを入れ直したのであった。 



――――――――――――――――――――



 part9


 恋人との昼食は本当に良いものでした!


 なにやら凜ちゃんには惚気ていると言われましたが、そんなことないと思うのですが……

 

 あと、凜ちゃんに長続きのポイントは気持ちをしっかり伝えること!と言われたので実行してみましたが結構恥ずかしいものですね。


 来週には研修旅行が控えています。

 おそらく、その途中で優真くんは告白してくれると思っているのですが叶うでしょうか?

 

 ―――――いや、そんなことを今考えても杞憂ですね。

 とにかく今は一緒の班になれるように願うとします。

 今日も楽しい一日でした。



――――――――――――――――――――



 お読みいただきありがとうございました!

 体調不良が軽症ながら長引いており、結構つらいです。

 またいつものように投稿できるよう頑張っていくのでよろしくお願いします。


 最後に、前回もありがとうございました!

 久々の投稿にも関わらず、たくさんのPVをいただいて感謝しております。

 また次回もよろしくお願いします。

 


 



 


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