8話 学校(前編)
三日月さんとの同居が始まって三日が経つ。
一昨日はショッピングへ行ったが、昨日は一日中家にいた。
連休も終わり、今日からは学校だ。
そう、三日月さんとの同居が始まって最初の登校である。
三日月さんとは同じ学校なので当然、
「えへへ 優真君との登校……
幸せです……」
一緒に登校することになったのである。
時はさかのぼること昨日の夜。
「そういえば、俺たちの関係は学校ではどうするんだ?
素直に話したら大変なことになりそうだが……」
二人で晩ご飯を食べているときに三日月さんに聞いてみた。
三日月さんとは一緒に登校することにしたので、そこらへんもしっかりしておくことにした。
「ふーむ 本当は関係性を話して学校でも優真君とイチャイチャしたいのですが……
それで万が一、優真君が周りの人に何か言われてしまったら、私が理性を保てなくなってしまいそうですし……」
三日月さんは何やら物騒なことを言っているが、俺のことも考えてくれているみたいだ。
「それなら自分の信用できる人にだけ言うのはどうだ?
三日月さんにもそういう人はいると思うし」
「そうですね! それなら登下校も昼食も一緒に出来ますもんね」
かわいい笑顔で俺のことを見てきた。
風呂に一緒に入ったりもしたのに、こんな些細なことでも心拍数は上がってしまう。
「ただ登下校までしたら、さすがにまずいんじゃないか?
せめて人通りの少ないところだけとかさ」
そう言うと、三日月さんの表情は一気に暗くなる。
「そ、そうですよね……
手をつないだり、腕を組んで登校っていうのはさすがに無理ですよね……」
「い、いやまあもう少し時間が経って関係が落ち着いたらいいんだけどね。
三日月さんに心配させるのは良くないと思うから」
そこから三日月さんが納得してくれるまで十分ほど時間がかかった。
そうして今、三日月さんとは人通りの少ないところまで登校している。
ただ三日月さんは俺に腕を絡めているので、誰かに見つかったらまずいのだが。
(まあ幸せだしいいかな……)
結局、大通りに出るまでくっついて登校したのであった。
一人、こちらを見ていたことには気づかずに……
「おはよう優真 久々だな」
「おう。
まあそういっても三日ぶりだがな」
こいつは俺の唯一の友達、三上蓮(みかみ れん)。
明るくて、クラスのムードメーカー的な存在だ。
蓮とは小学生のころから家が近所だったため仲が良かった。
「それでどうなんだ? バイトの方は」
「え…… あっ」
そうだ、バイトだ。
三日月さんとの同居が始まって完全に忘れていた。
「やっべどうしよう……」
「お前がバイトを忘れるとは珍しい。
なにかあったのか? というか大丈夫か?」
「体調は大丈夫だぞ?」
「いや、金銭面だよ。 家計手伝ってるんだろ」
そういえばそのことも伝え忘れていた。
俺は蓮にすべてを説明する。
「親に逃げられて困ってたら三日月さんに拾われた……
で、今同居中? お前本当に大丈夫か?」
「それが本当なんだって。
メールも見ただろ?」
「そりゃ見たけどさぁ…… それでも信じられねぇよ」
話していると三日月さんが登校してきた。
そうしてその隣にいる人は俺のことを見てきた。
三日月さんの隣にいるのは、芝田凛(しばた りん)だ。
三日月さんの言う一番信用できる人であり、蓮の彼女だ。
おそらく話を聞いたのだろう。
凛は荷物を置くとすぐに駆け寄ってきた。
「優真、まじで咲ちゃんと同棲してるの?」
「ああ、本当だ。
俺は三日月さんと同棲している。
蓮が何を言っても納得してくれないし凛から説明してやってくれ」
そうして蓮に説明してもらっていると、三日月さんが近寄ってきた。
「凛ちゃんには言いました。 優真君との関わりもあったみたいで良かったです」
「それなら安心だ。 凛は口が固いしな」
そう言うと、三日月さんは少し頬を膨らませる。
「どうした?」
「いえ、優真君は凛ちゃんのことを呼び捨てで呼ぶんだなーと思っただけです。
私のことは名字でさん付けなのに……」
かわいすぎて思わず学校なのにハグしかけた。
何とか理性で抑え込んだが、名前関連は告白してからと決めたのだ。
「お二人さん、目の前でイチャつくのはちょっと……」
「イチャついてねぇよ。
それにお前らよりましだろ、どこでもイチャついてるくせに。
ほら、授業が始まるぞ」
蓮と凛はバカップルとして学校では有名だ。
そんな二人に言われたくはない。
俺は早々に話を区切って授業の準備を始めた。
そうして2時間目、体育の授業だ。
今日は男女共に体育館でバレーボールの授業である。
「三日月さんに良い所見せるチャンスじゃん
お前、運動は得意なんだから」
「いやまあ運動はできるけど……
三日月さんのほうが運動が得意なんだし、俺のを見ても何にも思わないんじゃないか?」
三日月さんは俺と違って本当に何でもできる。
俺のことを見たって何かあるわけでもないはずだが。
「お前は女心ってやつを分かってないな。
好きな人が試合で活躍しているところを見るだけで、さらに惚れるんだよ」
「そ、そうか……」
ここまで蓮が言うならば本当なのだろう。
(三日月さんに良いところを見せるためにも本気で頑張るか……)
試合は進んで、俺の出番が来る。
コートに入ろうとすると三日月さんと目が合った。
<頑張って>
手を振りながら小声でそう言ってくれた気がした。
(これは負けられないな)
そうして、俺が入ってから、自分達のチームは快進撃を見せ優勝したのだった。
「やるじゃん優真、お前普段より輝いてたぞ。
これはさらに好感度アップだな」
「そうだといいんだけどね」
その間にも、女子の方の試合は進んでいる。
見てみると、三日月さんは予想通り活躍していた。
それを見て少し嬉しくなった自分がいた。
「な、言っただろ。
好きな人が活躍しているのはうれしいんだよ。
凛が言うには、お前が活躍するたびに三日月さんが喜んでいたらしいぞ」
「そっか…… それはそれで少し恥ずかしいな」
また一つ良いことを知った。
――――――――――――――――――――
part8
今日は連休明け、優真君との初めての登校でした!
学校でイチャイチャできないのは残念ですが、登下校などでも一緒に過ごせるだけでとっても満足です。
なにより腕を組みながら登校できるだけで嬉しすぎます。
あとは、凛ちゃんに関係を伝えました。
凛ちゃんは私の事情を知っていても普通に接してくれる唯一の友人です。
それに、彼氏さんがいるみたいなので安心できます。
ただ、優真君に親しく呼ばれているのは気になりましたが……
これ以上首を突っ込んではメンヘラさんになっちゃいます。
これぐらいにしておきましょう。
体育では、優真君の活躍を見れました!
優真君、運動も結構できるみたいです。
汗も滴るいい男とは、こういう時に使う言葉ですね!
おっと、私の番が来たみたいです。
優真君に恥ずかしいところは見せられませんし、本気で行くとしますか。
――――――――――――――――――――
あとがき
お読みいただきありがとうございました!
体調不良になってしまい、更新が遅れて申し訳ございません。
まだ体調が安定していないので、誤字などがあるかもしれませんが、お許しください。
明日からはまた、毎日投稿を頑張っていきます。
良ければ次回もよろしくお願いします!
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