4話 お布団争い

「万が一2週間後受け入れてもらえないようなことになったら後悔してもしきれません。

 そうならないように持っているもの全てでぶつかるのです」


 お風呂から出た後も、この言葉と風呂場での三日月さんの姿が思い浮かぶ。


 おそらく、いや確実に三日月さんは本気だ。

 俺の事を本気で懐柔しようとしている。 (それならば、俺も本気で応えなければ……)。


 そう思いつつ、風呂場から出てリビングに戻ると、三日月さんはソファでうとうとしていた。


 三日月さんは当然パジャマ姿なのだがこれはこれで破壊力がやばい。

 可愛らしいモコモコとしたパジャマに、風呂上がりの色気のある姿、夜は下着をつけていないのか胸元の強調がすごいことになっている。

 

 思わず見つめてしまっていると、急に三日月さんが目を開けた。


「まさか起きてたの……?」

「はい!それはもちろん。

 優真くんがどんな目で見てくれるか楽しみにしてましたから!」

「そ、そう……」


 (まずい、これでバレたらいじられる)

 そう思って話をそらそうとしたが、


「なにがまずいんですか? 一体私のことをどんな目で見ていたんですかね?」

 

 案の定バレていた。


 (めちゃくちゃニヤニヤしてるし…… ここは逆に攻めてみるか)。


「いや、とても可愛いなーと思ってね。

 可愛いパジャマに、お風呂上がりの色気がある三日月さんに心が引かれていたよ」


 自分には明らかに似合わないセリフを吐くと、三日月さんは急に顔を赤くして悶えたした。


「ゆ、優真くん? 急にどうしたんですか?」

「どうしたと言われても…… 俺は三日月さんのことがめちゃくちゃ可愛いと思ったから、そのとおり伝えているだけだよ?」

「優真くんは私を悶え殺す気ですか! 私、これ以上言われたら死んじゃいますよ!」

 

 どうやら、三日月さんは攻めるのは得意だが、攻められるのは苦手らしい。

 いいことを知った。


「そ、そりゃあ可愛いって言ってもらえるのは嬉しいですけど…… さすがに恥ずかしいですよ……」


 そう言って顔をこちらに向けてきた三日月さんを見て俺は固まった。

 顔を赤くしてうっとりとした目で見つめてくるのを見ると俺も急に恥ずかしくなってくる。


「そ、それじゃあ寝よっか……」

「そうですね……」

 なんやかんやで両成敗されたのだった。


 そうして寝室に案内されたが、なぜかベッドが一つしかない。 ダブルベッド一つしか。


「それじゃあ寝ましょうか! 優真くんは奥と手前どちら側がいいですか?」

「いやなんで一緒に寝ることがもう決まってるの? 俺ソファで寝てくるよ?」

「将来の旦那様にソファで寝させたりしたら失礼ですよ! それならば私が……」

「いや、それはだめだ」


(三日月さんは俺の事を本当に男だと思っているのか? 無防備過ぎるだろ……)。

 さすがにそこは引き下がれない。


「本当に大丈夫なの? 俺がいつ襲ったりしてしまうか分かんないんだよ?」

「優真くんはそんなことしない人だと知っていますよ。 それに襲ったら襲ったで責任は必ず取ってくれるでしょう?」

「いや、まあそりゃそうだけど……」


 このまま粘るか考えたが、もう日を跨いでしまっていたし、三日月さんが可愛くあくびをしていたのを見て素直に折れることにした。


「分かった。 一緒に寝ようか。

 それじゃあ俺は奥をもらうね?」

 

 そしてそのまま布団に潜り込んだが、またしても問題が発生した。


(思っていたより密着する…… しかもこれ三日月さんわざとくっついて来てないか? 

いやまあ嬉しいは嬉しいんだけど)。


 今はお互い背中合わせで寝ているが、それでもやばいものはやばい。

 温もりを感じるしいい匂いもする。

 

 それに必死に耐えていると、急に三日月さんは抱きついてきた。


「あの、三日月さん? さすがにくっつかれると色々良くないというか……」

「なんで優真くんは私を抱きしめてくれないんですか? 待ってるんですよ?」


 声色はふわふわしていて眠そうだが、それだけは譲れないらしい。

 俺も眠かったし判断力が鈍っていたのだろう。


 反対側を向いて抱きしめると、急に三日月さんの体が強ばった。


「ほ、ほんとに抱きしめてくれるなんて……

 もうこのまま死んでも悔いはありません。   

 幸せすぎます……」


 なにか言っているが、眠すぎて俺の耳には入らない。

 ただ三日月さんの温かさと鼓動、胸の柔らかさに心を奪われながら夢の中に入っていった……



――――――――――――――――――――



 part4

 やばいです。 いろいろやばいです……

 

 お風呂あがりに寝たフリ作戦は成功しましたが、あんなに攻めてくるなんて……

 私のことをエッチな目で見てくれたまでは良かったのですが、それからが大変でした。

 

 これで万が一、夫婦になることを断られたら…… 考えただけで涙が……

 いえ、とりあえずネガティブな発想はやめましょう。

 とにかく今は、私と抱きしめあっている優真くんを堪能することにします。

 

 優真くん、本当に苦労していたんですもんね……  

 ずっと見てきましたが見ていてもつらいものもありました。

 優真くんがそれを忘れて、私から身も心も離れられないぐらいにしなければいけませんね!

 

 とりあえず明日は、お買い物に行こうと思っています。

 優真くん、服装のセンスもあるんですよね。

 私が服を選んであげようとしていたので少し残念です。

 でも、優真くんとの服選びは楽しそうかも……?

 また一つ楽しみが増えました!



――――――――――――――――――――

あとがき


 お読みいただきありがとうございました!

 

 お風呂回とベッド回を一話にまとめる予定だったのですが、想像以上に話が膨らんでしまい、気づけば二話になっていましまいました。


 最後に、前回もお読みいただきありがとうございました!

 投稿してすぐに見てくださる常連さん、本当に感謝しています。

 次回もよろしくお願いします!

 


 

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