第十九話 嵐の後のそよ風

 さて、オペラードに関しての危機がようやく去ったわけなんだけど。


 それで、問題が全て解決してすごく暇になったわけではなかった。




 「作戦会議ー!」




 俺は仲間たちを集めて、そう高らかに宣言する。


 オペラードの一件でまず変わったのはこの島に人が増えたことだろうか。


 帰る場所がない人、ここに残りたい人含め十二人も新しい島民が増えていた。




 「問題の一つ目、その人たちがテントに住んでいる。」


 「コウイチが家を作るしかないんじゃないですか。」


 「「「賛成!」」」




 はい、それで大丈夫です。


 俺はこれからさらに忙しくなってしまうのかと頭を抱える。


 っていうか、俺転生者なのに本当に家しか作ってないじゃん。


 社会って意外と厳しいよな。


 そこでおい、と声がかかった。


 まさか、俺に助け船を出してくれているのか?


 声を上げたのはカイゼだった。




 「そもそも何で俺がこの島の幹部みたいになっている。」


 「えー…なんとなくですかね?」




 ミミリがとりあえずメンバーを集めてくれたのだが。


 まあ、とりあえずそれっぽい人たちを連れてくるようお願いしたからな。




 「じゃあ、カイゼにも関わる話もしようかな。」




 俺は話を続ける。




 「二つ目の問題、情報が圧倒的に入らない。」


 「正直、この島が長すぎて、最近のことは全然我も理解できん。」




 ヴェラル様はそうやって言ってるけど、そもそもあんた知る気もあんまないだろ。




 「そこで、島の外に遠征してもらおうと思う。」




 続けて、遠征メンバーを発表する。




 「ヒーナは確定として…。


  島の外でも情報を知りたいであろうカイゼ。


  それにミミリにも行ってもらおうかな。」


 「え、私は行っちゃ駄目ですよ。」




 フィーロさんに説明を代わってもらう。




 「僕が少し前に住んでいた町があるんだけどさ。


  そこにミミリが来たことは秘密にしてくれるって。


  この前僕たちが捕まえたオペラードの一味は賞金首でね。


  お金もたくさん入ったから色々買ってくるといい。」




 これはフィーロさんの粋な計らいだった。


 ミミリはこれからも、島の中で生きていくしかないと思っていただろう。


 でも、元々は普通の女の子だったからな。


 町で羽を伸ばしてほしいし買い物とかもしたいだろう。




 「本当にありがとうございます。」


 「その言葉は町の人たちに行ってあげなさい。


  基本は僕の家で過ごしてくれればいいからね。


  ヒーナは場所分かるだろ?」


 「ヴェラル様も行く?」


 「我も行ってもいいが、帰ってきたとき全滅してるかもな。」


 「残って、お願い!」




 ということで、島の外の遠征についても話がまとまった。




 「そして最後に新しい島民の仕事についてだ。」




 現在島に残った人たちの主な仕事は手伝いが多い。


 料理だったり、建築の手伝いをしてくれている。


 今の所安全な場所だったら植物採集してもらったり、料理を独立してやってもらったりとかは思いつくのだがこれから更に人が増えていくとだんだん仕事分けが困難になっていく。


 だから、自給自足で食材を作りたいのだけどどうしても知識がない。




 「それも遠征で、先生をお呼びするとかですかね。」


 「後回し。」




 これに関しては、今そんなに困っているわけではないから適当に終わってしまった。


 とりあえず遠征について決まっただけでも、有意義な話合いだったと言えるだろう。


 もう、明日からすぐにでも出発するようだった。




 正直、俺もミミリが遠征してくれるのは嬉しかった。


 オペラードの一件から、話すたびになんかドキドキしてたし。


 一旦、気持ちを落ち着かせる時間が欲しかった。


 俺って意外と、うぶなんだな。


 それに、作りたいものもあったからな。




 さて、あっさりと翌日。


 一週間程度にはなるだろうということで、お金はしっかり持たせておく。


 ヒーナとカイゼに関しては結構色んな所に行ってみると言っていた。


 何か、情報や俺たちの助けになるものが見つかるといいけど。




 さて、自分で言うのもなんだけど一番大変なのはさすがに俺だろう。


 でっかい家にはカイゼが住むそうで、そこに他の島民も住んでもらうのはいいんだけど。


 夫婦とかもいるし、そういった人には他の人と同じ家に住んでもらうわけにはいかない。


 結局、これからも見越して他の島民には専用の家を作ってあげよう。


 夫婦は、それぞれ二組。


 だから、建てる家は丁度10軒だな。


 流石にテント生活は可哀そうだから早く作ってあげないとな。




 そうして、簡素ではあるが一日二軒家を作ってあげる。


 実際もっと時間はかかるだろうが、そこは自分のスキルには感謝する。


 そして、ピッタリ五日後の朝にはすべての家が完成していた。




 「いやー、ようやく家にありつけます。


  本当にありがとうございます、コウイチさん。」


 「むしろ遅くなってごめんね。


  何かあったら言ってね。」




 他の島民とも俺はようやく打ち解けてきていた。


 基本、俺の年上だろうなという印象を受けたので最初は敬語を使っていたが立場があるんだからと、むしろ敬語を使われてしまった。


 そこに関しては、喋り方で変わるものではないからそんなに気にしてはいないけどね。




 さて、仕事がようやく終わったため、久しぶりにフィーロさんとヴェラル様とご飯を食べる。


 島民の一人が練習で作ってくれたものだがなかなか美味い。




 「人自体は増えたのだが、ヒーナとミミリがいないだけでこの島は静かだな。」


 「そうだね、僕も少し寂しくなってきたな。」


 「ふん、たまにはこういう静かな雰囲気も悪くないだろう。」




 ヴェラル様はこういっているが、残った皆は多少寂しがっているようだ。


 この人たち意外と可愛いところあるよな。


 俺も帰ってきたら嬉しいけどその前に一つ作っておきたいものもあった。


 結局明日からも忙しいな。




 「ねえ、この島にさシンボルマークを作りたいと思うんだけど。」




 俺は、頭で計画していたことを二人に話す。




 「なるほど、僕にも協力させて。」


 「建築屋、お前も粋なことをするではないか。」




 急に元気になった二人にも協力してもらって俺たちは建築を進めることにした。 

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