第十六話 ピンチはチャンス

はーい、皆。


 毎度おなじみクレアちゃんだよ。


 オペラード様の命令でこのはぐれ島っていうへんてこな島にやってきたの。


 そして、オペラード様に作戦を考えるよう言われちゃった(嬉)。


 私が考えた作戦は、単純明快かつ相手の裏を突いちゃう。



 オペラード様の船を監視していた女は、一日に二時間睡眠をとる。


 一日それだけの睡眠量で活動できるのはもちろん凄いけどー。


 その二時間の間に小型の船で島の裏に回っちゃう。


 少人数で動いてるとどうしても、隙が生まれちゃうのよね。


 そもそも、あの距離から船が見えたのはあの女だけだったみたいだけどね。




 そこから私だけがこの島に降りる。


 私の適正スキルは気配消しなの。


 そこに透明化のスキルを加えて、完璧にバレない様にできちゃう。


 その後は本当に簡単だった。




 相手が疲労し切っちゃってそれぞれバラバラになったタイミングで船に報告。


 それぞれに相性のいい相手を送ってあげるだけ。


 まあ、あとは皆頑張ってね。


 私が狙うのは船を監視している脳筋女。


 この島で一番強いってことらしいけど。




 バレなきゃ結局関係ない。


 寝てるところをグサッと一発でもう終わり。


 ある意味私が一番戦闘向きよね。




 私は自分の目的のために動くほかの幹部とは違うの。


 ああ、愛しのオペラード様。


 この作戦が上手く言ってプロポーズとかされちゃったらどうしよ。


 でも私はそんな高望みしないの、近くにいられたらそれだけで幸せ。




 でも、あの女を殺したら評価されるのは確定だもんね。


 頑張らなくちゃ。




 こうしてクレアはヴェラルの元拠点までやってきた。




 あらー?寝てる寝てる。


 相当疲れちゃってたみたいね。


 他に優秀な仲間や上司がいなくて可哀そう。


 私のために殺されちゃってね。




 気配を消して寝てるヴェラルの元に近づく。


 その途中でヴェラルが目を覚ました。




 おっと、ちょっとタイミングが悪かったわね。


 どうしようかしら、気づかれているわけじゃないから殺しちゃってもいっか。




 「なあ、影薄女。


  お前はそこで何をしてるんだ?」




 …。


 嘘、今私が話しかけられちゃったの?


 えとえと、透明化と気配消しは完璧だよね。


 何でばれるのよ、あの女絶対にやばい。




 クレアはなるべく気配を殺して、その場から逃げ出す。


 だが目の前にヴェラルは立っていた。




 「おい、逃げるなんてちょっと悲しいぞ。


  我はただ話がしたいだけなんだよ。」




 クレアはとっさに持っていたナイフで襲いかかる。


 だがあっさりと弾かれて、遠くの地面に突き刺さるのが見える。




 「おい、何だ今のは。


  島の外ではこういう挨拶があるのか?


  我の中での常識では、ナイフを向けてきた奴は敵とみなしているんだが。」




 何よ何よ何よ何よ。


 一体何なのよこの女。


 あまりにもチートじゃない、なんで私がこんな怪物女の相手をしないといけないのよ。


 あの男のせいだ。


 はめられた、絶対許さない。


 あんな男私本当は大嫌いだったんだから。


 私って可哀そうな悲劇のヒロインよね。




 クレアはその場で泣き出す。




 「私、オペラードに騙されてあなたを殺すように言われちゃっただけなの。


  許して~(泣)。」


 「お前弱いだけじゃなくて、面白くもないんだな。


  冗談の言い方から学びなおせ。」




 クレアのお腹に一発衝撃が走る。


 そしてその場で気絶してしまった。




 「我が寝てしまったタイミングで来るとは何と間の悪い。


  とりあえず、防壁まで行ってみるか。」




 ヴェラルはボソッと独り言をすると、目的地に向けて歩き出した。




ーーーーーーーー




 「くそッ!なんて反射神経だ。」




 男はスキルで針を飛ばしたが、ひらりと攻撃をかわされてしまう。


 ヒーナとの戦いを命じられた男だったが、まだまだ余裕があった。




 確かにこいつの相手は楽そうだな。


 こいつの能力は鳥になっての飛行と巨大化。


 針を飛ばし続けていれば、有効打は存在しない。




 そう考えた男は針を打ち続けてヒーナに近づくチャンスを与えなかった。


 ヒーナはとある日のミミリとの会話を思い出していた。




 「巨大化ですか?」


 「そう、コーイチとか荷物運べる。


  オレも役に立てる。」


 「まあ、確かにいいスキルですよね。


  戦いにおいても役立ちますから。」




 すると、ミミリがハッとする。




 「巨大化のスキルを習得するなら、もう一ついいスキルがありますよ。」


 「やれることは、全部やる。」


 「じゃあ、これも教えてあげましょう。


  大きくなるのにも利点はありますが、逆に小さくなることにも利点はあります。」




 ヒーナはあの時のミミリに感謝する。


 そして打開のスキルを発動した。




 「縮小化!」




 ヒーナは急に小さくなり男の視線から外れてしまった。


 男は急なことで周りを見渡すことしかできなかった。


 すでに、ヒーナは男の背後にピッタリとくっついていた。




 「巨大化!」




 急にサイズが大きくなった衝撃で男は弾き飛ばされる。


 そのままの勢いで木に激突して気絶してしまった。




 「やっぱり、ミミリは頭いい。」




 上機嫌になったヒーナはその場ではしゃいでいた。




ーーーーーーーー




 「よう、やってるかいおっちゃん。」




 男は、フィーロの部屋に入ってきていた。


 武器化なんかを作っていたのだろう、マスクをつけていて表情が分からないが男は話を続ける。




 「なんで、こんな知らない奴がここにいるかわかるかい。」


 「知らない奴?コウイチ君じゃないのかい?」




 男はついついにやけてしまう。


 フィーロはマスクのせいで、よく顔が見えていないようだ。




 「あー、そうさ。


  ちょっと話をしたくてここに来たんだ。」


 「そうかそうか、いったいなぜここへ。」


 「いや、本当に話をしたかっただけなんだ。


  ずっとここにいるから様子が気になってな。」


 「いやいや心配には及ばないよ。


  ミミリ君もご飯をよく持ってきてくれるからね。


  話は聞いてないの?」


 「それでも会いたくなっちまうのさ、仲間だろ?」




 男は余裕を持っていて、コントを楽しんでいる。


 そこで、一つ男は気になっていた指摘をした。




 「おい、なんだかこの部屋煙たくないか?


  喚起をした方がいいと思うぞ。」


 「それは、無理な相談だな。


  君に勝てる要素がなくなってしまう。」


 「あ?それってどういう。」




 その瞬間男はその場に倒れこんでしまった。




 「ようやく睡眠ガスの効果が出てきたようだ。」




 フィーロは男を縄で縛りながら呟く。




 「君は僕より圧倒的に強い。


  でもね、戦闘力に差がありすぎると相手の手札を全く見なくなってしまう。


  それが、君の敗北の原因さ。」




 窓を開け喚起を済ませて、フィーロはマスクを外す。


 その役目を終えたフィーロは久しぶりに外に出ていた。

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