第十二話 決意の先に

私がアーミラクラスに入って、二月が経っていたでしょうか。


 段々クラスの二人とも親密になってきました。




 「はあ、またボロボロだよ。」




 そう言って入ってきたのはレナード。


 黄色い髪の中で希少である変身の適正を持っています。


 単純明快で元気な性格で、クラスのムードメーカー。


 私がクラスに入ってきてからは凄く話しかけてくれてすぐに仲良くなりました。




 「本当に君はいつも突っ込んでいくから簡単に負けるんだよ。」




 そうやって、呆れているのはヒーズ。


 抹茶色の髪は回復の適正であり、これも希少なスキルらしいです。


 常に落ち着いていて、冷静な性格。


 私にも色々なことを教えてくれて、助けられました。




 そしてそんな私たちをまとめてくれているのが…。




 「ほら、あんた達席に着きなさい。」




 このアーミラ先生。


 知識をとにかく愛する人で、クラスの人達は色々大変なこともありましたが、結局みんなそんな先生が大好きです。


 美しいその顔とそれを引き立たせるグラデーションがかった髪色。


 空間のスキルを持っています。




 私たちは全員が希少なスキル適正を持っていますが、それもやっぱりアーミラ先生は珍しいスキルを気に入るという部分も大きいのでしょう。


 そしてこのクラスにも私にとって珍しい出来事が起こります。




 「さて、レナードとヒーズはもう知っているけどミミリにも紹介しないといけないね。


  うちのクラスに新たな仲間が加わるよ。」




 なるほどレナードたちがさっき話していたのは試験のことだったようです。


 私もアーミラクラスに入るときには試験を受けました。


 他の二人に少し話しかけます。




 「私が入ってから二月ほどですけど、これくらいのペースで生徒が入るんですか?」




 レナードは呆れ顔で言います。




 「アーミラ先生は気に入ったらクラスに入れるんだよ、頻度とかバラバラ。」


 「僕が入ったときには、レナードはもういたよね。」


 「私が入ったときにはもうちょっといたけど、就職とかでいなくなっちゃったね。」


 「要はアーミラ先生の気分ですね。」




 そこで納得して先生の方に向き直る。


 アーミラ先生がサインを出すと、一人の生徒が入ってきた。




 「アナムです、よろしく。」




 そう言って入ってきたのは灰色の髪の綺麗な女の人。


 最低限の言葉で挨拶した彼女は、アーミラ先生の方をちらっと見ます。




 「彼女の適正は死だ。


  つまり、法で禁止されているスキルなんだ。


  でも、彼女は適正に関係なく炎のスキルを身に着けていってね。


  適正のスキルに匹敵する力を持った面白い子だよ。」




 適正というのは、簡単に言うと才能です。


 その適正においてスキルは常軌を逸した強さを持ちます。


 そういったスキルに適正なしで追いついてしまうことはまずありません。


 つまり、アーミラ先生はそこを気にいったんでしょう。




 こうしてアナムは新しく仲間に入りました。


 でも、彼女は口数が少なくていつも本を読んでいます。


 それに、私も自分で話しかける勇気がありません。


 だから、仲良くなることは難しいかもしれません。


 そう考えていたのですが…。




 「ミミリさん、何の勉強をしているの。」


 「え、今はスキル科学について。」


 「私、わからない所があるんだけど聞いてもいい?」




 私とアナムはよく勉強をするという共通点がありました。


 彼女が適正なしでここまで来たのも勉強や努力によるものだったのでしょう。


 彼女は普段、全く話をしてくれなかったので分からなかったのですが根はすごくいい子でした。


 他の二人ともやっぱりすぐ仲良くなったし、誕生日や記念日にプレゼントを贈るとすごく喜んでくれました。


 そうして一年が過ぎたころには、親友と呼べる仲になっていたと思います。




 アーミラ先生の住む屋敷はのどかな町にあって、その町には時計台があります。


 アナムは静かなところが好きで、よくその時計台の上にいました。


 いつの間にか、そこは私のお気に入りの場所にもなっていきました。


 その日も時計台の上で話をしていたと思います。




 「ミミリもこれまで、大変な人生だったんだね。」


 「でも、今はそんなに気にしていません。


  親がどうなったかは、ちょっと心配ですけど。」


 「私もね、エリートの家系に生まれたの。


  適正がないに等しかったから、すぐに捨てられたけどね。」




 この日は何がきっかけだったか、お互いの過去の話をしていました。




 「だからね、私そんな弱い人を救う魔法使いになりたいの。


  世界の暗いところや闇にまけないくらい強くなりたい。」


 「とっても、素敵な夢ですね。」


 「ミミリも同じなんでしょ?」


 「はい、私も強くて優しい魔法使いになりたいです。」




 いつの間にか私たちは、未来の話をしていました。


 どんなかっこいい自分になっているか、二人で素敵な物語を語り合いました。


 私たちだけじゃありません、アーミラクラスの皆は何かしら暗い過去を持っています。


 その瞬間だけは、縛られていた過去のことは忘れられたんです。




 ある日、教室でアナムと勉強しているとアーミラ先生に声をかけられました。




 「お前たちは、勉強をよく頑張っているね。


  これから友人がいる研究室に顔をだすんだけど、あんた達もくるかい?


  面白い資料がいっぱいあるよ。」




 中央の国にあるということで、躊躇いもありましたがアーミラ先生が大丈夫と言ってくれたので好奇心が勝ってしまい、ついて行ってみることにしました。


 アーミラ先生のスキルで空間移動できるのでつくのは一瞬でした。


 研究所の人は快く迎えてくれました。




 「アーミラ、本当に久しぶりだな。」


 「こんな所、そうそう来るところじゃないよ。」


 「まあな、僕ももうそろそろ、ここを退所するだろう。


  ここには自由が少なすぎる。」


 「あたしは一年ももたなかったさ。」


 「やあ、生徒さん。


  僕はフィーロ、この研究所の所長だ。


  資料とかはじゆうに見ていっていいからね。」




 これが、私とフィーロさんの出会いでした。


 彼の指示で資料室まで送ってくれることになった研究員の人が顔をだします。




 「資料室は、こちらです。


  ん?俺の顔に何かついてますか?」


 「いえ、髪の色がピンクだったので珍しくてつい。」


 「ミミリさんもピンクなんですね、適性が法で使えないなんて世知辛い世の中ですよね。」




 髪の色が同じ人に会ったことはなかったので本当に驚きました。


 適正が法に触れている人はやっぱり研究職になったりする人が多いのでしょうか。


 それでも私には夢があります。


 さて、資料室に行ってみたいのはもちろん二人とも理由があります。


 私たちは、魔法使いに関する記述を探しました。




 魔法使いは、簡単に言うと治安の維持を目的としている職業です。


 魔法使いになるには、やはり法外の魔法にも勝てる強さと倍率の高さから頭の良さが必要です。


 つまり、今のまま努力すれば私たちでもなることが出来ます。


 アナムと目を合わせます。


 お互いの覚悟が伝わってきました。


 ここから私たちアーミラクラスは歴代に名を連ねる魔法使い連合として成長することになるのです。

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