第二話 サバイバル生活
森・森・森・森。
森森森森森森森森。
「本当にどこまで行っても森しかないなこの島。」
最初は砂浜でずっと頭を抱えていたんだが、人間どうしても腹は減るし、喉は乾く。
30分もしたら冷静になって、それでも自分の置かれている状況に絶望を覚える。
ってかあのオッサン適当すぎるだろ。せめて最低限のサバイバルセットくらい用意しといてくれてもよくない?
俺は心の中で苦情を入れる。
まずは周りを探索するところから始めたのだが、すごくきれいな砂浜でなーんにも落ちていない。
TVとかでたまに見るサバイバル生活って、割と流れてきたごみの中にペットボトルとか布とかあったりするじゃん。
俺は一つの推理をする。
こんなに、何も落ちていないのってすごく不自然じゃないか?掃除とかしてる人がいる?
そこから俺は人が住んでいると推測し、島の中央に向けて森の中に入ったのだった。
そうして森をずっと進んできたわけなのだが…。
よくよく考えたら、砂浜が綺麗だからって人が住んでいるっておかしいよな!
だってこんなところに住んでて、海を掃除する理由なんてないもん!
逆に人が住む地域から離れてるからゴミが流れてないだけだよ!
もうどれくらい歩いてきたかわからないし、砂浜まで戻れる保証もない。
そもそも体の疲労感で戻れないことは悟っていた。
気づいていなかったがこの島はかなりの大きさらしい。
急にクラっとする。
まあ、当たり前といえば当たり前か。
せめて海水でも飲んどけばよかったかな、でもなんか危険って聞いたことがあるしな。
なんて考えもだんだんまとらなくなり、ついにバタッと倒れこむ。
朦朧とした視界の中、視線の先には木々しかない。もう終わりか。
と、ふとその木に果実がついていることに気が付いた。
ヤシの実くらいのサイズで、つい食欲が刺激される。
それと同時に自分の目の前に文字が表示された。
<ホロホロ
はぐれ島に多く分布されている植物で、色が白く柔らかいため加工しやすいのが特徴。
赤く実った木の実は簡単に取れ、水分を多く含むため腹や喉を満たすのに有効である。>
ホロホロ?はぐれ島?
なんかよくわかんない単語がたくさん出てきたが、やっぱり木の実の説明に目が行く。
だるい体を何とか起こし、力いっぱいに木を揺らしてみる。
そうするといとも簡単に木の実が落ちてきた。
砂浜で唯一の収穫品といってもいい鋭い石でガンガンに叩き、ついに中が開いた。
中には柔らかい身が入っており、無我夢中で口まで運ぶ。
なんだこれ、うますぎる。
口の中で甘い蜜が広がり、全力で体の中に水分を広げていく。
水分は大事にしないといけないとわかっていても涙があふれる。
ここまでの苦労なんかもあるかもしれないが、今まで食べたものの中でも一番おいしいと感じるほどの衝撃だった。
その後は木の実を落として割って食べてを繰り返し、体調も安定してきた。
しかし、身体的な疲労は溜まっていく一方で草などもたくさん生えているためそれを拾って床に敷き眠りにつくことにした。
何とか生き残った安堵感、明日からの不安、考えないといけないことはたくさんある。
それをかき消すように、静かに目を閉じた。
「もしもーし、生きてますかー。」
何だこの声。ついに助けが来てくれたのか?
「理想の彼女はどんな人ですかー?」
ん?なんだこの質問。
「お誕生のお祝いはなにをもらいましたか?
Å手紙 B腕時」
「心理テストしてない?」
あまりの違和感に目を開いた。
目の前にいる人物に衝撃を受ける。
「お前あの時のジジイ!」
「酷い言い方するのう。若者怖い。」
あの時俺を無人島に送った老人が立っている。
「ちょっと説明してよ!なんで急にこんなところまで送られたの!?」
「あの時言ったじゃろ、転生したんじゃ。」
「転生って強くなったり、姿変わったりするじゃん!そういうのないの?
っていうかせめて最初の町みたいなとこで始めさせてよ!」
「始まる場所はランダムなんじゃよ。はぐれ島なんて運が悪かったのう。
君、マイ〇ラで孤島で始まるタイプじゃろ。」
え、このおじいちゃん意外と趣味若いな。
何で感心してんだ俺。
「そもそも君の要望通りのスキルも与えたじゃろ。」
「え?、確かに木の情報とか出たことありましたけど。なんか要望出しましたっけ?」
「おお、それは建材探知のスキル。建材関係の情報をすぐに見れるスキルじゃ。」
ま、待って。
いやまさかな。
そんなはずはない。
「もしかして、建築関係のスキルしかないわけじゃないですよね。」
「そうじゃよ。」
即答じゃねええかああああ!
いや、確かにそんな夢の話したけどね?
でもやっぱり異世界行くならかっこいい剣とか魔法使って無双、みたいのが定番じゃん?
転生して家建てるだけって何見せられてんだってならない?
「お願いしますうう。俺にも炎とか使わせてくださいいい。」
「最近の若者はわがままじゃなあ。今回だけ特別じゃぞ?」
「いいの?やっぱ持つべきものはイケてるハンサムな老人だなあ。」
俺もこれで主人公になれる。
みんなを助けるヒーローになって、モテモテハーレムルートに行ける。
「小指に意識を集中させてみなさい。」
「こうですか?」
小指にぐっと力を入れるとロウソクみたいな火が付いた。
「スキル、小指ライターじゃ。」
ああ、もうスキル名聞いただけで弱い。
それこそ建てた家燃やして終わりじゃん。
創造と破壊を司っちゃってんじゃん。
「まあ、とりあえず無事で安心したのじゃ。質問とかあるか?」
「じゃあこれだけ。どうやって元の世界に戻るんですか?」
「あー、それね。無理じゃよ。」
「はひ?」
「帰る方法はないんじゃ。」
もう色々と絶望であえて驚きはしないけどさ。
俺って今年そんな運ないの?異世界に行く前に手相見てもらえばよかった。
「魔王とか倒したら帰れるとかじゃないんですか?」
「そりゃ、呼んだのわしらじゃし。」
「伝説の宝が眠っている、とか。」
「結構発展した世界じゃからなあ。あったらとっくに見つかってるはずじゃ。」
ま、まあ。落ち着け。
誰かこの老人より、知識がある人が世界にいるかもしれないし。
「じゃあ、とりあえずは魔王の討伐を目標にします。」
「あ、それもうスキル勇者を持った男が君の数時間後に転生したから大丈夫じゃよ。」
「そっすか。分かりました。」
一周周ってけろっとした反応の俺はそう軽く返し、耳を塞ぎ空っぽの頭で眠りについた。
意外と小指がライターって便利じゃねー。
さっき話にでてきた勇者の家でも作ってあげようかなー。
でも、この島からでる方法ないじゃないー。
うふふふふふふふふふふ。
朝、目が覚める。
さあて、今日も木の実を食べようかな。
そのまえにやっぱ朝日を浴びないとね。
そうやって、森の中でも開けた地点に行ってみる。
そこで、1人の女性と目が合った。
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