異世界で都市開発 ~はぐれ島での新生活~

里下里山

第一話 夢みる少年

  「将来は都会ででっかい家に住みたい!」




 そういって憧れに目をキラキラさせながら、友達に視線を送る少年(松尾 幸一)。


 農家の家に生まれ、周りに畑しかないような環境で育った彼にとってそれはごく自然な発想だった。


 ある日、当時好きだったアーティストのMVの撮影場所が東京の街並みでそのおしゃれさや人の活気に感動を覚えた。


 あの時の気持ちはそう簡単に頭から離れはしなかった。




 正直、かなり家庭環境には恵まれていた方だと思う。


 元々、兄が早々に実家を継ぎたいと考えていたようで幸一自身は自由に生きてほしいと両親は言ってくれていた。


 勉強は嫌いではなかったし、自分の夢やわがままのためにやっているんだからと辛いことも乗り越えられた。




 そういった経緯を経て現在では、進学校ともいえる県の中では街並みにある高校の近くで一人暮らしをしている。


 それでもまだ、彼の求める都会像には遠く及ばないのだ。




 「まあ、確かに昔は憧れもあったけどさ、今はあんま出たくないかな。」


 「ここでも十分揃ってるし、むしろ住みやすいと思うな。」




 彼の熱弁も空しく、友達にあっさりと遮られてしまった。


 まあ確かに、と軽く納得し丁度授業が始まる時間だったため自分の席に戻る。


 実際ここも住み心地はいいんだけどさ。


 それでも夢を捨てきれない幸一は更に大きい悩みに頭を抱える。




 ここまで、都会に住みたいという夢だけで今まで生きてきたため高校進学まではとにかくいいところを目指していた。


 しかし、この先は選択肢も多いしなりたい職業くらいは決めておいた方がいいよな。なんて最近は考えるようになっていた。


 単純にいえば目標を見失ってしまったのだ。


 そのため、最近の授業はどうも腰が入らない。


 そうやって放課後になって、友達と近くの店で買い食いしながら話して、バイトして、家に帰って、なんて生活をずっと繰り返している。




 「今日に限って、やけに色々考えちゃうな。バイトで疲れてるしもう寝ちゃうか。」




 そんな独り言で自分の行動を整理し、布団に潜り込む。


 すっと瞼を閉じると、暗闇が広がる。


 暗闇の視界の中でもでずっと独り言は継続していた。




 「結局俺は都会に行って何をするんだろう。」


 「アーティストや芸人なんかが都会に行くイメージが強いよな。でもそういうのてんで駄目だから勉強を頑張ったんだけどな。」


 「なんもやる気でないな。」




 ネガティブな考えが頭の中を支配する中、糸が垂れるみたいに学校での一言を思い出す。




「将来は都会ででっかい家に住みたい!」




 あ、あああ。




 「そうだ!自分ででっかい家建てちまえばいいんだ!」




 ついに彼は自分なりに答えを導き出した。




 「自分で作った理想の家に住むとか超かっこいいじゃん。」


 「確かに確かに。」


 「ってことは建築関係の知識を蓄えないとな。」


 「なーるなるなるなる。」


 「あっ。なんなら俺自体が都会をつくっちゃったりして。」


 「ほー、それはすごい。」


 「あとはあとは・・・って、え?」




 なんか興奮して気づかなかったけどなんか俺の考えに相槌打たれてない?


 そういって周りをみると、暗闇の中にポツンと老人が立っている。


 ってか白TにI♥NYって書いてある。マグカップでしか見ねーよその柄。


 なんてツッコミを我慢してたら、あっちから話しかけてくる。




 「立派な夢を抱いているようじゃな、少年。」


 「は、はあ。」




 ついさっき抱いた夢だけど立派といっていいのかこれ?




 「わしはそんな若者の夢を応援したいんじゃ。」


 「どうも。」


 「と、いうことで君を異世界に招待するよじゃ。」




 おい、そのじゃってやつ普段つけてないだろ。言葉に定着してなさすぎるもん。


・・・今、なんて言った?異世界?




 「あ、あの」


 「まあ、わしも神様からとりあえず1人連れてくればいいよって言われてるだけだからじゃ。」




 足元が急に光り輝く、これってまさか・・・。




 「ちょっと待て!異世界になんて行きたくなーーい!!」


 「もし、余裕あったら魔王倒しておいてほしいのじゃ。それじゃじゃ。」


 「じゃの後にじゃおくな!さらっと魔王退治の依頼をするな!」


 怒りに任せてついにツッコミを口にだす。


 しかしついには光に包まれ何も見えなくなり意識が急に落ちる。






 ーそうして目を開けるとそこは




 カラッと眩しい太陽に澄み渡る大空。


 長い年月をかけ伸びに伸びきった草木。


 そんな自然の中でも端っこに位置するであろう砂浜。


 一発で無人島とわかる程の何もない場所だった。


 「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

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