2022年7月

 ノブコの家に行くと、ノブコは俺のために料理を作ってくれた。苦い味噌汁。生焼けの唐揚げ。普段料理をしない彼女が俺のために頑張って作ってくれたことに素直に感謝した。だが俺は骨身に染みてわかっている。能力と魅力のない優しいだけ真面目なだけの人間は、男女問わず恋愛という戦場においては弱者として淘汰されるということを。相手の何に魅力を感じるかは人それぞれだが、今の俺にとって女の魅力とはルックスのことだ。だからブスのノブコがどんなに俺に親切にしてくれようと雑魚は雑魚。好きになることは決してない。

 ルックスだけでいい。他は何もいらない。性格・知性・料理の腕前・学歴・年収・職業・居住地域…etc。俺はそんな贅沢は言わない。面食いの俺が幸せになり両親を幸せにするには美女とセックスし結婚するしかない。美女とセックスし結婚するためには美女を落とせる恋愛レベルに到達しなければならない。非モテ(異性と恋愛関係になることを目的としたコミュニケーションの初歩の初歩がわかっていない、もしくはそのようなコミュニケーションを取ることをそもそも異性から許可されないレベルの人間)が美女を落とせる恋愛レベルに到達するためにはブスを抱いて自分のレベルとチンポをしゃぶらせる女のレベルを地道に高めていかなければならない。…いや、もはや三十路童貞男に面倒な理屈は必要ない。


素人美女とセックスがしたい


素人美女とセックスがしたい!!!


素人美女とセックスがしたい!!!!!!!!!


素人美女と!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


金銭のやりとりなしに!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


タダで!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


チンポ舐めさせて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


マンコ舐めて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


ケツ叩いて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


髪掴んで!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


首絞めて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


そんなセックスが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


俺はしたい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 心の底から沸き上がってくる澄み切った欲望だけが今の俺を突き動かしている。小学4年生のとき、兄貴の机の引き出しで偶然見つけたエロ本。そこで俺は初めてセックスの存在を知った。以来セックスに焦がれ続けた俺のセックスはついに今まで果たされなかった。世界の半分から認められていない屈辱。恋愛というステージから断絶されている悲しみ。満たされることがなかった欲望が腹の中で暴れまわり俺を発狂に追い込もうとしている。俺は両親から授かったこのかけがえのない命と人生を自らの手で救い出さなければならない。さもなければ、俺はT高校で見た恋愛とセックスを経験しなかった人間の成れの果てとなり、生きながら死ぬことになる。セックスだオマンコだと言っているこの活動は遊びではない。俺という人間の全存在を賭けた闘争なのだ。


 ノブコとは2週間に一度会うことにして、デートをノブコ宅でのゲームやネトフリに限定した。これならノブコから微量の経験値を得つつ引き続きマッチングアプリで他の女とのアポに集中できる。俺は羽田さんから教えてもらった「お互いにいいねする→はじめましての挨拶→会話を2、3ラリー→今度カフェ行かない?→LINEでやり取りしようよ」というテンプレに従ってアポを次々と取り付けていった。欲が出てCランク(俺の中での女のランク分け。G…メスではない何か F…セックスしたくないブス・生物学上のメス、E…ギリギリセックスできるブス、D…ギリギリ女扱いできる女 C…平均的女 B…かわいい女 A…めちゃかわいい女 S…どストライク・誰もが認める美女)の女にいいねをして運良くアポまで辿り着くこともあったが、結局今の俺のレベルに見合わない女は初回のアポで明らかにつれない態度を示したり、徐々にLINEの反応が悪くなっていったりして俺の前から去っていった。実際ホテルまで連れ込めそうな感触があるのはEランクまでだった。それは同時に俺もまたEランクの男であることを示していた。


 ノブコがGに近いFランクだとすれば、ミヅキはFに限りなく近いEランクの女だった。38歳、ボサボサロング、豚っ鼻、丸顔、出っ張りすぎた頬骨、ひと重、二重顎、デブ。顔も体型も芸人のロバート秋山そのものの紛うことなきブス。顔面だけで言えば明らかにノブコ以下だが若い頃に数度の恋愛経験があるのだろう、メスとしてオスに自分をアピールしなければならないことや、アピールの方法はなんとか理解できているようだった。化粧はまったくしていない、いや、恐らく努力不足でできないのだが、ベージュの半袖タイトワンピースとバッグというオンナ装備で夜の渋谷スクランブル交差点TSUTAYA入口前にやってきた。寸胴シルエットからブヨブヨの二の腕が生えている。今日はこの肉塊をホテルに運搬しチンポで串刺しにするのが俺のゴールだ。

 誰かと連れ立って歩くことを最近してないのだろう、予約したカフェまでの道のりで何度か前から歩いてくる人と衝突しそうになっていたので腰を取って俺の身体に寄せ、その勢いのまま出会って30秒で手を繋いだ。経験の少ない俺でもわかる非モテ女特有のガードの緩さ。いいぞ。ミナミとのアポが活きている。数週間前絶縁されたCランクの女、ミナミとはカフェを出てから手を繋ぐ勇気が出ず、彼女の左手をチラチラ見て挙動不審となり、意を決してセンター街の入口で「駅まで手を繋がない?」と打診し、「無理です」と死ぬほどキモがられて後音信不通となった。年下の女に手を繋ぐ伺いを立てるなど優しさでも何でもなく、男としての自信の無さを露呈する愚行以外の何物でもないということを学んだアポだった。もう同じミスは犯さない。

 カフェ“and people”に着いた。テラス、横並びのソファ席。「ホテルに連れ込みたかったら対面席はダメ。L字か横並びにしてボディタッチしろ」。これは羽田さんの教えだ。セックスに持ち込むためには肉体的な接触を事前に行う必要がある。一般的な男なら本能的に理解しており改めて学ぶまでもないことだが、俺はそれすらわからなかった。我ながら本当にどうしようもない男だと思う。ただ俺は自分の恋愛レベルが最低ランクだということを強く自覚している。あとはひたすら経験を積みこのセックス不足地獄から這い上がるだけだ。

 「夜のアポは必ずアルコールを入れろ。酒は女の股を緩ませる」。これも羽田さんからの教えだ。サングリアでいい気分になったと思しきところでパンパンに膨れ上がっているミヅキの手に触れ、甲をフェザータッチしながら会話を進める。肩を引き寄せても拒絶反応はない。悲しいことに俺は勃起している。おそらくミヅキという豚にではなく、人生で初めての素人女とのセックスを予期することによって。

 カフェを出て100mほど歩いたところですぐにホテルに誘った。「俺、もうミヅキのこと結構好きになっちゃったからさ、ホテル行こうよ」「え!…えーと…今日は行かない…今日はだよ!…行きたくないわけじゃないよ!」 相手がロバート秋山だったこともあり、ビビらずにホテルに誘えた。結果的には初回アポセックスはできなかったが、ホテル打診の経験は必ず今後に活きるだろう。


 後日改めてミヅキを夜のダイニングに誘い、カーテンの仕切りのある半個室で告白をした。了承を得るとすぐにキスと手マンをしチンポを握らせ、そのまま隣のホテルに連れ込んでセックスをした。想像通りの醜い身体だった。風俗での経験上、デブのマンコからは異臭がするのが常だが、ご多分に漏れずミヅキのマンコもかなりのクサマンだった。体臭もそれなりに不快だったが、ノブコとは違い愛撫に対する反応は大きすぎるほど大きかったのでとりあえずの勃起材料はあった。ただ、気持ち悪い顔面やダブついた太ももやだらしない腹を視界に入れると萎えてしまうので、部屋を目一杯暗くしてほとんど何も見えない状態で乳首を舐め腰を振った。マンコからチンポを引き抜くと、コンドームに赤黒いおりものがこんもりと付着していた。好きでもない、性的な魅力を感じてもいない人間の分泌物がこれほどまでにおぞましいものだとは思わなかった。たとえば何らかのミスで俺がミヅキに中出ししてしまいミヅキが受精してしまえばこの汚穴から…想像しただけでも吐き気がする。この穴から出てきた生物を愛することは未来永劫できない。


 こうして俺は素人童貞を卒業したが、言うまでもなく何の感慨も湧いて来ない。「素人女に挿入したことがある」という実績を得てチェックポイントを通過したに過ぎないからだ。ミヅキとは一緒にいるだけで苦痛だが、これから俺が挿入を目指す上位の女と行きそうなデートコースの下見や、セックスの際にケツや頬を叩いたり髪を掴んだりしてみて女を征服し従わせる経験を積んだ方が良さそうだ。さて、ノブコはもう用済みなので次のお家デートの際に適当な理由をつけて別れることにしよう。

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