2009年11月

 俺が所属しているバンドサークルKはバンドサークルSとバンドサークルCと仲が良い。この3つのサークルは3サーと呼ばれ、学内で最も歴史あるバンドサークルとしてこの恵援に君臨していた。

 まったくもって遺憾だ。2年生の2学期まで彼女ができないなんて。川野はモテる男で付き合ってもいない渡瀬紗理奈の二の腕を触っていた。この男はどうやって女性に触れる許可を取っているのだろうか。俺や沼田は平野の手のひらに触れようとしただけで圧倒的な拒絶を受けたにもかかわらずこの男はどんな必殺技を使って彼女でもない女性に触れているのだろうか。まったくもって理解できない。俺だって早くセックスしまくりたいのに。なんでだよ。ずるいよ。あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、かわいい女のマンコにチンコ突っ込みてえ。


 焦ることはない。俺にはこの前の渋谷のライヴで10分程度話して偶然仲良くなったC所属の後輩、尾津美咲がいる。美咲は決して美人とは言えないが唇が厚くて俺好みの顔をしている。多少豚っ鼻感はあるが目もそれなりに大きいし、俺はウェーブがかかったショートボブが大好物だ。古着を中心としたコーディネートでアースカラーのロングスカートを履いたりしているのもポイントが高い。周りの男連中に「美咲ってかわいいよな」と言うと、「冗談だろ?」と言われるが、要は女の容姿と身体が俺の性欲を喚起するかしないかが大事なのであって、美咲は明らかに俺の劣情を刺激する見た目を持っている。そして何より大事なことは、ライヴの帰り道に頭を撫でても嫌がらなかったことだ。触られて嫌な顔をしないということは完全に俺に気がある。俺のチンコを受け入れてくれる可能性のある女だ。彼女はサックス吹きだったが、サックスなんかよりも一刻も早く俺のチンコを咥えてもらいたい。


 美咲との2回目のコミュニケーションの機会はすぐに訪れた。渋谷のライヴから2週間後。いつものように部室でスマブラをやっていると、美咲がサックスを置きに来た。俺はここぞとばかりに美咲を夕飯へ誘った。美咲は快諾し、一緒に「ひようら」の「とん三田」で唐揚げ定食を食べた。


 身体に触れても嫌がらないし夕飯の誘いも断らない。


 ヤれる。


 これは「確実にヤれる」のサインなんだ。


 日吉駅の銀玉に移動した。美咲は完全に俺に気がある。よって俺の初セックスは今日だ。俺は本当はイケメンだし頭が良いしオシャレだしモテる男だがシャイな性格なので女とサシで話す機会は少ない。ましてや女と二人で飯を食うなんて機会はそうそう訪れない。この高確率絶好のチャンスを俺は絶対に逃さない。セックス実現可能性は今、100%を超えている。俺はセックスを体験した男になるんだ!オマンコの味を知ってる男になるんだ!絶対にイケる!


「美咲は一人暮らしだったよね」

「えっ……そうですけど…」

「今日泊まりに行っていい?」

「えっ、いや、えっ?」

「だめかな?」

「……ムリです」


 美咲はなにか睨むような視線で俺を一瞥したかと思うとそそくさと改札の中に消えていった。

 なんだろう。理解できない。セックス合意のサインはいくつも出ていたはずだ。

 なにかの間違いかもしれない。美咲にメールを送ってみよう。



2009/11/19(木)22:13

to尾津美咲

(not title)

―――――――――――

えーん(ToT)




 よし。これで美咲の罪悪感と母性を刺激したから、明日の大学祭で俺に謝ってくるかもしれないし、改めて俺のことを誘ってくれるかもしれない。明日の大学祭が楽しみだ。今日は早く寝よう。お母さんからお小遣いももらおう。

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タイトル未定 @mbdf014

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