2022年6月

 ホテルでノブコに挿入すれば、素人童貞を卒業することができた。だが俺はこの不感症の廃棄物マンコに挿入することをしなかった。ただ、それでもノブコはまだ用済みではない。アプローチをして、キスをして、彼氏彼女の契約を結び、ホテルに行き、ある程度の期間付き合い、気持ちが冷め、別れる。ノブコも一応メスであるからこの一連の動作の練習台としてもってこいだ。ノブコで動作の練習を積みつつ、並行してマッチングアプリでよりレベルの高い女性とのセックスを目指すのが合理的だと判断した。


 彼女の自宅はローカル線のローカル駅から歩いて15分、周囲に住宅と畑しかない1Kの埃にまみれたアパートだった。ペタペタしてるのかザラザラしているのか、いずれにしろ清潔感のないフローリングの床のど真ん中に濃紺色のマットレスが敷いてある他、脚に毛髪が張り付いている小さなテーブル、モニター型のテレビ、薄汚れたトートバッグ、山積みにされたチョコレート系の菓子などが目に付く。いや、それ以外にリビングにほとんど物がない。服は俺に会う時に着てくる例のクソ布が長押に掛かっている他には、今着ているしまむらで買ったと思しきスラックスと、仕事で着ていくワイシャツだけらしい。わかっていた。わかっていたさ。観葉植物とかアロマキャンドルとかアイロンがけされてツヤツヤのピンク色のシーツとか化粧品がずらりと並べられた鏡台とか間接照明とかレースのカーテンとか、そういったオンナを醸し出しオトコを盛り上がらせるものが何一つ存在しない家なのだということは来る前からわかっていた。俺は男の欲望を何一つ満たすことのないこの虚無の家からすべてを始める。スライムと戦って得られる経験値は微々たるものだ。だが今の俺と戦ってくれる相手はスライムしかいないということ、今の俺はそのスライムと戦うしか経験値を稼ぐ手段がない恋愛レベルだということ、それらはノブコのクサマンが俺に教えてくれたことだ。


 本当に何も無い部屋でやることもないし、このメスのマンコに挿入するとチンポが腐りそうなので、とりあえずフェラチオをさせた。人生33年目にしてやっと素人女にチンポを咥えさせるという実績を解除した。それにしても、自分がオンナと見なしていない女にされるフェラチオのなんと虚しいことか。だが、風俗嬢のフェラチオとは違い、仕事感がないことに多少の感動がある。髪を掴んでも嫌な顔をされない。喉奥に無理やり突っ込んでも受け容れてくれる。俺は砂糖一粒ほどの征服感と優越感を懸命に味わった。まるで飢餓状態の人間が干からびかけたオレンジに喰らいつき、僅かな果汁を必死に求めるように。嗚呼、もし今俺がチンポをしゃぶらせ見下ろしている女が、憧れのAV女優のRUMIKAや琥珀うたのような極上の果実だったら…俺はそんな想像を逞しくして、俺が今まで言い訳にしていた倫理道徳その全てをドブに捨て、犯罪行為以外のありとあらゆる手段を用い、俺が認める美女とのセックスという大いなる目標に向かって突き進んでいく決意を新たにした。

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