第9話 衝撃とカラクリ

う、嘘だろ……家庭教師があの「ゆうさんだと……」


若本は驚きのあまり固まっていた。

驚きもそうなんだけど、なんか、ゆうさん、めっちゃ可愛い。

水色のカーディガンに白のロングTシャツ、下はオレンジの長いスカート……めっちゃ似合ってる。可愛い。

ゆうさんの私服を見るのはこれが初めてだった。ってか、今気づいたけど、家庭教師って私服OKなのな。てっきりスーツ以外ダメとかあると思ってた。


すると、母から


「拓也、早速自分の部屋を案内しなさいね」

と言われたので、若本は早速、梨田を俺の部屋へと案内することにした。


俺の部屋は2階にある。俺が階段を上っていくと、同様に後ろでゆうさんが階段を上ってくる。ついてきてる……心臓がバクバクしていた。可愛いのオーラがすごい。


俺の部屋の前まで来た。俺のすぐ後ろにはゆうさんがいる。あとはドアを開けるだけ……と若本はドアノブを掴むが


「そ、そういえば……」


と、ここであることに気づく。


そう、俺の部屋はというと、成人女性が好まなそうなオタク部屋だったのである。


俺の部屋には、お年玉とかお小遣いとかで買った、萌えアニメのキャラクターのタペストリーやフィギュアがたくさん飾ってあった。また、本棚も漫画だらけだ。


果たして、ゆうさんが、萌えアニメのキャラクターのタペストリーやフィギュアだらけの俺の部屋を見てゆうさんがドン引きしないか、心配だ。


ああ、あの時、母さんが言ってたな……自分の部屋を掃除しておけと……

完全にやらかしたな……タペストリーフィギュアあたりは押し入れにしまうべきだったか……


こうなったら、ゆうさんに頼んでドアの前で待ってもらおう!その間に俺はフィギュアとかタペストリー片づけちゃおう!


「あの……ゆうさん、ちょっとここで待ってもらえないですか? ちょっと、部屋に入って確認したいことが……」


「ああ、エロ本が落ちてないか確認するのね」


「いや、エロ本じゃないですって!」


「じゃあ、お邪魔しまーす」

梨田はそう言ってドアノブを掴んだ。


「えっ!?」

と若本が驚くも時すでに遅し。梨田は若本の部屋へと入っていった。


マジかよ……ヤバいってこれは……若本はかなり焦っていた。


梨田は若本の部屋に入るや、きょろきょろと周りを見渡していた。萌えアニメのタペストリーやフィギュアが目に入ると


「ほぅ。意外な趣味をお持ちのようで」


と梨田はニヤニヤしながら若本に言ってきた。


「な……なんかすみません……こんなキモオタ上等な部屋で……」

若本は申し訳なさそうに梨田に謝ると


「大丈夫大丈夫。私、こういったアニメが嫌いなわけじゃないから……」

と梨田は言った後、


「あ、なるほど! だから待っててって言ったのね! いや~謎が解けてよかったよ! 納得納得!」

と梨田は周りを見渡して満足そうに言った。


「それより! 私は教える生徒が、あのプロジェクトの時に一緒のチームだった若本くんだったことに驚いているよ!」

「た、たしかにそっちの方が驚きですよね……まさか、俺の家庭教師がゆうさんだったとは……」


つい最近まで変なプロジェクトに巻き込まれ、一緒にバッテリーを組まされ、相手チームと戦った……地元栃木にある白足大学の学生だから、もしかすると、どっかで見かけることがあるかもしれんな……とは思っていたが、まさかこんな形で再開するとは……俺の家庭教師で訪問してくるとは、完全に予想外だ。


「あっ、そういえば、大丈夫ですか……その……死体を見たショックで精神的に参ってないか心配で……」


「ああ、あの件ね。大丈夫よ。何とか気持ちを切り替えることができたよ……ってか、いつまでも落ち込んでいられないからね!」


「ワカタクよりも年上なんだし、もっとしっかりしないとね!」

と梨田が決意していた。


「あまり無理しないでくださいね」

と若本は少し心配していたのと同時に、ゆうさんの証言で、あのプロジェクトが自分が見た夢の話ではなく、現実で、本当に行われていることであると確信した。


「さてと、早速、家庭教師の私が英語を教えますか!」

と梨田が英語を教える準備をし始めようとしたときに、若本が何かを思い出し、


「ゆうさん!ちょっと待ってください!」

と若本がストップをかけた。


「ど……どうしたの急に……」

と梨田が若本の急な発言に驚いていた。


「あのプロジェクト……のことなんですけど、ちょっとだけ話したいことがあるんですけども……話してもいいですか?」


「私は別に構わないわよ……ここで会ったのも何かの縁だし……相談できることがあったら何でも言ってね!」

と梨田は笑顔で言うも、若本がどういったことを話すのか疑問に思っていた。


「……阿部さんと板野さんが、毒ガスを吸って死ぬ時の映像が流れましたよね」

と若本が確認をとると、


「そうね。あの映像はもう思い出したくないわ……」


と梨田は嫌そうな表情をして言った。


「で、ここからは私の考察なんですけど……」


「うん」


「阿部さんと板野さん、もしかしたらですけど……死んでないかもしれないんです」


若本は真剣な表情をして言った。


死んでないかもしれない?


梨田はあまりの発言に驚きを隠せないでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る